第1章 第4話 登校
「だーいきくんと学校うれしいな~♪」
「おねぇ、恥ずかしいからやめてよ……」
「いやもうこれ自体が恥ずかしいから……」
翌日。俺は依月さんと椿さんと一緒に転校先の中学初登校を迎えていた。2人と手を繋ぎながら。
「だめだよちゃんと手繋がないと。大樹くんかわいいから誘拐されちゃうかもしれないでしょ?」
「いや2人の方がかわいいから……」
「きゃー! 大樹くんだいすきぃぃぃぃっ!」
「おにいちゃん……好き……」
「待って手終わる痛すぎ……!」
くっ……同じ制服を着た生徒の目が痛い。ふわふわの長い髪を鮮やかな茶色に染めた今時感のある依月さんと、対照的に真っ黒の髪を伸ばしている椿さん。家族という贔屓目抜きに間違いなく美少女である2人と手なんか繋いでるんだ。嫉妬はされるだろうしやはり恥ずかしくて仕方がない。
だがこの時を待っていた。学校に行くこの日を。
俺は2人から完全に子どもだと思われている。それは仕方がない。いくら嫌だと言っても2人には2人の考えがあるのだから。
だからその見方を、変える。つまりは子どもじゃない。一人の男と見られるようになればいいんだ。
具体的には、彼女を作る。そう、彼女を作ればこの2人の俺を見る目は変わるはずだ。それにベタベタしてくることもなくなるだろう。少なくとも一緒にお風呂に入ったり、俺を挟んで寝ることもなくなるはずだ。
「ねぇ、俺に彼女ができたらどうする?」
「まずその子のことを調べる。最低限勉強学年10位以内には入っててほしいよね~。あと運動や芸術も平均以上は絶対。家族に面倒な人はいないのは当然として、結婚したら嫁いでくれるかも重要。子どもについては一緒に考えようね~?」
「それとおにいちゃんより背が低い子の方がいいと思う……。それに彼氏できたことがない子が絶対。できるなら同級生か年下がいいかな……。おにいちゃんの自信につながる子ならわたしは反対しないよ……?」
思ったよりガチだった……。せいぜい嫉妬するくらいだと思っていたが、将来設計まで考えてやがる……。
「でもやっぱり少しいやかな~。やっぱりまだ一緒にいたいもん」
だが本当に少し寂しそうに笑う依月さんを見ると、計画に少し罪悪感を覚えてしまった。と思ったのも束の間。
「嫌なことあったらすぐにお姉ちゃんに言うんだよ? 大樹くんちっちゃいから絶対に喧嘩しちゃだめだからね? 大丈夫お姉ちゃんが何でも解決してあげるから!」
「うるせぇ……」
学校に到着しクラスである2年B組の前。どんどんクラスメイトたちが教室に吸い込まれていく中、依月さんは手を堅く握りしめて放してくれない。本当に恥ずかしい。
「なぁあれ五十嵐姉妹じゃね……?」
「あの美少女姉妹の……!?」
「で、あのチビ誰だよ……」
「知らねぇ……なんであんな奴があの五十嵐姉妹と……!」
そして周りから口々に嫉妬の声が聞こえてくる。本当にやめてほしい……! でもこの時間さえ耐えれば家に帰るまで俺は自由に……!
「じゃあいってらっしゃいのちゅー、ね?」
「わ、わたしも……っ」
「……え?」
どうやら俺が彼女を作るのは無理そうだった。
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