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【17】事件?

 私の返事を聞いたクロムはすぐに準備をすると言って帰っていった。そしてようやく聖誕祝祭(ファンティスタ)も落ち着き始めてくる。

 私とラシェルとエルドさんは三人で聖誕祝祭(ファンティスタ)が終わるまで居ることにした。入場は最後の方だったけど、退場は最初の方らしい。じきに順番も来るだろう。

 しばらく三人で居ると、また入場の時のような演奏が始まった。どうやらこれが退場の合図らしい。私たちは会場の端へと移動する。


 すると外が何やら騒がしい。どうしたのだろうと思っていると、出口付近の窓ガラスがバリンと音を立てて割れた。


「わっ……!?︎」


 小さく声を上げると、ラシェルとエルドさんが私の前と後ろにさっと移動する。ガラスの破片は私たちの方までは飛んできてないけど、会場内でざわめきが起きた。

 外を見てみると、そこには数人の男達が立っていた。皆、黒いフード付きのマントを羽織っていて、素顔は見えない。彼らの手にはナイフや剣などが握られていた。なにだろう。そう思った瞬間、一人の男がラシェルに向かって走り出した。まさかと思い、咄嵯にラシェルの手を引く。

 キィンッと甲高い音がしてナイフが弾かれ、目の前の男の腕からは血が流れ出ている。見ると、いつの間に抜いたのか、エルドさんの剣先がその男の手首に当てられている。すごい反射神経だ。


 男は舌打ちをして後ろに飛び退く。が、すぐに体勢を立て直してまた向かってくる。今度は私を狙ってきていた。目線が私の方に向いている。

 まずいと思い慌てて防御魔法を詠唱する。ギリキリ間に合い、ガッと鈍い音をさせて受け止めるが、力が強いのと、私の魔法が不完全で押されそうになる。すると、ラシェルがドレスの裾を捲り、そこから太腿につけていた短剣を抜き取り、そのまま勢いよく振り抜いた。

 キンという金属の音と共に、相手の剣が弾き飛ばされる。そこにエルドさんがすかさず切りかかり、相手はそれをなんとか防いだが、一瞬よろけた隙にエルドさんが蹴りを入れた。

 それでバランスを崩した相手に、ラシェルはもう一本の短剣を抜いて構える。


「ラシェル」


 エルドさんの声かけにラシェルはハッとすると、ドレスの胸元に手を突っ込んで何かを取り出す。それは小さな瓶に入った液体だった。それを床に投げつける。パァンと破裂するような音がしたと思ったら、辺り一面に白い煙が立ち込めた。そしてラシェルに抱き抱えられてその場から去る。


「ラシェル、これは……」


「催涙弾のようなものです。目が痛くなるから気をつけてください」


 目を擦らないようにしながら聞くと、そう返された。確かに目がヒリヒリとしてすごく辛い。うっすら目を開けるとまだ敵の近くにいるエルドさんも少し顔をしかめていた。


 ラシェルは一旦建物に入り二階に出ると下の様子を伺う。ようやく目が慣れてきて、視界がクリアになる。そこでは先程の黒い集団が皆倒れていた。どうやらあの隙にエルドさんが全員倒したらしい。流石だ。……でも何者だったんだろう? あれだけ暴れていたら衛兵とかが来ると思うんだけど。そう思っていると、ラシェルがぽつりと呟く。


 ──アズィム子爵、と。


 どうやらあの男、嫌味ったらしくラシェルと私の前に出てくるだけでは足りなかったらしい。……いや、最初から、あれが目的か。ストリナだと私の住んでいるところから近いし、護衛をラシェルにしたことくらいすぐ耳に入るだろう。ラシェルか私に嫌がらせでもしようと思っていたところ、ちょうどいいタイミングで私が聖誕祝祭(ファンティスタ)でここに来ることを知り……うん、ありえるかもしれない。


 それにしてもこの国大丈夫だろうか。貴族なのにこんなことしてくるなんて……。

 そんなことを思いながら、私はラシェルを見た。ラシェルはこの場から離れましょうと言った。そして私はラシェルに抱っこされる形になりながら移動を開始する。


「父が居なくて私とラシェルが二人のときを狙ったか……嫌な奴だな」


「……? お嬢様、何か仰いましたか?」


「あっ、ううん、何でもないよ。ソフィ、ビックリしちゃったなーって言っただけ」


 頭で考えていただけのつもりが声に出ていたみたいだ。危ない。とりあえず誤魔化しておいた。



 荒れに荒れて、帰りのエスコートも有耶無耶になったまま聖誕祝祭(ファンティスタ)は終わりを告げた。エルドさんにお礼を言おうと探し回ると、騒ぎを聞き駆け付けてきたらしい騎士団の人とさっきの集団の後始末をしていた。邪魔しない方がいいかなと踵を返そうとした時、先にエルドさんに見つかってしまった。


「嫌なところを見せてしまって申し訳ございません」


「ううん、エルドさんもラシェルも、無事でよかった。あと、かっこよかった!」


「ラシェルがドレスを着るので、いざと言う時のために色々準備をしていましたが……使わないのが一番とはいえ、準備しておいて良かったです」


 はぁ、と安堵のため息をつく。やっぱりエルドさんは凄いなあ。咄嵯の対処が早いというか、判断力が素晴らしいというべきか。団長って、凄いんだな。

 それから私達は馬車に乗り込む。後夜祭は中止になった。高いヒールで足も疲れていたし、ちょうど良かったな、なんて思いながら揺られていく。

 途中、エルドさんに先程の出来事を聞いてみたけど、詳しくは教えてもらえず、ただ、アズィム家が関わっていることは間違いないだろうと言われただけだった。



 家に戻った頃には、外はもう暗くなっていた。部屋に戻ってくるなり、ベッドにダイブして大きくため息をついた。

 今日は本当にいろんなことがあった気がする。一時はどうなるかと思ったが、それよりもラシェルと私が仲良く一緒にいるところを大勢の前で見せられて良かった。これで少しでも、ラシェルに対する噂が減るといいけど。……まあでも、最後の襲撃で、パーになった気はするが。ラシェルには一応襲われたからということで、護衛だが念の為警備を強めてもらうことにした。

 しばらくすると、コンコンとノック音が聞こえた。返事をしてファムに扉を開けてもらうと、そこにはラシェルがいた。


「お嬢様、今日は、申し訳ございませんでした」


 ラシェルはそのまま頭を深く下げた。ラシェルのせいではないのだが、謝ることは無いとラシェルに言うと、ゆっくりと顔を上げたラシェルの目はまだ少し赤かった。

 そのままラシェルに椅子に座ってもらいお茶を入れることにする。私に入れさせられないと言われてしまったが丁重に断り、座らせる。

 今日のことについて話すと言われ、まず最初に、何故狙われたかという話になった。ラシェル曰く、アズィム子爵が過去にラシェル絡みで自分の息子がああいう目に遭ったから、恨みから今回の襲撃を起こさせたのではないかとの事だった。

 まだ犯人たちが誰に指示されたのか言ってないから、違う可能性も少しはあるが恐らくそうだろうとのこと。……まあ、私の予想とそこまで大きく外れていなかったが、アズィム子爵の恨みの度合いが半端ないな。元々ラシェルを護衛に付けたのもどうせ父親目当てだろうに。


「ラシェルもたいへんだね。今日はゆっくり休んでね」


「ありがとうございます」


 とりあえずラシェルの話を聞く限りだと、当分こういうことがあるだろうし、何か対策を考えないと。しばらく追い返すことができたら、相手も諦めるだろうし。私はその辺りの頭脳戦はあまり得意ではないのだけれど……。まあ、頑張ってみようかな。


「では、私は部屋に戻ります。おやすみなさい、お嬢様」


「うん。おやすみ」


 ラシェルが出て行ったのを見送って、ふうっと一息つく。……私もそろそろ寝よう。

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