表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

美少女時計

作者: 鈴木オルガ

 いつもギリギリまで寝ていて遅刻寸前で登校する俺に、母親が目覚まし時計を買うように勧めた。馴染みの通販サイトで申し込んだのは、声優が可愛い声で起こしてくれると言う、美少女時計だった。届いたのは何の変哲もない銀色の四角い時計だった。文字盤の下に3つボタンがあって、一番左のボタンで俺は時刻を合わせた。真ん中のボタンでは、ユーザー名を登録するらしい。ケイタと名前を入れ、俺は説明書を見た。肝心なのは右側の、声を選ぶボタンである。

「どんな声があるんだろう?」 

 試しに一番を押してみた。幼なじみボタンである。

「もう、6時だよケイタ君!起きないと遅刻しちゃうよ!」 

 高めの元気な声、ちょっと怒っているところもツボだ。これから苦手な朝も難なく起きられるだろう。気を良くして俺は二番を押した。 

「ろ、6時だからね。ケイタ君、ベ、別に君のこと起こしに来たわけじゃないだからね!」

 照れ混じりの困った声。ツンデレボタンである。これはこれで有りかもしれない。ツインテールの美少女が照れているところを想像して、俺はニヤニヤした。続いて三番のボタンを押してみる。

「6時だよ、ケイタ君。起きないと、君を刺しちゃうかもね?」

「ギャー!」

 思わず叫んでしまった。優しいのに背筋が凍りつく声。ヤンデレボタンである。怖すぎてそもそも眠れない。目覚まし時計なのに寝かせてくれないという、恐ろしいボタンである。俺は慌てて四番のボタンに切り替えた。

「6時だよ、ケイタ。ほっぺにご飯粒、付いてるよ?」

「か、母ちゃん?」 

 驚いて椅子から転げ落ちそうになってしまった。間違いない。迫力のある、野太い声。おかんボタンである。

「な、何だよこれ」

 何で母ちゃんの声が登録されているんだよ。俺は慌てて説明書を見た。そこには登録された目覚ましボイスが順に、明記されている。幼なじみ、ツンデレ、ヤンデレ、普通のおかん、困ったおかん、照れたおかん、泣いたおか等々。

「つーかこれ、おかん時計だろ?」

 毎日母親に起こされているのに、わざわざおかんボイス選ぶ必要ある?もちろん無い。俺はそっと美少女時計を箱に戻し、引き出しの一番奥に押し込んだ。いつか本物の美少女が俺を、起こしてくれる日を夢見ながら。




 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 寝坊決定(笑) でもおかん、起こし方優しくてほっこりします。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ