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66話 決闘、金吾 対 ガイゼルバッハ②

 激しく斬り掛かる金吾。今度は自分の番とばかりに息もつかせず斬り続けた。片や、ガイゼルバッハは外皮の中で最も硬く、禍々しい棘の生えた前腕で応じる。


 甲高い音が走り、火花が散る。斬っては受けられ、殴られてはかわし、二人は一進一退の攻防を繰り広げた。


 ここで決めなければ勝機はない。身を晒してまで接近した金吾は、光弾の雨で既にボロボロである。衣服は破れ、身体は傷だらけだ。されど、そんなことを気にする暇などない。体力が残っているうちに決着をつけたかった。


 そして、その考えはガイゼルバッハも気づいていた。反撃はしつつも防御主体の立ち回り。今は無理に攻めず金吾の息切れを待つことにしたのだ。


 鉄壁のガイゼルバッハを金吾は斬って、斬って、斬りまくる!


 その度に硬い外皮に阻まれたが、決して諦めない。


 一方、ガイゼルバッハはある違和感に気づき始めていた。金吾の我武者羅がみしゃらな攻撃は一見もがき苦しんでいるように見えたが、その太刀には殺意が感じられなかったのだ。いや、決闘が始まってからずっと……。


 ガイゼルバッハの頭の中を過ぎるブラフという言葉。金吾は策を用いる男。これらの攻撃は本命をぶつけるための囮のように思えたのだ。このまま好きに攻めさせて良いのかとも。


 己はろくにダメージを受けいていないが、金吾は満身創痍まんしんそうい。こちらが有利なのに相手に流れを譲るのは愚行であり、敢えて逆転の機会を与えてしまっているのかもしれない。


 攻めと護り。どちらを選ぶべきか、ガイゼルバッハは悩んだ。


 否、悩むことなどあるか? 彼は常に挑戦者だったのだ。己から挑みながら護るなどありえない。


 ガイゼルバッハ、金吾の袈裟けさ斬りを前腕で受けるのと同時に、尻尾で相手の脇腹を殴打した。これまでなかった攻撃に不意を衝かれた金吾はモロに食らってしまう。更に、ガイゼルバッハが翼を刃に見立てて真っ向斬りをしてくるも、それは寸前で躱す。その威力は凄まじく、大地は大きく割れ、それが延々と果てまで続いていた。


「うおおおおおおおおお!」


 攻勢のガイゼルバッハ。雄叫びを上げながら手、足、尾、翼を使い、激しく攻め立てる。金吾も必死に躱し、受け、しのいでいた。


 劣勢になりながらも決して離れようとしない金吾に、ガイゼルバッハは感心。近距離で光弾を放ち揺さぶるも、やはり金吾に後退はない。


 ならば、望み通りにするまで。


 繰り広げられる激しい打ち合い。金吾に下がる気はなかった。しかし、無意識に身体が後退りを始める。右肩の不調でこの猛攻についていけないのだ。


 金吾ももう先ほどの高速落下に比する一撃は出来ないだろう。あの外皮を突破する方法は……もう一つしかない。


 一方でガイゼルバッハも攻めあぐねていた。それを成しているのは、あの刀。決定打を食らわせるには、あの刀をどうにかしなければならない。


 先に動いたのは金吾。ガイゼルバッハの尻尾の薙ぎ払いを側転して回避、更に続く翼の水平斬りをくぐるように躱すと、そのまま相手の懐に潜り込んだ。


 超至近距離。ここなら金吾にも分かる。外皮と外皮の隙間が。


 いくら硬くとも可動のためには隙間は生まれる。ガイゼルバッハにもそれはあり、腹部に一センチ程度の隙間があった。そこなら通る。


 そして、今の傷ついた肩でそれを成せるのは一点集中の突きだけだ。


 金吾、刺突!


 名刀、波游兼光なみおよぎかねみつがガイゼルバッハの腹に突き刺さった。


 手応えあり。金吾はその感触に自信を得る。……尤も、それは僅かな間だけだったが。


 すぐさま突き刺さった波游兼光の刀身を握られたのだ。金吾が顔を上げれば、そこにあったのはガイゼルバッハの見下ろす冷静な顔。


 金吾、慌てて抜こうとするもビクともせず。ガイゼルバッハは刀を奪うために敢えて刺されたのだ。


 次いで、その冷静顔の口が大きく開き、眩い光を見せる。


 照射!


 閃光が放たれると瞬く間に周囲の草木や岩が蒸発し、空気が震える。大地もえぐれ、地形そのものが変わっていった。これまでで最も凄まじい破壊の光である。


 やがて、真昼間になっていた空も元通りの暗さに戻っていくと、それが生み出した無残な光景が露になった。


 ガイゼルバッハの正面にあった山が消滅していたのだ。


 そして金吾も。


 腹に刺さったままの刀を遺して。


 ただ、それでもガイゼルバッハはそれを握り続けていた。まるで奪われまいとしているかのように。金吾はまだ健在だと感じ取っていたのだ。


 警戒するガイゼルバッハ。特に、先ほど現れた上空に気をやっている。


 だから、完全に虚を衝かれた。


「っ!?」


 金吾、出現! 何と真正面に!


 彼はガイゼルバッハが作った地割れの中に避難していたのだ。


 咄嗟とっさに刀の柄を右手で握る金吾。それに反応するように刀身を握り締めるガイゼルバッハ。ただ、それはブラフ。金吾はすぐさま右手を放して飛び上がると、互いの鼻先が届きそうなまでに顔を近づけた。


 左手を天に翳しながら。


 その手には逆手に持った脇差が……。


 ガイゼルバッハもやっと察した。


 だが、上空、刀と意識を振り回されたせいで対応が遅れる。それでも咄嗟に空いていた片手で防ごうとしたのは流石だった。


 ……。


 いや、彼は考え直した。


 己は挑戦者なのだと。


 金吾は左手にあらん限りの力を込め、相手の首元へ刃を振り下ろす!


 対して、ガイゼルバッハは僅かに身体を捻るとそれを肩で受けた。


 渾身の一撃が肩の外皮を破り、体内へ深く突き刺さる。歴戦のガイゼルバッハも苦悶くもんの表情を浮かべてしまうほどだ。


 そして、見事奇襲を成した金吾はというと………………吐血した。


 口から大量の血を吐いたのだ。


 腹に相手の手刀を受けて。


 ガイゼルバッハは空いた片手を防御ではなく攻撃に使ったのだ。


 深く刺さった手刀が抜け、力なく地に下りる金吾。両足での着地は出来たが、すぐにその場に正座するように座り込んでしまう。


 立ち続けるガイゼルバッハに地にひさまずく金吾。



 決着か……。


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