11 ゴールデンウィーク明けに球技大会があるらしい
今日の体育はバスケットボール。
団体競技だ。
協調性という観点からすると、
俺は劣等生なので、見学と行きたいところだが、
体は無駄に健康体なので、そうもいかない。
ままならないものだ。
走るのも面倒くさいので、
コートの真ん中あたりをウロチョロし、
適当にボールを回す。
すると、自然にボールがネットに吸い込まれていく。
「よっしゃーっ!」
目立ちたがり屋の龍馬が、
ゴールを決めた。
いわゆるダンクというやつだ。
男女関係なく歓声が聞こえた。
気を良くした龍馬がこちらにやって来て、ハイタッチを求めてくる。
「ナイス!秀介くん!」
「ああ、はいはい。」
パチッ!
テンションがうざいので、適当にあしらうと、
なにやら女子の方では先程より大きな黄色い悲鳴が聞こえてきた。
龍馬の表情がなにやら面白くなさそうなものへと変わる。
それからも適当にパスを回し、
シュートを一本も打たずに、俺の出番が終わると、
名も知らぬ体育教師に声を掛けられた。
確かバスケ部の顧問だったか。
「鷹尾、ちょっと来い。」
すると、喧騒が聞こえない外へと連れ出された。
「お前な、もうちょっと本気でやったらどうなんだ?」
どうやら暑苦しい話のようだ。
思わず顔をしかめる。
それからいくらか、青春は短いだの、一緒に汗をだの、
体感温度の不快指数がいくらか跳ね上げられて、
保健室に行きたくなった頃、
だから体育は真面目にやれということで締められた。
それに対し俺は余程不快だったのか、
自然とこんなことを言っていた。
「体育はみんなが楽しくないとダメでしょ。」
「お前な…。」
俺が言ったのを聞いていたのかという目をしている。
ちょうど良く再び出番のようで、クラスメイトが呼びに来た。
「それともなんだ?
お前が本気を出すと、みんなが楽しめないのか?」
そんなことはあるまい?
続く言葉はこんな言葉だろうか?
俺からも無言でいると、もう行けと手でやられた。
―
6時限目、今日ラストの授業だ。
今日のロングホームルームは自習ではなく、
なにか決め事があるらしかった。
「えっと…それではゴールデンウィーク明けにある球技大会の各競技のメンバー決めをしたいと思います。」
球技大会?
ああ、そういえば、そんなのがあったな。
クラスの親睦がどうとか誰かが言っていた気がする。
俺はとりあえずサッカーということになりそうだなと当たりをつける。
1年で即引退したが、公称でエースと言われていたからな。
今日は体育があったし、
外の太陽は程よい光の加減、
熱くも寒くもない昼寝日和。
そして今はロングホームルームいわゆる睡眠時間だ。
寝よう。
気がついたら、ロングじゃない方のホームルームまで終わっていた。
決まった用紙を委員長に、見せてもらうと、
そこには、サッカーの欄に鷹尾秀介の文字が。
よしよし予想通りと思い、帰り支度わして去ろうとすると、
委員長に声を掛けられた。
「うん?どうした委員長?」
「秀介くん、サッカーの欄しか見てなかったから。
バスケも出場することになっていること言っておかないとと思って。」
「は?」
委員長になると相手の視線まで気に留めるのかと、
現実逃避をしていると、委員長が説明してくれた。
まず私は止めたんだけどと…。
どうやらいらん気を利かせてくれた桐生龍馬というやつが、
バスケの第2チームに組み込んでくれたらしい。
…龍馬の野郎…。
「それに愛さんも同意しちゃって…男子全員が同意しちゃって半ば決定に…。」
よし、とりあえず愛をシメよう♪
そのときの俺は笑顔だったらしい。
教室のドアが開き、誰かが入ってきた。
「秀ちゃん、起きた?帰ろ〜。」
どうやら獲物が来たようだ。




