7 手中に入り、ガッカリする
今日改めて委員長のことを観察してみると、
秀ちゃんに話しかける時は妙にソワソワしたり、
歩く時は微妙にスキップしていたり、
秀ちゃんのことだけ名前呼びだったりと
色々と分かりやすかった。
委員長ってこんなに可愛い生き物だったんだ。
「また不気味にニヤニヤしてどうした?
普通に病院行くか?」
相変わらず失礼だ。
ほんと委員長はこんな男のどこがいいんだか…。
「いや、ちょっとね。」
「なんだ、本気でなにか考えていたのか…。
悪かったな、
なにか嫌いなものでもあったんじゃないかとちょっとふざけちまった。」
…まあ、いいヤツなんだけどね。
またというほどやっているわけではないのだが、
例のごとく、
校舎裏で昼食タイムを送っている。
いわゆる報告会というやつだ。
「ところで、昨日はどうだった?」
「昨日?
ああ、昨日、昨日ね。」
やばい、テンションが上がる。
「私のハイライト聞きたい?」
「ああ、聞きたい。」
秀ちゃんは弁当を食べるのをやめて、
私に向き直る。
ふ、ふ〜んっ♪
そうして、1時間どころか2時間以上も話し込んでしまったことを自慢した。
どうだと胸を張る私を褒めてくれる秀ちゃん、
気分がかなり良かった。
ホストクラブってこんな感じなのかなとも思った。
しかし、私の話は要領を得ない部分があったらしい、
秀ちゃんはそのボヤけた部分について聞いてきた。
「結局のところ、どうやって仲良くなったんだ?
意気投合して仲良くなったのはわかったんだが、
一体どんな話で盛り上がったんだ?」
どんな話で…っ!?
「……。」
血の気が引いていく。
「なあ、どうやったんだ?」
「…えっと…それは置いておいて、
今日のお弁当もおいしいな〜。」
「まさか人様に迷惑を掛けるようなことしてないよな?」
あら、見たことのない綺麗な笑顔、
できれば後ろの殺気が無い状態で見たかったわ。
「なあ、愛?
弁当を置きなさい。」
「…はい…。」
それから、私の顔面は秀ちゃんの手中に入ったのだった。
「で?誰に迷惑を掛けたの?」
なるほどこれが審判の時か、
絶望感に冷や汗がダラダラと流れていく。
しかし、何も言わなければ、
もう一発あれが来るのだと思うと気が重い。
最近絡みがなかったからすっかりと忘れていたが、
秀ちゃんは案外、私限定で暴力的なのだ。
なので次もおそらくは躊躇しない。
私は懺悔するように言葉を発する。
「…秀ちゃん。」
しかし、秀ちゃんの様子はあっけらかんとしたものだった。
「なんだ、俺か。
なら別に。」
「え?怒らないの?」
「ああ、別に想定内だから。
そんなことよりも委員長と仲良くなれて良かったな。」
そう言って、
愛の頭を軽く撫でる。
想定内という言葉には引っかかるけど、
そんな風にされると惚れちゃうかもしれないのでやめてほしいです。
…どうせすぐにガッカリさせてくるんだから。
ん?
ということは、ダメージをくらい損というやつですか?
…ほら、やっぱりガッカリした。
絶対にこの人との関係は変わらないんだろうなとそう思った。