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【56】事後処理。

 翌朝も天気は回復していなかったが、馬車が出せるくらいの雨だったので帰ることにした。起きると、ラルークが近くまで馬車を呼んでくれていたみたいで、もう出発の準備が終わっていた。彼に手を貸してもらいながら起き上がる。


「体調はどうかな? 熱は……やっぱりちょっと高いね。事情は僕が説明しておくから、お姫様はしっかり休んでね」


「うん、ありがとう……」


 タリージェさんに服は後日返すと伝え、着替えずにそのまま馬車へ乗り込んだ。屋敷までの道に水路があるが、そこは昨日の雨で洪水が起きているらしく、遠回りして屋敷へ向かう。なるだけ早く、それでいてあまり揺れないくらいのスピードで馬を走らせてくれた。おかげで、お昼前には屋敷へたどり着いた。


「お嬢様! 昨夜はどこに……、ハルベルト卿?」


 たまたま玄関前の掃除をしていたメティスが私の姿を見て駆けつけてきた。お姫様抱っこされている私とラルークを交互に見たあと、話し出さないことに不思議に思ったメティスが私の頬に触れた。


「お嬢様、すごい熱ではありませんか……! すぐに部屋へ行きましょう、ルルリエとファムを呼んできます!」


「差し支えなければ、僕が部屋まで運びます」


 馬車の中に着ていたドレスが、と付け加えながらそう申し出たラルークの言葉を聞き、メティスはすみませんがお願いしますと言ったあと走って馬車の中のドレスを回収し、部屋へと案内した。


「あれ、ハルベルト卿……と、ソフィ?」


 部屋へ向かう途中、どこからかセドリックの声が聞こえた。ラルークは軽く会釈をしたあと、ぱたぱたと小走りで部屋へ向かうメティスを追った。


「すみません、事情は後で説明します」


 ラルークがそう言うと、セドリックは少し間を置いたあとわかりましたと言った。部屋に着き私はベッドに横になる。部屋にはファムとルルリエがいて、いつもの看病体制に入った。しばらくして部屋の扉がノックされる。ラルークが対応に向かったみたいで、扉を開けるとセドリックがいたようだ。声が聞こえる。


「昨夜雨に降られて体調を崩してしまったみたいで。……本当に申し訳ありません、僕の責任です」


「だから昨日帰ってこなかったのですね」


 ラルークが言ったあと、セドリックが口を開いた。そしてそのまま私がいる寝室の方へ向かってくる。


「ソフィ、体調は大丈夫? 昨日帰ってこなかったから心配だったんだよ。ハルベルト卿と一緒に居たの?」


「うん……雨すごい強くて、馬車探すよりタリージェさんの宿屋のほうが近かったから……体調は、大丈夫……時々あるアレだよ」


 私の説明を聞いて、セドリックは納得してくれたのか口を閉ざした。そして小さくため息をついたあと、また口を開いた。


「……とにかく無事で良かったけど、ソフィは成人前で未婚の女の子なんだから、家族以外の男と一緒に居るのは良くない。……この話はまた今度、今はとりあえず、ゆっくり休んでね。ハルベルト卿借りるよ」


「心配かけてごめんなさい……でもラルークのことは怒らないで。ラルークがいなかったら、一人で宿屋で倒れてたかもしれない。夢から覚めたあと、ずっと看てくれていたの」


 私がそう説明すると、セドリックは眉間にシワを寄せたままラルークを連れて部屋を出ていった。その後ろ姿を見送ってから目を閉じた。

 次の日の朝、熱は下がったものの体がだるくて起き上がれなかったため、今日一日安静にしていようとベッドで本を読む。

 コンコンというノックの音のあと、セドリックが入ってくる。彼は私の様子を見ると安心したような顔をして、朝食を持ってきてくれたことを告げた。

 夕食を食べていなかったので空腹を感じ、ありがたくいただいた。食べ終わる頃合いを見て、セドリックが話しかけてくる。


聖誕祝祭(ファンティスタ)、ハルベルト卿をパートナーに誘ったって本当?」


「うん。急だしいまから探すのも時間ないし、ラシェルも怪しいから……それより、あの後ラルークに何もしてない?」


「……とりあえず、ソフィを看病してくれたことと屋敷まで運んでくれたことにはお礼を言っておいたよ。彼の屋敷まで馬車も出した」


 セドリックの言葉を聞いてほっと安心する。……まあ恐らく、未婚の女にうんぬんとか、言ってるとは思うが看病のお礼を言ってくれたならまだよかった。ラルークには後で手紙を出して謝っておこう。


「僕よりラシェルと父上が怒ってる」


「あぁ……ラシェルはあとで事情を説明するとして、お父様はどうしよう……」


 父はかなり過保護である。親バカと言うべきだろうか、未だに婚約して欲しくないと申し出を燃やしてるらしいのに、挨拶も済ませてない男と一夜を共にして(語弊がある言い方だが)その上風邪をひいて帰ってきたとなればカンカンに怒ってるだろう。

 とりあえずラルークは何も悪くないことをちゃんと伝えないと。これから起こるであろう事を考え、心の中でため息をついた。


 翌日、体調も良くなり急いでラルークに手紙を出す。その後は父に今回のラルークについて弁解をしにいき、なんとか納得してもらった。宿へ借りた服を返しに行き、屋敷に戻るとひと仕事終えた解放感からかどっと疲れが押し寄せてくる。ベッドに倒れ込むように横になり、そのまま眠りについた。

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