4 昼に弁当でも食べながら
さっき思いついたんけど、
秀ちゃんともし恋人になれば、
さっきの幼馴染だからというのが、恋人だからと変わる。
もしそう変わったらと思うと正直かなりニヤける。
さっきから、顔が緩みっぱなしだ。
―
「なにニヤけてんだよ、不気味だぞ?」
愛は突然のことで呆けた表情をしたが、
声をかけたのが俺だと認めると、
ぶすっと頬を膨らませた。
しまった。
思わず憎まれ口を叩いてしまった。
女の子を飯に誘ったことなんてないからか、
頬がうっすら熱を帯びているのがわかる。
「おい、飯食いに行くぞ。」
「ちょっ!」
そんな声が聞こえてきた気がしたが、
無視をして手を引いていく。
教室から出ていったときに、男女入り混じったの悲鳴が聞こえた気がしたが、
気のせいだろう。
―
校舎裏に行き、
座るところにハンカチを敷いてやり、
弁当を渡す。
「ほれ弁当。」
普段は香菜が作ってくれるのだが、
愛の分も頼むと拒否されたので俺が作ったどこかありがたみに欠けるそれだ。
香菜にもやると喜んでいたので、見た目はそれなりだと思う。
「相変わらずマメだよね、秀ちゃんって、
ありがたくいただきま〜す。」
すぐに包みを開くと、
流れるような手付きで食べ始める。
モキュモキュと。
愛は弁当に手を付けながら、こんなことを聞いてきた。
「ところで秀ちゃん、
なんでさっき顔真っ赤にしてたの?」
…見られていたのか、はずい。
秀介は思わず苦虫を噛み潰したような表情を浮かべたが、
愛相手に変に誤魔化すのも面倒に感じたので、
努めてなんでもなかったように言うことにする。
「女の子を飯に誘ったことがなくて、
なんか照れた…」
「そ、そうなんだ…。て、照れちゃったか…。」
「あっ、でもなんか速攻で慣れた。」
「は?」
なにやら一瞬、甘い雰囲気が流れた気がしたが、
不機嫌なそれに変わる。
そして愛は男たちによくやる営業スマイルを浮かべて言う。
「あ、ところで?こんな人気が無いところに私を呼び出してなにか用?
もしかして告白?
ごめんなさい、
私、男の人今無理なんで。
それに今は女の子を恋人にしたいんでごめんなさい。
そもそも秀ちゃんを男や女として見れないです、
だからごめんなさい。」
「いや、なに勘違いしているのか知らないけど、
告白とか違うからな。
それと別になんとも思わないけど、
なに3回も振っていやがる。
こっちはお前のことを思って作戦会議でもしようかと思ったのに…。」
「作戦会議?
私を落とす?」
「…。」
「いや、はい、もう邪魔しませんから。」
どうやらおふざけは終わったようだ。
気を取り直して。
「委員長ってどう思う?」
「委員長?えっ、どういうことで?」
「…はい、お前が俺に頼んだことはなんでしょうか?」
「はいっ!それは百合ハーレムを作ることですっ!」
「はい、正解…ん?なにやらグレードアップしてないか?」
「してない、してない。」
明らかにハードルが二段、三段を超すレベルで上がっていたが、
大変になるのは、愛自身なので問題はない。
俺はきっかけを与えるだけにとどめるつもりだから。
ちょくちょくつまんでいた弁当がなくなったので、
片付けて教室へ戻る。
「それじゃあ、放課後、お前と委員長を二人きりにするから、まあ、頑張れ。」
「ちょっ!いきなりハードル高過ぎだって!」
男より漢らしく弁当を掻っ込む姿がそこにはあったとか、
なかったとか。
―
「「…。」」
この状態での作業1時間近くが続き、
自分のコミュ障を自覚する愛だった。
百合ハーレムについて真剣に考えさせられた。
 




