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国賊転生英雄の革命戦記  作者: グロール
3/5

ヴィッヘンラント商人と武器交渉

 コウヤ、アルバート、エセルの三人は情報本部と化していた宿の三階の特殊な休憩室に戻った。

戻って開口一番切ったのはコウヤであった。

「さて、勢いそのままにグレイシア帝国に対して事実上の復讐宣告をしてしまったわけだが…どうやってイレニアを取り戻そう…」

すると、エセルが立ち上がり、卓上にイレニア周辺の地図を広げた。

「イレニア南西部にある『フロイト』という港街に上陸してはどうでしょうか?大きな港と言っても海岸防衛の陸軍しか駐屯してませんし、比較的安全に上陸できるでしょう。」

そうエセルはコウヤに提案したが、コウヤとアルバートは顔に難色を示した。

イレニア南西部の港湾都市フロイトはイレニア三大港湾都市の1つだが、唯一海軍基地がない港湾都市であった。だが、城塞に囲まれている港湾のため、陸の警備は強固である。

最悪、敵対すれば城塞防備兵の最大動員人数3万4000人と対峙する羽目になる。立った数人で数万の兵士とやりあうなんて馬鹿げた話なのだ。

寝返りが成功する確証が取れない限り不可能であった。

「それで、彼らを引き込むことは可能なのかね。」

コウヤはエセルに聞いた。

「フロイト城塞を支配してるクロムウェル伯爵は商人出身の貴族でございます。ですから、利益を是としない旧教に染まった帝室の支配を嫌うでしょう。」

エセルはコウヤにそう答えた。だが、どこか自信なさげに返答していたので、コウヤは追撃する。

「しかし、旧教はご存じの通り免罪符をばらまいて利潤拡大を図っている。また、帝国政府も商人に特権を与えて懐事情の改善を図っています。」

ここ数年、帝国本土はイレニア公国に対抗して商人に対して免税や自由な商業活動の保護を行う代わりに忠誠を求めるといった施策を行っていた。

今やイレニアを支配する第二皇子は豪商や商人出身の貴族らを特権を与えて自分に従わそうとするだろうと読んだのだ。

「とりあえず、イレニア全領主に反乱を促す書状を常に送り続けてくれ。『コウヤ・カワナシがイレニアに戻る』とな。」

こうしてコウヤのイレニア奪還会議は反乱促進の書状を諜報員を通じてイレニア各地に流すということで幕を閉じた。

 会議から1日が経った朝、コウヤらはかつてイレニアとヴィッヘンラント間の交易について交渉をしたヴィッヘンラントの巨大貿易組織『東コーサリア株式会社』とイレニア奪還の協力交渉を行いにネメス中央にある広場のそばにある一際豪華な外装の商館に寄った。

商館の門の前にコウヤが来たとき、門越しにシュッとした金髪の男が立っていた。

「お待ちしておりました。コウヤ殿。」

金髪の男は笑顔で手を振って来たので、コウヤも手を上げて答えた。

「久しぶりです。メンゲルベルクさん。」

「ささっ、どうぞお入りください。」

メンゲルベルクがそう言うと、衛兵が門を開錠させ、コウヤたちはメンゲルベルク案内のもと、門の内側へ進んでいった。

コウヤたちはヴィッヘンラントはどうだとかの世間話を続けた。

しかし、メンゲルベルクは商館の建物の中に入って扉がしまると交渉の話へと切り替わった。

「先方から聞きましたよ。イレニア公の地位を追われたとか。」

「ええ。帝室の意向に反した行動に堪忍袋の緒が切れたのでしょう。ですが、イレニア公…いや将来的な話をすれば、イレニアの脱グレイシア帝国のために今回話をしに来ました。」

すると、メンゲルベルクはコウヤの断固たる決意に感心したのか、口をにっと握手を求めてきた。

「コウヤ殿ならそうするだろうと思っていましたよ。コウヤ殿の治世をみれば、分かります。ささっ、こちらの部屋へ。」

そうして、コウヤたちは商館の迎賓室に入った。

コウヤとアルバートはソファの前に来て、メンゲルベルクが座ってくれと合図を出すと座った。

商館のエリート風な女性の使用人がコウヤとアルバートに赤茶の飲み物を差し出した。

(これは紅茶か?ダージリンっぽい香りがする。)

コウヤが手で匂いを仰ぐと、使用人が飲み物について説明した。

「こちらはわが社がコーサリアより取り寄せた茶葉と呼ばれる葉っぱより抽出して作られました、"お茶"でございます。」

コウヤの予想は当たった。

「良い香りがしますね。貿易が正常化出来たら、イレニアに輸入したいな。」

と返した。

有り難うございますと使用人が一礼すると、部屋を後にした。

メンゲルベルクもお茶を一杯、口にして本題の話へと入った。

「さて、コウヤ殿。今回は何を要求するんですか?」

「単刀直入に言いいます。貴国の最新鋭の火器1000丁、火砲10門、貴社の戦闘員を傭兵として50人、移動用の船1隻がほしいです。」

もはや国家の元首でもないコウヤからかなりの要求を突きつけられた。

反乱の為に武装している社員を活用すると言うのだ。

メンゲルベルクもこの要求には目を見開いた。

(社員を50人も反乱に加わらせるなど…)

ヴィッヘンラント人の社員を加えさせれば、グレイシア帝国は商社、いや、ヴィッヘンラントそのものを解体しに侵攻してくるだろう。

メンゲルベルクはそう考えたのだ。

(いや、待てよ。コーサリア人を活用すれば…)

メンゲルベルクは異国の傭兵を払い下げることを考えたのだ。

そうすれば、反乱失敗に終わってもヴィッヘンラント人の関与を疑われずに済む。そう考えたのだ。

「分かりました。だが、傭兵の人選はこちらが行う。それで良いか?」

メンゲルベルクは語気を若干の強めて言うと、コウヤはよろしく頼むと返事をした。

しかし、メンゲルベルクはまだコウヤが勝てるのか自信がなかった。そこで、メンゲルベルクは恐る恐るコウヤに質問した。

「コウヤ殿、実際、勝機はあるのか?」

「私はただ、旧臣らを信じるのみです。」

コウヤはメンゲルベルクに微笑んでみせた。

「それでは、商談成立ということで…今夜は大宴会を開こうではないか!」

メンゲルベルクはそう言いながら、立ち上がり手を大きく広げた。

そうして、その日の夜、コウヤたちは東コーサリア会社と元イレニア公の一団との大宴会が始まったのである。

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