第一章 10話
「とうふさん! 話を聞かせてください!」
空港を出ようとすると、とうふたちは、新聞記者に囲まれました。
「植物ゴリラと戦っていたのはあなたですよね!?」
「ええと。」
とうふは驚いて、おろおろとしていました。
ドバイで確認したとうふの映像は、当然日本のテレビにも流れていたのでした。
しかも、インドの巨大なボスを倒したことも、すでに伝わっているようです。
新聞記者たちは、空港の入口でとうふを取り囲み、質問責めを始めました。
「植物ゴリラの弱点は何ですか? 世界はこれから、あの化け物たちと、どう戦っていくべきだと思いますか!?」
マスコミは、後ろを飛んでいく飛行機の音よりも、よっぽど騒がしくまくし立てました。
「そのラクダはなんですか?」
「なぜあなたは豆腐なんですか?」
「本当に豆腐なんですか?」
「冷奴は好きですか?」
「ご、ごめんなさい。急ぐので。」
とうふはメカラクダに乗りました。
「待ってください!」
「らくだ! 高速モード!」
とうふはメカラクダに合図を送りました。その瞬間、メカラクダの脚はタイヤに変わり、すごいスピードで回転し始めました。
「にげろー!」
とうふたちはすさまじい速さでその場から逃げ去りました。
「ふぅ。めんどくさかった。」
とうふは、高速道路を走りながらため息をつきました。
全国に放映されると思うと、こわくて何も言葉が出てこなかったのでした。
「たった数日で、こんなことになってるとは。」
高速道路から見下ろす東京の景色は、どこもかしこも植物ゴリラだらけです。それぞれ、サイズはかなり小さく見えます。だいたいブタくらいの大きさのようです。脅威は感じません。ただ、数がかなり多いです。人がそのまま植物ゴリラに置き換わったかと思うくらい、連中は大群で町の中をひしめきあっています。ニュースによると、派手に戦うと民間人を巻き込んでしまうため自衛隊や警察も思いきった対策を取れず手を焼いている、とのことでした。
「もう、いつもの東京じゃないんだ。」
とうふの頭上を、飛行機がひっきりなしに飛来しています。安全な地を求め外国へ逃げる人、あるいは日本が安全だと考え外国からやって来る人、様々です。とうふは、なんでもないように思えた日常こそ、貴重で守るべきものだったのだということに気づきました。
「ぼくだけの力じゃ、だめだ。」
とうふは、もっと仲間が必要だと考えました。
仲間。その瞬間頭をよぎったのは、村正を売ってくれた、刀剣屋のおじさんでした。
「らくだ、板橋に向かって。」
「わカりましタ。はンばーグ。」
メカラクダは超特急で高速道路を駆け抜けました。
「うぅ~ん。ここは……?」
マッチぼうやは、頭を押さえながら目を覚ましました。
「いてて。頭がガンガンする。」
「やっと目覚めたか。」
その声のほうに目を向けると、そこには耳の長い、ボーリング球のような生物が立っていました。
イァンでした。
「あ! てめえ! 俺をいったい……。」
マッチぼうやは、体を動かそうとしましたが、全身を壁に縛りつけられていて、一歩も動けませんでした。
「ど、どこだ? ここは。」
マッチぼうやは、辺りを見回しました。
確か、とうふと別れたあと、板橋の北に向かって……、お菓子を食べてたら、この耳の長い奴が来て……こいつに何かをされて……、だめだ、思い出せない。マッチぼうやは、頭を抱えました。
「お前のおかけで、爆弾をたくさんつくれたよ。」
イァンはにやにやしながら言いました。
「爆弾? ……あっ!」
マッチぼうやは、自分の頭に何か機械が取り付けられていることに気が付きました。
「さすが神に与えられた命だ。無限に爆薬を抽出できる。」
イァンは、マッチぼうやから、爆薬を取り出していたのでした。
マッチぼうやは、改めて周りを見渡しました。ぼろぼろの鉄の壁に、低い天井。火薬のにおい。薄暗い電灯が照らす部屋の中心には、巨大な機械が設置されています。
壁にくくりつけられたマッチぼうやは、顔をしかめました。
「なんだ、この小汚ねぇ場所は。」
「地球を征服するための、秘密研究所さ。これからお前は、神に歯向かってもらう。」
イァンは勝ち誇った顔で機械に近づきました。
「神に……?」
マッチぼうやは、まだ状況がつかめず、きょとんとしていました。
「さあ、爆弾生成機、最大出力だ!」
イァンがレバーを引くと、機械はガコンガコンと激しく動きだし、真っ赤になって熱を吹き出しました。
それと同時に、マッチぼうやの頭に、締め付けられるような痛みが走りました。
「ぐわああああ!!」
マッチぼうやは、身悶えましたが、動けません。びりびりと全身に電撃と衝撃が弾け回ります。
「さあ、見せてくれ! 神に与えられた力を! 俺の下僕になるのだ!」
イァンはさらに機械の出力を上げます。
マッチぼうやは強烈な痛みに、ついに気を失いました。
数分後、うつろな瞳で顔を上げました。
「イ、ァン、さま……。」
「よし。うまくいったようだな。」
イァンは、うなずいてマッチぼうやに近づきました。
「聞こえるか、マッチぼうや。これからお前は、私の代わりとなって、地球征服活動をするのだ。」
マッチぼうやは、うなだれたまま、薄い意識で力なく答えました。
「はい……。」
「邪魔する者は、ぜんぶ爆破してしまえ。お前の爆発力も上げておいた。地球を、めちゃくちゃにしてやるんだ。」
「わかり、ました……。」
なんということでしょう。マッチぼうやは、記憶を失い、洗脳されてしまったのです。




