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第1章 8話

「また、ろうや生活かあ。」

とうふたちは、インドのろうやに入れられていました。国境で刃物を振り回して、怪しかったからです。

「まあ、なんとかなるか。」

もう慣れた、とでも言わんばかりに、とうふは大の字になって寝転がりました。

「くんくん。」

いっぽう、村正は、においをかぐようにきょろきょろ刀身を動かしていました。

「うまそうな、カレーのにおいがするぞ。」

ここは日の届かない真っ暗な地下牢ですが、本場のカレースパイスの香りは、鉄格子をすり抜けて、とうふたちの鼻腔をほんのりとくすぐります。

「ピピ。イカカレー。チキンカレー。カツカレー。」

メカラクダもおなかがすいたようです。ぎゅるる~、とコブから音が鳴っています。

「お前ロボだろ。腹なんて減らねえだろ。」

「ガガ。ねんリょうがひツようデス。エビカレー。」

「お前ほんとは、ロボットじゃねえだろ。」

「ガガ。おまエこソ、ほんトはカタナじゃネえだロ。バカカレー。」

ロボラクダは、口癖に見せかけて悪口を混ぜるという高等AIを働かせました。

「よし。ぶった斬る。」

村正は、冷静にキレてまたケンカが始まりました。

「おやおや、元気なお客さんたちだ。」

騒ぎを聞きつけて、誰かが外の階段を降りてきました。

見ると、赤茶色のローブに身を包んだ、インドの僧侶おじさんでした。

「どうも。格子越しの挨拶というのも礼に欠けるが、容赦してくれ。君たち、日本から来たって?」

とうふは、立ち上がって答えました。

「はい。いま日本は、宇宙人に襲われてるらしいので、早く帰って助けに行きたいのですが。」

「まあ、落ち着きなさい。実は、インドもすでに襲われている。」

「えっ?」

「木々がゴリラのような化け物になってね。民間人も軍隊も、総出で戦闘中さ。」

植物ゴリラだ、と、とうふは確信しました。

「君らを牢に入れたのは、守るためでもある。騒ぎが治まるまで、ここで大人しく休んでいなさい。」

「僕らは、日本で植物ゴリラたちを倒しました。きっと手伝えるので、出してもらえませんか。」

とうふは、日本であった出来事を話しました。

僧侶のおじさんは驚いて目を丸くしました。

「なんと! 君たちは戦士だったのか。これは失礼した。少し、村で話し合ってこよう。待っててくれ。」

やがて、おじさんはカレーを持って再び降りてきました。

「日本のニュースを見たら、確かに君らが戦ってる様子も映ってたよ。ぜひ協力してくれ。まずは、腹ごしらえだ。たくさん食べなさい。」

「やったー!」

とうふたちは、本場のカレーをたくさん食べました。インドカレーと聞くとナンのイメージですが、現地の人は、ナンはお祝いのときとか以外、そんなに焼かないそうです。それよりは、ナンよりも薄い、チャパティと呼ばれる小麦粉を伸ばして焼いたものをカレーにつけて食べているそうです。

「からい! でも、すごくおいしい!」

とうふたちは本場の味に夢中になって、十人ぶんも食べてしまいました。

「ふう、ふう。おなかいっぱいだあ。」

とうふは、満足そうにおなかをさすりました。バスケットボールのように、丸い体になりました。メカラクダも、ロボのくせにカレーを食べて、おなかぱんぱんです。村正も、トマトカレーを飲みすぎて柄がふくらんでいます。

「でもどうしよう。食べすぎて、動けなくなっちゃった。」

「心配いらない。君は、何も動かなくていいんだ。」

僧侶のおじさんは、にこにこして言いました。

「え? でも、植物ゴリラを……。」

「これに、乗ってくれたまえ。」

おじさんは、サラダとカレーの載った、大きなお皿を取り出しました。お皿の真ん中が、広く空いています。ちょうど、豆腐が乗りそうなくらいの広さです。

「乗る?」

とうふは、すっとんきょうな声を出して、聞き返しました。

「ああ。乗ってさえくれたら、あとは私たちが何とかする。」

なんだか嫌な予感がしましたが、とうふは言われたとおり、お皿の上に乗りました。そして、おじさんは、そのお皿をロボラクダに乗せ、引っ張って歩いていきました。

外に出ると、とうふたちは驚きました。植物ゴリラたちが、大きいのです。日本に現れた連中の、五倍はあります。一匹一匹が、象くらいの大きさです。そして、それに対抗して、人々も象に乗って戦っていました。

「インドの木々は、大きいからね。ゴリラたちも、大きくて困ってるんだ。」

「勝てなくはないと思うけど、大変そうだなあ。」

とうふは、息を飲みました。

おじさんは、ロボラクダに地図を渡して言いました。

「あいつらとは、我々が戦う。君らはその状態のまま、あいつらのボスのところへ行ってくれないか。」

「ボス?」

「ああ。そいつを何とかしないと、植物ゴリラは無限に出てくるみたいなんだ。」

「わかりました。」

さて、と言って、おじさんはとうふのお皿にフタをしました。

「じゃあ、ラクダくん。行ってくれたまえ。」

「ピピ。とうふカレー。」

ロボラクダは、なんだか物騒な言葉を放ちながら、歩き始めました。

どんなボスなんだろう。とうふはハラハラしながら、真っ暗闇のフタの中で、丸くなっていました。

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