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47話 初めての共同作業

 すると、彼はまた何かに気づいた。今度反応したのは耳。洞窟の先から声が聞こえたのである。ユリエドにも予想外だったようで、二人は忍び足でその方向へ進む。


 その先にあったのは巨大な空洞。壁には様々な色が煌いていた。その美しさは、まるで星空である。そして、そこに三人の先客がいたのだ。魔族である。


 金吾たちは相手に気づかれぬよう入口の外から中を伺う。


「ユリエド、お前の仲間か?」


「いや、あれは魔王の一人ラーダマーヤの配下だ。真ん中に立っている魔族リヤスターとは見知った仲だ」


「別の魔族勢力か。しかし、何故いる? 魔族はクリスタリアには興味のないはずだろう?」


「多くの魔族はな。だが、ラーダマーヤは美しい物を好む性質だ。大方、配下に取りに来させたんだろう」


「成る程。『美麗びれいの性』というところか」


 金吾の問いにユリエドは険しい面で答えた。つまり、敵ということである。ならば、ユリエドが取る行動も決まっている。


「金吾、チャンスだ。連中はこちらに気づいていない。一斉に攻めるぞ」


「いきなり襲い掛かるのか? 荒くれ者の薩摩武士でもそんなことはしないぞ」


「貴様はクリスタリアを手に入れるのが目的だろう。あいつらは明らかに障害だ。私も魔王の命令を完璧に遂行したい」


「揉め事は困る。ヴァルサルドルムと同じように、ラーダマーヤもまた盟を結んでもらわないといけない」


 金吾はそう答えると、ユリエドの制止も聞かず堂々と三人の元へ歩いていった。


 一方、リアスターら三人はというと金吾たちのことなど気づかず、水晶の壁に埋まっている赤いクリスタリアを見ながらぼやいていた。


「さて、どうしたものか。俺、不器用だから上手く掘り出せないぞ」


「俺もだ。だからって、乱暴に削ってクリスタリアを小さくさせるのは不味い。我が魔王がまた機嫌を損ねる」


「この間もやっと手に入れたラグーバードの羽根を、アホが不注意で踏んじまって八つ裂きにされていたからなぁ……」


 彼らは採取方法に悩んでいたのだ。中には器用な者もいるが、基本魔族は大雑把。彼らもその類のようである。


「リアスター。命令されたのはアンタなんだからアンタがやれよ」


「ムムム……」


 大きな目をした魔族リアスターは、仲間から難事を押し付けられると堪らず苦虫を噛み締めた顔を背けさせてしまった。お陰で、やってくる金吾とユリエドが視界に入る。


「なっ!? ゆ、ユリエド!? 何故、お前がここに!?」


 慌てて戦闘体勢に入るリアスターら三人。片や、金吾は両手を広げながら戦意がないことを示した。


「戦う気はない。某は小早川金吾。オカヤマから来た」


「コバヤカワキンゴ? オカヤマ? 何だそれは?」


「え? 知らない? ……じゃあ、魔王ファルティスが人間と魔族の共存都市を作っていることは?」


「あ~、それなら聞いたことがあるな。ファルティスが馬鹿なことをやっていると……」


「そうだ。前人未到の人魔共存を成し、魔王の一人ブラウノメラを討ち滅ぼしたのはファルティスの腹心である勇者、この小早川金吾である。そして、今や最強の魔族ヴァルサルドルムすらファルティスに降るに至った。その証拠にこの通り、彼の精兵ユリエドが某に付き従っている」


「「「なぁ!?」」」


 金吾の大言に目が飛び出るばかりに驚愕するリアスターたち。ユリエドが「まだそうと決まったわけではない!」と抗弁しているのを他所に、金吾はこう続ける。


「ファルティスは今や魔界最強の勢力を誇るに至った。だからとて、ラーダマーヤ殿と矛を交える気はない。今は拳を収め合おうではないか。お互い目的は別にあるはずだ」


「も、尤もだな……」


 すっかり臆したリアスターが同意すると、他の二人も追従して何度も頷いた。


 一先ず休戦が決まると、双方とも事情を明かし合った。幸運にも競合はしないよう。


「ほう、そちらはその赤いクリスタリアが目当てか?」


「ああ、だが、どう採掘するか手を拱いていてな……」


 金吾の問いに、リアスターはその言葉通り腕を組んで答えた。金吾も魔族との付き合いが長いので、彼らの悩みは理解出来る。だから、こう申し出た。


「魔族の膂力りょりょくでは壁ごと赤いクリスタリアも壊してしまいそうだからな。……よし、承知した。これも何かの縁。某が採掘しよう」


「お前が?」


「こういう慎重な作業は人間の方が長けているものだ」


 腰の刀を抜く金吾。刀をつるはし代わりに使うのは気が進まなかったが、背に腹は代えられない。


「こんなことしている場合か!? お前は自分のクリスタリアを探さなければならないだろう!」


「人間には助け合いの精神というものがある」


 そしてユリエドの反対も聞かず、彼は刀で赤いクリスタリアが埋まっている壁を削り始めるのだった。こんなことをお願いしながら。


「ああ、そうそう、リアスター殿。代わりにというわけではないが、某が採掘している間、紫のクリスタリアを探しておいてくれないか?」


「紫? う、うむ……分かった」


 この流れでは魔族とて断り辛かったようで、リアスターたちは素直に受け入れてくれた。ついでに、金吾が「ほら、お前も探してこい」とユリエドに促せば、「ったく……」と不貞腐れながら従うのだった。


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