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ぼくは職質をパリイする⑤


 少年は一呼吸するとまた喋りだした。


「その質問が職務質問なら、そこからずっとお巡りさんと話をしているぼくは、お巡りさんへ一方的に質問攻めなどしてもいなければ、話をすり替えてもいません。


 それは濡れ衣というものです。

 いとも簡単に無実のひとに濡れ衣を着せないでください。


 お巡りさんはずっとぼくを気にかけていた時から、ぼくがひとりだったと知っていますよね。それなのになぜ、買い物をしていたか、親といたかなどと聞くのですか?


 聞かずとも()ればわかることでしょう?

 ぼーっとひとりで歩いていたように見えたと言われましたから。

 それでも、ぼくはお答えしましたよね。


 これまでも、これからもずっとひとりだと。


 用が済んだと思ったので「失礼します」とお別れの挨拶をしましたのに。

 また前方から質問をされ直して、ぼくの歩みを妨害されましたので「通行の邪魔をしないでください」という「お願い」をしたのですが。


 それは却下されてしまいましたね。

 生活の支障になる行為をやめてほしい。

 たったそれだけの小市民の願いなのに。


 とおせんぼ。

 立ちはだかったお巡りさんは「とおせんぼ」をした。


 とおせんぼなんて、ぼくよりも小さな子供がする遊びですよ。


 そしてお巡りさんに視力の話をしましたら、心配はいらないと。

 はっきりくっきりと見えているんですね。

 それなら心配はいらないですね。


 良かった。

 もしも目が悪ければ人様にぶつかったり段差でつまづいたり。

 だれかに迷惑をかけると同時に怪我までしょい込むかもしれない。

 ほんとうに良かった。

 問題なくひとりで帰路に就くことができるのですから。


 それはそうと少し戻して、お巡りさんがとうせんぼをしたあとです。

 お巡りさんが尋ねたことに答えないとぼくを保護しなければいけないと。


 保護の必要があるのなら、とっくにそうなさっているでしょうね。

 いいえ、そうしてくださるのならば、ぼくはいつまでも…………な、何でもありません。


 ですが、そこまでに尋ねられたことにはすべてお答えしましたけど。

 再度聞かれたことは繰り返しの同じ質問だった。

 

 お巡りさんに通行の妨げをしないでというと、公務だからと言われたのでぼくは疑問が生じた。


 あなたの質問の途中でしたが質問できるかと申し出ると、ひとつだけなら訊ねても良いと言ってくれましたね?

 ちゃんとお巡りさんから同意を得ていますよ。

 質問をゆるして頂けたので、

「お巡りさん、ありがとうございます」と言いました。


 頭が良くないかという前にも「失礼ですが……」と気遣いの言葉を使いました。

 聞いておきたかったから。

『頭の良いひとは絶対ミスをしない』


 そう言われて生きてきたから……」



 まあ確かにな。

 視たのだから聞くまでもないこともあるけど。

 聞いて確認を取るのが仕事だから。


 そして「濡れ衣」とは。

 いとも簡単に濡れ衣を着せたと、いとも簡単に言うなよな。

 濡れ衣を着せた「濡れ衣」をわたしに着せるつもりか。


 親と一緒だったかどうかを問われたくないのか。

 気にしているところを見ると、プチ家出でもしとるのかな。


 別れの挨拶をしたつもりでいたか。

 通行の邪魔という台詞は「お願い」だと主張するところなんかが「職質スルー」の常とう手段だし。


 とおせんぼに……子供の遊び……視力の心配。

 はあぁ……。

 そして、わたしの帰路の無事まで心配してくれているとか。


 まあ次から次へとテンポよく言葉を突き出してくれるわ。

 どこからどこまでが伏線なのだ。


 頭の良さや記憶力の自慢をするのが流行っているのかな。

 ちびっこマウント、けっこう手強いぞ。

 どこかでこの手の芝居の台本でも販売されてるのか?


 ちゃんちゃら可笑しくて、へそで茶が湧くぞ。

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