表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/161

【44】おでかけ。

 屋敷に着き馬車を降りる前にセドリックに引きとめられる。どうしたの? と聞けば、この後なにか予定はあるかと聞かれ首を横に振る。


「ちょっと出かけない? 買い物でも、お茶でも」


「? うん。にーにがお出かけするの、珍しいね」


「これから今以上に忙しくなるだろうし……今でさえあんまりソフィとゆっくり二人で話す機会ないのに、もっと減っちゃうかなって思って」


 だから今日くらいは一緒に過ごしたいなと思って、と言いながら私の手を握る。私のほうも特に断る理由はないし、楽しみ! とにっこり笑った。


「今日のドレスはわりとカジュアルな感じだし、そのまま出かけちゃっても大丈夫かな? うーん、よく分からないからメティスに聞いてみよっと」


 私自身あんまり外出しないし、こういう用事を済ませたあとは着替えた方がいいのか分からず、とりあえずセドリックの手を握りながら馬車を降りる。玄関前で待っていたメティスに聞くと、そのままで大丈夫ですよと返された。


「ソフィはすぐ出られるから、にーにが準備おわったら呼んでね」


「うん。一旦任命式で貰ったものとか置いてくる」


 セドリックは一度自室に戻り、身支度を整えるとのことなので私も一旦部屋に戻ることにした。そういえば、昔セドリックから貰ったアクセサリーがあったはす。あれどこにやったっけ? 思い出せずモヤモヤしながら、クローゼットの中を探す。すると奥の方に見覚えのある青い宝石がついたネックレスを見つけた。三年くらい前の特に何でもない日に貰ったものだ。綺麗だなと眺めていたらセドリックが、これあげると言って渡してくれた。せっかくだしつけていこうと首にかける。

 少しして部屋を出て玄関へ向かう。セドリックはまだ来ていないようだったので先に馬車の中へ入って待つことにした。しばらく待っていると、セドリックがやってくる。髪型はそのままで、服だけ騎士団の正装から少しラフなものに変えてきたようだ。


「待たせてごめんね」


「ううん。ソフィも一回部屋に戻ったの」


「そっか。……あ、それ」


「せっかくにーにとのお出かけだからつけてみたの!」


 どう? と聞いてみると似合ってるよと返してくれた。それからセドリックと一緒に街へ向かう。馬車の扉を閉じ、御者に行き先を伝えた彼は私の向かいに座った。

 街へ向かうまでの間、セドリックは騎士団の話をしてくれた。彼がいる魔法騎士団は本部からみて西側にあるらしい。私が行ったことあるのは近衛騎士団と訓令兵の訓練所でそれぞれ北と南にある。魔法騎士団の本部は魔法を使っても壊れにくい素材で作られた大きな建物なんだとか。騎士団の同期の子たちとも仲良くしているみたいで、色んな話を聞かせてくれた。

 そんな話をしているうちに馬車は目的地に着いたようで、ゆっくりと止まる。外から扉が開かれたので、降りようとしたところセドリックに手を差し出されたので、その手を取る。


「街に出るの久しぶり!」


「パーティくらいでしか外でないもんね。最近はラシェルさんも護衛離れることが多いし……」


 セドリックの言葉にうんうんと頷く。最近、ラシェルは一応護衛なのだが近衛騎士団のほうに呼ばれてよく家を出る。勿論私が出掛けるから、と言えば残るのだが、引き留めてまで出かけたい所もないし、ラシェルの予定が空いている日かパーティの時くらいしか外に出なくなった。

 今日はなにか行きたいところあるの? と聞けば、特にないと言うので馬車を降りてブラブラと街を歩く。大通りには人がたくさんいて、活気があっていいなぁと思いながら通り過ぎていく。


「たくさん人いるね」


「そうだね。パルセナのなかでも父上の領地は比較的税金が安い方だし、この辺りは結構人が多いと思うよ」


「そうなんだ」


 領主は国で決められた税率の中で自由に税を決められる。領地経営についてはあまりよく分からないけど、跡を継ぐセドリックが分かっているなら大丈夫だろう。


「気になるところはあった?」


 そう聞かれたので少し考えてみる。うーん、と頭を悩ませているとセドリックが苦笑いしていた。

 せっかく街へ来たのに何もしないのもなと思いキョロキョロと辺りを見渡すとふとアクセサリーショップが目に入る。ショーウィンドウのアクセサリーをじっと見ているとここに行こうか、と促され店内へ入った。店内に入ると店員らしき女性がこちらに気付きいらっしゃいませと声をかけてきた。


「あら! セドリック様とソフィ様ではないですか。どうぞごゆっくりご覧下さい」


 ぺこりと会釈して、店内を見て回る。ネックレスやイヤリングなどが沢山あってキラキラしている。どういうものがいいのかあまり分からず、セドリックの方を見ると彼は私の視線に気付いたらしく、何か欲しいものでもある? と聞いてきた。私は首を横に振ったあと、正直に言うことにした。


「どういうのがいいのか分からなくて」


「ソフィはなんでも似合うから、好きなのを選べばいいんじゃない?」


 そんなこと言われても……と困っていると、セドリックがあっちにある髪飾りなんかはどう? と提案してくれたので、そちらへ向かう。そこには髪留めがいくつかありどれがいいかなと考えていると、セドリックが手に取りこちらに見せてくれた。


「こういう星っぽいのもいいね。でも、結構赤とかも似合うし……こういうのもいいかも」


「おほしさまのやつ可愛いなぁ。でも色々おほしさまみたいなの持ってるからたまには違うのにしようかな……。その赤いの可愛いね」


 セドリックが手に取った中の、赤いルビーが付いた髪飾りを指さすと渡してくれた。ルビーと白のリボンが合わさっていてとても可愛らしいデザインだ。それにこれくらいの大きさなら普段使いできそうだし派手すぎなくて好みだ。これにしようかな、と呟くとセドリックが店員さんにさっきの髪飾りを渡した。

 他にも見ようと店内を見ていると、金色の薔薇の形をしたピンバッジのようなものが飾られていた。小ぶりだがしっかりした作りで、繊細なデザインがとても綺麗だ。


「ねえ、これ同じの四つある?」


 近くにいた店員さんに声をかけると、裏を見てきますと言ってその場を離れた。そして数分待つと、ケースを片手に持ち戻ってきた。中には先程見たものと全く一緒のものが四個入っていた。


「ちょうど四個ありました。ラッピングしましょうか?」


「ううん、大丈夫」


 私がそういうと、後ろからセドリックが覗き込み気に入った? と聞いたのでこくりと頷く。


「誰かにプレゼントするの?」


「うーんとね、侍女たちにあげようかなって。いつもお世話になってるし」


「いいね。小さいから仕事の邪魔にならないし、デザインも可愛いね」


 セドリックはそういったあと他にはある? と聞くので少し考える。せっかくだしラシェルにもなにかプレゼントしたいな、というと一緒に探してくれた。


「騎士団だと訓練とかで汚れたりしちゃうから、どういうのにしたらいいのか悩んじゃうなあ。身につけるものじゃないほうがいいのかな? にーにはどういうの貰ったら嬉しい?」


 所属は違えど同じ騎士団にいるセドリックなら、参考になる意見が聞けるかもと思って聞いてみる。すると彼は顎に手を当てて考え込んだ後、これはどうかな? といってネックレスを指さした。

 それはシンプルなもので、細い金のチェーンに小さな紫の石が付いているものだ。

 シンプルだけど上品さが漂っているし、ラシェルの瞳の色にも合う。それに短めのチェーンだから邪魔にもなりにくそう。私はそれをじっと見つめた後、じゃあこれにする! と言った。店員さんを呼び会計をしてもらう。セドリックが見てない隙に緑の石がついたクラヴァットの留め具を買っておいた。時々しか見ないがアスコットタイにも使えるタイプだし使い所に困ることはないだろう。後でセドリックに渡そう。

 ラッピングされたものたちを受け取り店を出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ