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ぼくは職質をパリイする④


「坊や、お巡りさんがいつ話をすり替えたんです? すり替えたのは君の方じゃないですか?」

「ぼくは話をすり替えてなんていませんよ。それは失礼ですよ!」

「だって質問を次々と変えてきて、わたしは聞かれるばかりじゃないですか?」

「お巡りさんこそ、ぼくの話を聞くために声をかけてくれたのでしょ?」


 少年は警官に「話を聞く気がないならもう話しかけないで」といった。

 確かに少年の言うことにも一理ある。

 まず彼の話に耳を傾けなければ質疑応答はさせてくれないか。

 

「それはそうだが……」


 警官の声のトーンが下がった。

 大人に向けて発する言葉遣いが生意気だから、呆れたのだろうか。

 さすがにそれはないか。

 その程度のやりとりで気分を害していては警官は務まらないからな。


 警官が静かになったので彼が口を開いていく。



「では良く聞いてくださいね。

 ぼくは、初めにこう尋ねましたね?


 おじさんが誰なのかを。

 あなたはすかさず「お兄さん」だと訂正しながら「交番勤務の警官」だと教えてくれました。


 ぼくはそのとき初めて声の主が警官だと知ったのです。

 おじさんだと言ったのはわざとです。

 声だけでは年齢層までわかりませんから。

 あなた自身が若者であると漏らしてくれました。


 あなたが警官だと名乗らなければ、ぼくにとってあなたはただの不審者でしかないのです。

 ここまでの会話は成立しているから、ぼくばかりが質問をしていませんよね?


 そして背後から、不意に声がしたときです。

 正直、怖かったです。

「背後霊かと思った」は率直な感想です。


 そのあと、お巡りさんはそれ以前にもぼくの前方にいて、声をかけてくれていた。

 まったく気づけませんでしたけど。


 お巡りさんの目に映っていたぼくは「かなり」ぼーっとしていたんですね。

 ぼくはべつに、ぼーっとなんかしていないのに。

 一生懸命、他人にぶつからない様に歩いていただけです。

 それを考えて歩いていただけなのです。

 人様に迷惑をかけないようにするために集中していただけです。

 ぼーっとなんかしていないのに。


 悲しいです、そんな決めつけた言われ方がとても……。


 そのあと質問をしたのはお巡りさんの方ですよ。

 ぼくに、繁華街に買い物に来たのか、親とはぐれて迷子になったのかと。

 そこばかりを気にするのはどうしてなのか」



 警官はそれほど困った顔はしていない。

 背後からの呼びかけに驚かせたことは、すでに陳謝した。


 そして、おじさんはお兄さんで警官だ。

 その自己紹介で初めて相手を警官だと認識したのだと。

 交番勤務の制服警官なのに?

 名乗らなければ、ただの不審者?

 背後霊はギャグではなかったのか。


 一体誰の受け売りなのだ。

 SNSの弊害とでも呼ぶべきか。

 親の顔を見てみたいわ。


 しかし、あれだけ前方から言葉をかけたのに気づかないとか。

 なにかを装っているのか。

 

 そしてやはり考え事をしていたと主張した。

 そんなに集中しなければ人にぶつかるかな普通。


 まぁ、決めつけた言い方はいけなかったかな。


 迷子かどうかぐらい警官じゃなくても聞くのではないか。



 所々、墓穴を掘っておるぞ。

 彼の言いたいことを全て聞き終えたら、年齢と名前を聞くとしよう。

 迷子扱いも決めつけのようなものだから。

 

 

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