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14 お疲れな秀介 1

杜若愛が家の手伝いという名のバイトに勢をだしている放課後のこと、その母が経営する【喫茶梓弓】の店内で、どこかアンニュイな雰囲気を出しながら、接客していた男がいた。


その男はお客さんから注文を受け取った。


「ご注文を繰り返します。シーフードリゾットにシーザーサラダ、それにドリンクがダージリンですね。

かしこまりました、少々お待ちください。」


「ええ、ちょっと、秀介くん。」


「…はい?」


どこか気怠げに振り向く秀介に顔を真っ赤に赤らめる女性客。


「え、えっと…その…。」


「どうかなさいましたか?」


女性の様子が変わり、心配そうな表情を浮かべる秀介。


「えっと、なんか具合悪そうだったから…大丈夫?」


「…はい。大丈夫です。

そうですね…もしそう見えたのなら、あなたに見惚れていたからかもしれないですね…。」


「え?えぇぇぇぇぇ〜〜〜っ!?」


「なんて、冗談ですよ。」


パチンっ。


ボッ!


秀介のウインクに顔から湯気を出している常連さんの目はどこかトロンとしていて、秀介にメロメロとなっていた。



そんな風に秀介が女性客たちを攻略するのを眺めている愛。


彼女の口からこんな言葉が漏れる。


「ホストかよ。」


「あはは…確かにそうかもね〜。」


声に振り向くと愛と同じようにその様子を覗っていた人物がいた。


彼女はここ【梓弓】でバイトをしている女子大学生の葉桜優衣さんだ。


どこか気さくで面倒見が良いためか、人見知りの愛もすぐに話すことができるようになった。


どうやら彼女も秀介の様子が気になっていたのだろう。


「なんか色気っていうの?


ヤバいよね…。」


「…た、確かに。」


そういえば、秀介が昔こんなことを言っていた。


疲れていて、たまたま褒めまくっていたら、

ナンパが去っていったと…。


おそらく今回もそんな感じなのだろう。


本人はテキトーに応対しているため、

ほのかに口説いているような感じになってしまっているのだろうが、秀介がどこかアンニュイな雰囲気を出しているせいかはたから見れば、高校生の男子が出してはいけないほどのそれが出てしまっている。


ダウナー系ホスト。


疲れた秀介はまさにそんな感じになってしまっていた。


お客さんは喜んでいる様子だが、ここはそんないかがわしいお店ではない。


ふざけた対応をしていた秀介を叱りに店主である梓が秀介を後ろへと呼び出す。


「秀ちゃん、ちょっと。」


「はい、梓さん。」


後ろへと引っ込むなり、引き続き秀介観察を続ける二人。


「大丈夫かな?」


優衣さんがどこか心配そうにその様子を見つめる。


愛はというと…ふふふ、怒られてしまえ…。


と日頃の恨みがあるせいか、卑屈になっていた。



そんな愛をよそに、心配した梓が額に手を当てた。


「熱は…ないみたいね。」


「くすぐったいですよ、梓さん。」


「でも大丈夫?お疲れ?」


「はい、今日ちょっと面倒があって…。」


「そうなの?」


「ゴールデンウィーク明けに球技大会があってその練習でちょっと。」


「きゅ、球技大会っ!?」


どうやら梓の感性になにやら刺さったらしい。


秀介に詰め寄る梓。


「で、で…秀ちゃんは何に出るの?」


「サッカーと…バスケ。」


「そっか〜、うんうん、秀ちゃん運動得意だったものね。


きっと活躍しちゃうんだろうな〜。


じゃあ応援に行かなくちゃね♪」


「確か一般公開されないんじゃないかと…。」


「…残念…。」


しょぼんとしている梓に見ていられなかったのか、秀介は代案を出す。


「じゃあ今度ストバス見に来ます?」


「うん、もちろん!」


さっき泣いたカラスがもう笑った。


梓の嬉しそうな顔に秀介と愛は安心する。



すると、我慢しきれなかったのか、


「私も行く〜!」


と、優衣が声をあげてしまったため、覗きがバレてしまった。


怒られるかと思ったが、

秀介と梓の二人は怒らず、秀介が心配だったのだと伝えると、秀介が頭を撫でてくれた。



それでこの件は終わりになるのかと思ったが、

球技大会の前日、梓と優衣の二人に明日の秀介の活躍を収めてきてほしいと頼みこまれてしまった。


梓が本気で秀介を狙っているのではないかと思い、

秀介をパパと呼ぶ日が来るのではないかと内心心配をする愛であった。


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