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9 幼馴染に彼女はいない

「あれ?愛がいる…マジか…まだいたのか?」


「って、秀ちゃん!


そういう秀ちゃんこそなんで…。」


「ああ、夕飯食べようと思って、


あと愛が妙なことを言っていたから様子見。」


「様子見ってあなたねぇ…。」


「秀介、愛って…げっ!」


秀ちゃんが連れてきた女の子は、やはりレベルが高い。


綺麗な腰のあたりまでのびた黒髪に白のシンプルなワンピースが映える。


目はどこか自信をはらみ、ツリ目がちで、


背も女性にしては少し高いので、


可愛さよりどこか綺麗な印象を受ける。


それにどこか幸の薄さを感じさせた。


これが儚さというやつだろうか?


なぜか護ってあげたいと感じた。


文句なしの美少女だ。



是非ともお近づきになりたい。


しかしなぜだろうか?


なぜ彼女は私を見るなり、げっ!などと嫌がるような素振りを見せたのだろう。


初対面のはずなのに…。


「秀ちゃんの彼女さんですか?


とてもお綺麗ですね。


今日のデートはどうでしたか?」


「えっ?ええっ?!


か、か、かか、彼女?


そ、それにで、デート?


ど、どういうこと?」


「どういうことって?


秀ちゃんがそう言っていましたので。」


すると、


知らない美少女は花が咲くような笑みを浮かべた。


可愛さにゲージが振り切れた。


秀ちゃんになにやら詰め寄って、


どういうことかと問い詰めているが、


表情はすごく嬉しそうで、声もどこか弾んでいて、


言っていることとあまりに乖離している。


なにこれちょっとムカつく。



秀ちゃん、そこ代わりなさい!


チェンジ、チェ〜ンジっ!



そう私が秀ちゃんに念を送っていると、


はて、なぜか私の後ろで寒気がする。


あれ?冷房入っていたっけ?


振り向くと、空気が凍っていた。


…あっ、委員長…そういえば、いらっしゃいましたね…。



「愛さん?どういうことか説明を。」


「…はい。」



そして、私が委員長に説明していると、


秀ちゃんが補足してきた。


えっ?彼女じゃないの?


嘘も方便?


それに私も昔言っていたって?


…ああ、前世で…友達に見栄張って…うん、秀ちゃんと出掛けたのをデートだと…。


それを根掘り葉掘り聞かれてボロが出て、


「男と女がどこかに出かけるのはデートだけど、


幼馴染は別なんだね。」とか言われたあの…。


…なんか気分沈むわ。



すると、私同様気分が沈んでいる人がいた。


黒髪ワンピの美少女だ。


「なんだ…そうか…やっぱりな…。」


その言葉には哀愁が漂う。



元気な委員長が、秀ちゃんに尋ねる。


「秀介くん、そちらの方って…。」


すると、秀ちゃんは自分の口に人差し指を当ててシ〜っとして、


委員長を黙らせる。


そして、私に聞いてきた。


「愛、お前も良く知っている人だ。


まさか誰だかわかるよな?」


「えっ?誰?」


知らない。


「お前本当に誰だかわからないのか?」


「えっと…。」


わかるはずないじゃん。


だって、その人絶対初対面だよ。


こんな綺麗で可愛い人絶対に忘れないって。


私が全くピンときていないのを見て、


やれやれと首を振る。


「こちら遠藤美咲さん。


お前が通っている学園の元生徒会長で、


お前が一生足を向けて眠れない相手だよ。」


「えっ!便利屋さん?」


だって、元生徒会長ってポニーテールで


いつも怒っていて、


制服をきちっと着ていて…ってああ、でも面影がある。


美咲は思わず悲しそうな顔をしていた。


そして、秀ちゃんは最低だなお前と口には出さないが、


絶対に思っている表情をしている。


「最低だな、お前。


だから友達いないんだよ。」


もっと酷かった。


でも、秀ちゃんは間違っている私には委員長がいるんだから。


そう口に出したかったが、


口に出したら、絶対に怒られるから言わない。



「って、秀ちゃんはわかったの?


会長、こんなに可愛くなっちゃってたのに!」


「は?なにを言っているんだ?わからないはずないだろう?」


そうだ。


こいつはそういうやつだった。



それはともかく、


元生徒会長のことを思い出してみようと思う。



えっと…うん、やめておこう。


掛けた迷惑は十や二十じゃ聞かないかもしれない。


いや〜、何を思って、女王騎馬戦なんてやろうとしたんだろうね?


それに何度も(強制的に)攻略も手伝ってもらって…。


たぶんこの世界で今のところ秀ちゃん以上に迷惑かけてる。


ゲームのときと同じ感覚だったせいか、


注意も説教も右から左だったし……。



うっ…なんか物凄い罪悪感…。



「その節は誠にご迷惑をお掛けしました。」


驚くほど自然にこの言葉が出た。



「えっ?愛さんが謝った?」


純粋な反応が心に痛い。


「ちょっとあのときの私おかしかったんです。


舞い上がっちゃって、だから本当にごめんなさい。」


私は真剣に頭を下げる。


周りが何事かと騒いでいるが、気にはしない。


こういうのは誠意だ。


「えっと…わかった、わかったから。」


「ごめんなさい、どうか許してください!


許してくれるなら、なんでもしますから。


だから、だからどうか…。」


「わかった、許す、許すよ、だからお願いだから、頭をあげて。」


「信じられないかもしれないけど、


これからは心を入れかえて生きていこうと思ってますから、だから…。」


もうやめてと私の口を塞ぐ美咲。



そして、私が落ち着いたのを確認すると、


彼女は頰を軽くかきながら、言う。


「だから、許すって。


それに心を入れかえてだっけ?


それもまあ、うん、信じるよ。」


すごく物わかりがいい。


もしかして、この人は天使か?


「実はな、愛。


美咲先輩にはお前の今の状況を多少話したんだ。」


あ〜なる〜そういうこと。


だからすぐに。


「ああ、実は今日、そのことで秀介に呼び出されたんだ。


協力できるなら、してほしいとな。


…しかし、今話でいいものか…。」


視線の先には委員長がいた。


ここで話していいのか、美咲は確認を取っているのだろう。


「あ〜…


ごめん、委員長。


別に委員長が嫌ってわけじゃないんだけど、


まだちょっとキツイかな。」


「うん、愛さん、大丈夫ですから、


私にもまだ愛さんに言えないことがありますから。」


あ〜…それってもしかして秀ちゃんのこと?


でも、それバレバレです。すいません。



妙な空気になってしまった。


すると、母がやって来た。


どうやら料理ができたようだ。


「はい、おまちどおさま。」


そして、私含め目の前に置かれたのは、お茶漬け。


秀ちゃんの前には、ハンバーグセットが置かれていた。


ここから、意味を読み取れ。


…はい、さっさと帰りなさいですね、わかりました。



でも、秀ちゃんはいいんですか?




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