表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/19

13 球技大会の練習(男)

バスケの第2チームのメンバーは、


あまり運動が得意ではない3人と、


普通の一人と俺だった。


これはラッキーだ。


どうせみんなやる気がない。


さて、適当に流そうと、ボールを指先で弄んでいると、


不意に声を掛けられた。


体格のいい同級生の山田だったか。


パソコン部の。


「鷹尾くん、僕にバスケを教えてくれないか?


この球技大会どうしても活躍したいんだ。」


………は?


「「俺たちもどうかお願いします!」」


………え?


ちょっと待って、


こいつら今なんて言った?


おいおい…体育ではいつも俺と同じくらいやる気ないのに。


「急にどうしたんだよ、お前ら。」


「実は…。」



どうやら愛にいいところを見せたいらしい。


なにやら、俺の出る試合は愛が見るだろうからとも言っている。




えっ……うそだろ…。


これ、バスケもマジでやらなきゃダメなやつじゃん。



そこから練習をスタートした。


龍馬たちが練習試合何かをしている横で、


ゴールに向かってシュート練習だ。


外す、外す、外す。


入る、入る。


前者が先の3人。


後者が俺ともう1人だ。


まあ、予想通り。


これをものにする…か…。


ちょっとキツイか?


でもまあ、なんとかなるだろ?


早速気になった点があったので聞く。


「一つ良いか?」


「「「はい!何でしょうか!」」」


…誰?


にこやかに、そして爽やかに挨拶してきた3人に思わずたじろぐ。


「いや、というか、お前ら、キャラ変わり過ぎじゃないか?


そんなに爽やかじゃなかったろ?」


「はい、なぜかわからないのですが、


真面目にスポーツをしていたら、こうなりまして。


なあ!」


「おう!」


「そうなんです!」


確かにスポーツで汗かくと、


汗と一緒にイライラとか出ていくみたいな事あるけど。


それを知らないとか、


…今までどんだけ適当にやってたんだよ、こいつら…。


若干呆れつつ、気になったことを問いかける。


「…まあ、それはそれとして…


なんでお前達そんなに力いっぱいシュート撃ってんだ?」


「いや、だって届かないですから。」


「は?いや、届くだろ?


別にハーフラインからシュート打てって言っているわけじゃないし。」


「いやいや、ハーフラインからなんて届くわけないじゃないですか?なあ!」


そんなことはありえないと答える山田。


そして、二人も同じように頷く。


「…もっと膝のクッションを使えとか、


聞いたことないか?」


「急にどうしたんです…はい、まあ、ありますけど…。」


「下半身を使えとかは?」


「それもあります…けど…。」


「けど?」


俺の問いかけに、3人とも困惑気味だ。


言葉がどうにも煮えきらない。



「ちょっと言っている意味がわからないです。」



「は?」


困惑が俺に移った。


「だから正直、言っている意味がわからないんですよ!


下半身を使えって、なにを、どうやって、どのようにして、


どんな感覚で使うのか、


ホント、別次元の言語を聞いているみたいです。」


「…マジ?」


「「「マジ!」」」


えっ?なにこれ?


えっ!そこから…ってめちゃくちゃ大変なやつだろ…。


これ、俺がどうにかしなくちゃならないの?


でも、たぶんこれくらい出来ないと、


活躍なんて夢の又夢だし…。


…これ本当にマジでやらないと、球技大会に間に合わないぞ…。


…さて、どう説明したものか?


「まず、なぜ下半身を使えって言うのかは、


簡単に言うと足の筋肉が腕の筋肉よりも、


3倍ほどあると言われているからなんだ。」


「へえ…そうなんですか。」


「だから、この力を使いたい…ここまではわかるか?」


「「「はい。」」」


「よし、次は…。」


そこから一つ一つ丁寧に説明した。


疑問の都度、頭を悩ませ、知識をつなぎ、


自分の言葉に落とし込んで答えた。


例えば、膝をクッションとか、


そんなこと本気でやったら、負荷に耐えきれなくて、


膝ぶっ壊れるわ。


実際は機械の歯車的な役割で増幅する役割だ。とか。



「要するに関節、体の太腿なんかの大きな筋肉の力を借りて、


身体に大きな負担をかけずに、


より大きな力を使えるようにしようということなんだ。


体全体に分散されて、疲労なんかが蓄積されるから、


一部に大きなそれが来ない。


例えば、


野球肘、テニス肘や膝や腰を痛める確率はかなり下がる。


結果として、怪我防止にも繋がる。


そして、その方法が身につけば、


力を出そうとすることに意識をさかず、


シュートでいえば、コントロールに意識を集中できるようになる。


因みにこれは他のスポーツも応用可能だ。


いわば、体の力を引き出す基本みたいなものだからな。」


「なるほど。」


他も同じように頷いた。


というか、それはさっきした説明のまとめだから、


理解できてなかったら、困るのだが…。


あ〜…疲れた。


体育の時間に頭なんてもう使いたくねえ…。


でも頭で理解するやつにはこれくらいやらないとダメなのかもしれないな…。


というか、高校の体育の教師はなにやってんだよ、


ふむ、とか試合見てないで、ちゃんとやれっての…たっく…。


「…さて、やっと本題だ。


それをするにはどうしたらいいか?


どうすればいいと思う?」


「えっと…体、筋肉や関節の力を伝える練習?」


「そう、練習。


バスケやる以前の問題。


だからまず歩き方から、やり直せ。」


「「「ま…マジですか…。」」」


「マジ。」


そこから、数日、歩き方から、体全体の筋肉の動かし方をレクチャーした。



その間、もう一人は黙々とシュートを打っていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ