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怒られてあげたよ ~時司の愚痴日誌

作者: 時司 龍
掲載日:2026/03/12

 イベントの案内状を配る仕事が回ってきた。


 正式な案内状はある。でも会場が少しわかりにくい場所だった。

 だから私は、手描きの地図をつけた。当日迷った時のために、連絡用の携帯番号も書いた。親切設計。ほぼ観光案内である。


 ちなみに、上司から作れとは言われていない。


 案内状は基本、直接手渡し。

 だいたいの人には渡せた。


 ただ一人だけ、会えない人がいた。

 一週間前になっても捕まらない。


 しかもその週に限って、私は別の仕事で完全に拘束されていた。

 受付にも出られない。

 お茶も出せない。

 当然、表にも出られない。


 つまり、案内状を渡すのは物理的に無理。


 なので私は上司に頼んだ。

「この人だけ、手描き地図入りの案内状を渡してもらえますか」

 上司は言った。

「わかった」

 社会人として、とても安心する言葉である。


 ・・・安心したのが、間違いだった。


 当日。

 開始時間を過ぎても、その人は来ない。

 三十分。

 四十五分。

 一時間。

 一時間以上遅れて、ようやくその人が現れた。


 ドアが開いた瞬間、空気が少し張りつめた。


「ここ、どれだけわかりにくい場所か分かってます?」


 お客さんは明らかに苛立っている。


「案内状も地図もないし、電話も分からないし。かなり探しましたよ」


 受付の前で、上司が慌てて頭を下げる。


「申し訳ありません。ご不便をおかけしました」


 お客さんの声はしばらく収まらなかった。

 会場が分からなかった事。時間を無駄にした事。何度も同じ説明をさせられた。

 上司はその場で、ひたすら「申し訳ありません」と頭を下げ続けていた。



 ・・・そして後で、私にこう言った。


「さっきのお客さんね。私が代わりに怒られておいてあげたよ。」


 あなたは私の上司だ。その週、私が別の仕事で拘束されて渡せないのを知っているはずですよね?

 だから私は頼んだ。最後の1人に案内状を渡してほしいと。そう頼んだつもりだった。


 でも違ったらしい。


 この会社ではどうやら、頼んだ仕事はやらなくてもいい。

 代わりに『怒られてあげる』というサービスが付くらしい。

読んでくださってありがとうございます(*_ _)

ポイントを入れてもらえると、嬉しいです。

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