早口言葉に関する考察 2
「赤パジャマ青パジャマ黄パジャマ!」
「「この世界は俺が守る!」
皆んなのヒーローが胸に宿ったパジャマがついに登場!
暗闇で光るから夜も安心!
君も一緒に闇へと潜む敵に立ち向かおう!
「これで君もヒーローの仲間入りだ!」
好評発売中!!」
今年で遂にアラサーから見事に魔法使い……、もとい三十路へと足を踏み入れた。
清い心と穢れを知らない身体であれば魔法が使えると聞いていたし、名実ともに誰よりも資格があると思っていたんだが。
俺の当たり前な日常は何一つ変わることなく継続していくようであった。
いい加減中々に酸いも甘いも経験してきたわけで、だから魔法が使えないじゃないか!と不満などあるはずもない。
とりあえずは今日も頭上でけたたましく鳴る時計を止める。
ベッドから降り、グッと背伸びをすると盛大に背骨が鳴った。
昨日は中々にヘビーな仕事だったからな、致し方ないことだ、と頭で理解はしていても確実に回復が遅くなっている身体が老いを噛み締めていた。
諸先輩方はこの辺りの老いを感じさせない。逆にエネルギッシュ過ぎて少し引いていたものだが、いざ立場が近づいてみると純粋に尊敬さえできそうである。苦手であることは変わらないが。
さて……、支度を済ませてとっとと職場に向かうとするか。
今日からの出向先はどこになることやら。
昨日は彗星に乗ってきたエイリアン御一行に力業とは言え漸く立ち退き頂いたところだしな。今度は近場がいいな。
っと、緊急アラームが鳴り始めた。
これは……、新人5人組の担当エリアじゃないか。まだ彼らにこの案件は厳しいと思うのだが……。とりあえず助太刀に行くか。
玄関に向かいつつ、部屋に丁寧に飾ってあるボロボロの子供用パジャマに目を向ける。
20年前にあれが欲しいって駄々こねなきゃ、こんな危険な仕事に就くことはなかっただろうな。
今まで何回も考えた、しかし覆らない出来事を脳の片隅に追いやってテレポーターに立つ。
さぁ、今日も頑張るとしようか。
「変身!!」