表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

愛と和平

「その男を渡しなさい、幌橋。すでにこの件はSOS(宇宙安全機構)の手を離れて【ナインライブズ】の管轄ものになったわ」

 廃ビルの最上階に二人を追い詰めたあと、阿茶伽羅はそう告げておもむろに煙草ホープを咥え指先・・からの炎で火をつけた。吸い終えるまでに結論を出せという最後通牒だと幌橋は察した。彼の背中に庇われた中年の男は震えながら首を横に振った。

『い、いやだ……せめて一目、娘に会うまでは』

 安芸と名乗った男はテロ組織を抜けて地球に逃げてきたと言った。ただ娘に会いたい、それが叶えば後はどうなっても構わないと幌橋に接触しSOS(宇宙安全機構)の保護を求めてきた。

 それから3日、幌橋は安芸の娘を探したのだったが手がかりは得られなかった。その間に相手だれとどういう交渉があったのか、上層部はこの件から手を引くと決定した。


「せめて一週間、いやあと2日だけ調査の時間をくれ。それで結果が出なかったら諦めよう。頼む」

 幌橋の言葉にも阿茶伽羅の目は冷ややかだった。

「それはあなたの自己満足でしょう? そうしている間にも危険度は増すのよ。それが分からないの? ……はあ、結局あの日から錆びついたままなのね」

 阿茶伽羅の言葉に違和感を覚えながらも幌橋は交渉を続ける。

「なら幌橋、あと一日待ってあげるわ。ただし、失敗したならあなたがその男を始末ころしなさい」

 阿茶伽羅の非情な宣言に安芸に緊張が走る。

「何を言っている! そんなことは……」

「ふふっ、【宇宙の虎】なんて呼ばれて地球ここでぬるま湯に浸かっているからよ。だったら私が目を覚まさせてあげるわ。昔に戻っ」「その話はやめろ! ……それならば」

「それなら何? あたしから逃げられるとでも? 今のあなたには無理よ。能力解放リリースでもしない限りは」

「おまえもそれが狙いか……だが断る! 私はもう捨て駒になる気はな」『あ、あ……アアA……GYAAAA!』

 突然に安芸が苦しみ出す。振り返った幌橋の首を両手で絞めて吊り上げる。狂った目で睨みながら

「なっ! こ、これは……」

「あたしが出向いたのはこの処理ためよ。そいつはテロ用有機ロボット、細胞にニトロ基を持つ人型爆弾よ。爆発したら都市がまるごと吹っ飛ぶくらいのね。

 そして娘を見つけられなかったのは、それが植え付けられた疑似記憶うそっぱちだから。……はあ、情けないわ。そんなことも分からなくなっているなんて」

 阿茶伽羅の手のひらに青白い高温の炎が生み出される。

「ちょうどいいわ。そのままそいつを押さえ込んでいて頂戴」

「や、めろ……巻き、添えに……」

「あなたは死なない(・・・・)でしょう? 【ナインライブズ】で唯一、ウルズルの加護を得ているんだから。ちょっと熱いけどそこは我慢しなさい」

 阿茶伽羅の放った火炎弾は二人を包み、爆縮して異空間に運び去った。


 一週間後、幌橋は特別報酬が振り込まれた通帳を手にして事務所にいた。阿茶伽羅からも小切手の同封されたお見舞いが届いた。『やっぱりあなたしかあたしのパートナーはいないわ!』などという戯言も並んでいたが幌橋は無視することに決めた。


 報酬の半分をアンナ名義の口座に振り込んだ。そのことは彼女にも元妻にも教えていない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
安芸の背中に星型の痣があったから、あぁ爆発するんだなと思いました。 (そんな描写は無かったろー?!)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ