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【83】タイミング。

「お嬢様、せっかくの可愛い顔が台無しですよ」


 ルルリエはそう言うと私の頬に手を当てて顔を覗き込んできた。私は彼女の手に擦り寄り、むっと口を尖らせる。

 今日は待ちに待った誕生日だ。なのに朝起きた時から気分はどん底で、今もテンションが上がる気配がない。


 理由は簡単だ。昨日、いつもの夢を見てしまったのである。今までは一年に一度くらいの周期だったが、十五歳の年は三回も夢を見た。昨日のは十六の年の分とカウントしたとしても間隔が短いし一度に見る夢の長さが長い。とはいえ、一年に一度しか見ないと神様的な謎存在からお告げがあったとかそういうのでは無く、単に今までがそれくらいだったからちょっと多いなと思っただけで別に夢を見ることが嫌な訳では無い。


 ただこうも絶妙に見たくないタイミングで夢を見るとなると、流石に少しは落ち込む。ズキズキと痛む頭に少し熱っぽい身体。あの夢を見ると決まって体調が悪くなるのに、どうして誕生日の前日に夢なんて見たのか。飛び起きた時三原色侍女たちを呼んでしまうと絶対今日の誕生日パーティに支障が出ると思って呼ばず、朝準備のために部屋に来た三人は何故か誕生日なのにやたらと私の機嫌が悪い事に戸惑っていた。もしかしたら熱っぽいのは気付いているかもしれないが、私が何も言わないので触れずにいるのだろう。


 そんなこんなで準備が終わり、玄関へ向かう。せっかくだから大きい会場貸切しようと言われ頷いた過去の私を呪いたい。こうなるなら屋敷でやると押し通せば良かった。

 頭痛は治まるどころか酷くなる一方で、立っているのさえ辛くなってきた。今すぐ寝てしまいたい。だが、まだパーティは始まっていないのだ。主役が居なければ始まらない。最悪着いてから座ったままでいようとか色々考えていると、流石におかしいと思われたのかルルリエが声を掛けてきた。

 彼女は私と目が合うとぎょっと目を開き、慌てて駆け寄ってきた。それからあれよあれよという間に抱えられ、せめて数時間だけでも遅らせてその間休んでくれと懇願された。そこまでされてしまえばもう断る理由もなく、私は大人しく従った。


 薬を出してもらいしばらく座っていると、だんだん頭の痛さが引いていく。心配かけまいと我慢していたが逆に迷惑を掛けてしまった。今から向かえば準備に手間取ったと言って誤魔化せるだろう。

 私はゆっくりと起き上がり、扉に向かって歩き出す。


「もう少し休んだ方が……」


「私が招待したのに待たせる訳にも行かないでしょ、これくらいなら大丈夫だよ。薬、ありがとね」


 私がそう言うと、ルルリエはさっき飲んだ薬を包み、せめて夜も飲んでくれと念押しをして渡してくれた。それを受け取り、私は礼を言うとそのまま部屋を出た。



 パーティー会場に入ると、もう既にみんなが集まっておりざわめいていた。ちらと会場を見回すが、クロムはまだ来ていないようだ。とりあえず待たせてしまったので慌てて来てくれた人達に挨拶して回る。まずはアリスからだろうと彼女を探していると、向こうからやって来てくれた。


「お誕生日おめでとうございます! いつも素敵ですが、今日のドレスは一段とお似合いです!」


「アリス、来てくれてありがとう」


 キラキラとした笑顔で言われ、思わず頬が緩む。主役が私だからと少し控えめなドレスだが、相変わらず可愛さが大爆発している。彼女の言葉に返すように私も微笑みを浮かべると、彼女は更に嬉しそうな表情になった。


 そのあともある程度挨拶をして回り、あとはラルークと数人なのだが、肝心の彼が見当たらない。身分順に回っていたからラルークに挨拶してから残りのメンバーの元へ行こうと思っていたのだが。仕方ないので先にメンバーの方に行っていようと思いその場を離れる。


「本日はお越しくださりありがとうございます。ごゆっくり楽しんでくださいませ」


 そう言って頭を下げると、周りにいた貴族達はにこりと笑い、会釈を返してくれる。それを確認してからまた歩き始める。


(クロムはともかく……ラルークはどこだろう? セドリックのほうが先に会場に居たから知ってるかな)


 セドリックを探そうと思い辺りを見渡すと、ちょうど入口の扉が開かれる。そっちの方に目を向けると、入ってきたのはクロムとラルークだった。なぜ二人一緒に居るのか不思議に思いながらも、私はそちらへ向かって歩いていく。


「クロム、ラルーク。来てくれてありがとう」


「お嬢さん、成人おめでとう」


「ソフィ嬢、おめでとうございます」


 クロムが隣にいるからかやけによそよそしいラルークに再度疑問に思いながらも、彼らの祝いの言葉にぺこりと頭を下げる。


「すまないな、遅くなってしまって。少し話が長引いてしまってな」


 クロムはそう言って私の手を取り、甲へと口づけを落とした。そしてすぐに手を離すと彼はこちらを見てにやりと笑う。

 それにドキッとして顔が熱くなるのを感じながら、それでもなんとか平静を保つ。シンプルに顔がいいので挨拶だと分かっていても緊張してしまう。同じことをラルークにされたらと思うと恥ずかしくて死んでしまうかもしれない。……なんてことを考えていたとき、ふと思う。ラルークと会った時、挨拶でこういうことをされたことが無いのだ。うんうんと記憶を辿ってみるが、やはり無い。今までそういう機会が無かっただけなのだろうか。いやでも、聖誕祝祭(ファンティスタ)のときも特にそういうことは無かった。まあ、されても心臓が持たないので構わないけれど。


 それからしばらく話をしたあと、クロムはセドリックの所へ行くと言って去って行った。

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