表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

私の恋物語。1

作者: blackcat

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

どうして?


どうして、逝ってしまうの?


守ってくれるんじゃ、無かったの?


やめて、お願い……

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



私は、高校一年生。花の女子高生。

秋野あきの ユウナ。

今日が、入学式なのだ!

念願の城西じょうせい高校に、無事、合格出来たのだ!!

嬉しくって、今日は早朝から制服を着て、鏡の前でんだりねたりしていたのだ。

現在、PM7:00。

最後に、大きくジャンプすると、食卓まで行った。

「朝ご飯よ、ユウナ。召し上がれ」

お母さんが、ニッコリと笑って言った。

トーストにトマトスープ。

緑色の私のランチョンマットに映える。

私は、其をものの10分で食べてしまった。

「そんなにおいしそうに食べてもらえると、作り甲斐があるわね」

お母さんが、そう言って嬉しそうに笑ってくれた。

「ご馳走様でした。とてもおいしかったです」

私は、そう言って手を合わせた。

急いで歯磨きを済ませると、

「ユウナ。早く行かないと遅刻しますよ」

と、お母さんから声がかかった。

「はい。直ぐに行きます」

私はそう、答えた。

自分の部屋から、バッグを取った。

私は、一枚の写真の前で手を合わせ、

「行ってきます」

小さく呟いた。



外に出ると、綺麗な青空が広がっていた。

青く、澄んだ空。

思わず、空に向かって両手を伸ばした。

こうすると、青空が私を包み込んでくれそうで。

「お母さん、お父さん。それに、浩太こうた。私、とうとう高校生です。見守っててくださいね」

桜の並木が、美しく感じた。

青空に、美しく映えた。



私は、通学にはバスを使うことにした。

電車は、“人がいっぱい”というイメージがある。

だから、バスにしたのだ。

…全くの偏見だと思うけど。

この時間帯は、きっと空いている思う。

通学用には、一寸ばかり、早いから。

バス停の前で、風に吹かれ乍ら、立っていた。



予想通り、バスはがら空きだった。

サラリーマンのおじさん二人。

ケータイに夢中の女子高生。

キャアキャア騒いでいる中学生三人。

いいよなー。前まで、私もこんなんだったなー。

そんな事を考え乍ら、微笑んでその様子を見ていた。

ふと、反対側の席を覗いた。

其所には、同じ城西高校の制服を着ている男子が居た。

とても緊張した面持ちで、座っている。

如何にも真面目そうだ。

でも、私は惹かれた。

顔が、妙に整っていた。

爽やかなオーラを発する彼は、私の視線を釘付けにした。

時間が、止まった様だった。

彼も、此方を向いた。

私は、視線を外したかったけれど、外せなかった。

少し、小麦色に焼けた肌。

スッと通った鼻筋。

薄い唇に、少し切れ長の目。

全てが、整っていた。



『次は、城西高校前。次は、城西高校前です。お降りの方は、お知らせ下さい』

其のアナウンスで、ハッとした。

ようやく金縛りから解放されて、ホッと溜息を吐いた。

私は、慌ててチャイムを押そうとした。

けど、彼が先に押してしまった。

私よりも、ずっと落ち着いた、彼が。

なんだか、悔しかった。

私の方ばかり、ドキドキして。

彼はちっとも表情を崩さない。

其れで、悔しくなった。



私はバスから降りると、念願の高校が目の前にあった。

桜がヒラヒラと舞っていて、私を祝福してくれている様だった。

ゆっくりと校門をくぐると校庭が広がった。

沢山の人、人、人。

楽しそうに話している、女子グループ5人。

私は一寸だけ、羨ましくなった。

と、言うところで、人の良さそうな先輩が、気さくに話しかけてきてくれた。

「ようこそ、城西高校へ。体育館は、彼方ですよ〜」

間延びした声は、きっと性格からだろう。

私までほんわかとなった。

「あっ。ありがとうございます」

私は先輩に教わった通りに行った。

「おっき〜い」

私は、思わず溜息を漏らす。

こんなに大きい体育館を見たのは、初めてだ。

(あれ?前、来たことあるよね?ここ)

私は、妙な違和感を覚えながら、体育館の中へと入った。



中に入って、やっと分かった。

(そうだよ、ここ。試験会場だ!!)

忘れていたのが、バカみたいだ。

沢山、集まった人たちの中に、彼がいた。

また、目が合った。

視線が、絡み合った。

私はまた、金縛りに遭ったように動けなくなった。

時間が、止まった。

永遠に、此所に居られるような気さえした。

けど、彼が突然、、視線を外した。

其の所為で、私はへなへなと崩れ落ちてしまった。

「何?どうしたん?恋しました、みたいな顔して」

紗椰さやが、私の顔をのぞき込んだ。

「さ、紗椰……。もう、びっくりさせないで…」

「びっくりって…。ヒド!!ウチ、ただ立っとっただけやん?」

紗椰が、ショックを受けたような顔をした。

「ごめんって。冗談だから」

そんな風に謝りつつ、笑い合った。

山口やまぐち 紗椰さや。彼女は、同じ中学からの…友達(?)だ。

友達って言う程の仲じゃない。

なんて言うか……そう。同じ志望校で、同じ中学だったから。

私の中学からは、私と紗椰だけしか、受からなかった。

…簡単に言うと、城西高校を志望校としたのは、私と紗椰だけだったのだ。

………まぁ、難しそうっていう、偏見があったからじゃない?

バカだよねー。競争率、こっちの方が低かったのに。

まぁ、そこら辺は置いといて。

私は、紗椰と共に席に着いた。



「ふーーーっ。終わったなぁ」

紗椰が思いっ切り伸びをした。

私はその姿に、苦笑して言った。

「こらこら。失礼でしょ、紗椰。確かに、校長先生の話長かったけど」

「そうやねん。長すぎんねん、校長の話」

「こら。先生を付けなさいっての」

私は、微笑ましく思った。

紗椰は、何でもズケズケ言うけど、其所が好き。

ズバッて言うと、何だか格好いいから。

内気な私にとっては、憧れ中の憧れだ。

「?何なん?さっきから、じっと見て。気持ち悪いわ。あっそうか、とうとうウチの魅力に気づいたんか」

パチッとウィンクをした。

紗椰は只でさえ色っぽいのだから、そんな事されると、身が持たない。

「うわっ。やめてよ、紗椰。そんな訳無いよ」

「ちぇっ。ケチやな、ゆぅちゃんは」

「やめて。気持ち悪い。変態」

「ヒドっっ!!」



そんな他愛の無いじゃれあいをしていると、先生が通りかかった。

どことなく無愛想そうで、取っ付きにくそうだ。

「もうチャイムが鳴るぞ。教室に戻っておけ」

ハスキーな声が、私を身震いさせた。

…怖い。

私の頭の中には、其れしかなかった。

「は〜い」

紗椰は、素直に頷いて教室に戻ろうとした。

先生は、軽く頷いて、また歩いていってしまった。

「ゆぅ?もう行こ?っっ 大丈夫か??顔色悪いで?」

紗椰は本気で心配してくれた。

…紗椰は、優しいね。

「ん……。だいじょぶ…。行こ?」

私は、ガンガンする頭を押さえ、ヨロヨロと歩き出す。

紗椰と、同じクラスで良かった。



教室に着くと、私は机に伏せった。

「ねぇ、ほんまに大丈夫なん??」

隣の席になった紗椰が、心配そうに聞く。

…そりゃ、机にへばってたら心配だろうねぇ。

「ん…たぶん」

「多分ってなんや。怖いやんか」

心配そうに顔を覗き込まれる。

……って言っても、机の横から話しかけられたんだけど。

「どうしたん??……あの先生、顔見知りなん?」

「っっっっ」

私は硬直した。

折角、起き上がろうとしていた時だったのに。

また、机にへばってしまった。

一気に脱力ぅぅぅ〜〜〜。

「うわわわ。ご、ごめん。い、今の話、なしで」

慌てて、紗椰が言う。

…優しいね、紗椰は。

私の心の傷が、疼く。

私は…無理矢理、押し込める。

消える訳じゃないけど。

少しでも、忘れておきたくて。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ