表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/161

【84】これでチャラ?

 ラルークと二人きりになると、途端に沈黙が訪れる。普段なら気にしないが、今はラルークに対する気持ちを自覚してしまったことで頭がいっぱいなので気まずく感じる。ドレス似合ってないのだろうかとか、何か嫌なことがあったのだろうかとか、そんなことばかり考えてしまう。

 そんなふうにぐるぐると考えていると、不意にラルークが話しかけてきた。私がその声に反応してぱっと彼の方を向くと、何故かすぐに目を逸らされる。どうしたのだろうと首を傾げていると、彼は口を開いた。


「ごめん……なんだか、いつも以上に可愛いから、緊張しちゃって……」


 ラルークはそう言って顔を真っ赤にして俯いた。何その反応!? と恥ずかしさより驚きの方が勝ってしまう。私の記憶の中の彼はわりとそういうことを恥ずかしげもなく言うタイプだ。私のことをお姫様と呼ぶくらいの人間なのに。


「あ、ありがと……。あんまり話さないから、嫌われたかドレス似合ってないかかと思っちゃった」


 動揺を隠しつつそう答えると、ラルークは慌てて否定する。


「まさか! そんなことないよ、凄い似合ってるし、嫌いなんかじゃ……」


 バッと手を握り、私の目をじっと見て必死に訴えかけてくるラルークに、なんだかこちらまで恥ずかしくなってきて目をそらす。本当にこの人はずるい。私はどうにかして誤魔化そうと、話題を変えることにした。


「そうだ、どうしてクロムと一緒に来たの?」


 そう聞くとラルークはあぁ……と呟き、大したことじゃないんだけどと前置きしてから話し始めた。


「先週魔法研究所の所長になってさ。なるって決まる少し前に皇宮に届を出したんだけど、そしたら陛下が書室の入館許可証を渡したいから今日お姫様のパーティの前に皇宮に来てくれって手紙が来て」


「えっ、そうだったの! 所長だなんてすごいね、おめでとう」


 なりそうだなとは思っていたがこんなに早くなるなんて。魔法研究所は一応民間の組織だが、その歴史を辿ると元々は魔法騎士団から派生したものらしい。だから前のように戦争や有事の時には帝国から要請が来たりするので、所長になるには魔法に詳しいだけではダメなようだ。色々と面倒なことがあって大変な仕事なのだとこの間侍女が噂していた。

 前の所長さんはどうしたのだろうと疑問に思い聞いてみると、親が病気になったみたいで辞めたとのことだった。


「所長になったら忙しいよね。今より会えなくなっちゃうかな」


「そっ、……んなことないよ、お姫様が呼んでくれたらいつでも行くから」


 ラルークはそう言って笑ったが、少し寂しそうな表情をしていた。やっぱり忙しくなるのは避けられないようだ。毎週魔法を教えに来てくれた時が懐かしいなとぼんやりと思い返す。あの時は特に気にしていなかったけど、今となってはもっとラルークとの時間を大切にすれば良かったと後悔している。これから二人で出かける機会も減ってしまうのだろう。星をみたり魔法の練習をしたり、楽しい時間を過ごしたのに。


「あ……そうだ、今日って星、綺麗に見られるかな。せっかくだし、見に行きたいな」


 どう? と聞くと、ラルークは一瞬固まってから、うん! と大きく返事をした。また夜に会おうね、と伝えて、私はラルークの元を離れた。



 

 パーティも終盤に差し掛かった頃、私は椅子に座ってワイングラスを傾けていた。体調も落ち着いてきたし薬も一応飲んだし一杯くらいなら大丈夫だろうと、飲みやすい甘めのワインを飲んでいる。やっぱり毒が入ってないちゃんとしたワインはおいしい。もっと飲みたいが、酔ったらどうなるか分からないのでこの場ではやめておこう。ちまちまと少しずつ飲むことにする。

 ふと会場内を見渡すと、皆それぞれ談笑したりダンスを楽しんだりと楽しげにしている様子が伺えた。

 すると突然後ろから声をかけられ振り向くと、そこには思いもしない人物が立っていた。


「よォ、相変わらずチビだな。ちまちまワインなんか飲みやがって」


「じ、ジャックス!?」


 驚く私にニヤリと笑いかけ、ジャックスは近づいてくる。私は驚きのあまり動けず、ただ呆然としていた。そんな私を見て、さらに口角を上げて笑う。


「リルヴェートんとこのガキが今日休み届出してやがったから、理由聞いたらお前の誕生日だからって言いやがったからな。俺もたまたま仕事が終わったから来てやった」


 ジャックスはそう言うと私の隣の席にドカッと座る。そこはセドリックが座る所だけど大丈夫だろうか。

 そのあと私の方に向かって何かを投げた。慌ててそれを受け止めると、小さな箱のようだった。


「なにこれ?」


「要らねェなら返せよ」


 ケッ、と吐き捨てるように言われてしまったのでとりあえず私はその小箱を開けることにした。中身は何だろう。恐る恐る開けてみると、中に入っていたのは髪飾りであった。

 それは花びらの形をしているもので、キラキラと光っている。中心には宝石が埋め込まれているようでとても可愛い。驚いて顔を上げると、ジャックスがこちらを見ていた。


「これ、貰っていいの?」


「要らねェなら返せっつっただろ」


「い、いるってば! ありがとう、すごい可愛い」


 私がそう伝えると、ジャックスはフンと鼻を鳴らした。そして何故かそっぽを向いてしまう。いつものように嫌味でも言われるのかと思っていたのだが、予想外の反応だった。


「そういや半ば強引に戦争連れてったのに何もしてねェなって思っただけだ。これでチャラだ」


 ジャックスはそう言い立ち上がりさっさと帰ってしまった。なんだかんだで優しいんだよなぁ、と思う。ツンデレという奴なのだろう。頭はおかしいしクズでチビで目つきは悪いが、総団長としてなにかと実績を残しているので部下からの人望はそれなりにあるようだ。


 私は貰った髪飾りを見て微笑む。ジャックスからプレゼントなんて貰うと思っていなかった。セドリックが休み届を出したから知ったとしても、直接来てくれるなんて。

 すぐに着けたいが生憎今日はもう別の髪飾りをつけてしまっているので今度にしよう。私は大事に髪飾りの箱をしまって、再びワインを飲み始めた。

2022-03-23

81話と82話の間にカティアナの記憶(過去編)2話割り込み投稿しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ