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偽りの帝国騎士と白雪百合と白雪薔薇の巫女 ―リューティエスランカ帝国建国物語秘話―  作者: 陵 棗
第二章 グランツフェルト辺境伯家の事情(ヒルデブラント編/割り込み追加中)
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第  9話 グランツフェルト辺境伯家と皇子妃選考の絵姿釣書



 前回も気になる部分があり改稿しましたが、修正しきれていない部分がありました。今回、改めて気になる言葉と言い回しなどを見直し、改稿しました。

 この改稿による大きな変更はございません。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 改稿した第8話の後書きで予告していた新規追加分の第9話ができましたので割り込み投稿します。


 サブタイトルを『グランツフェルト辺境伯と取り下げた絵姿釣書』から『グランツフェルト辺境伯家と皇子妃選考の絵姿釣書』に変更しました。




 


 グランツフェルト辺境伯は娘のヴァレンティーネと婚約者のノルデンブルク伯爵の二人が庭園で見かけ、馬車を止める。

 辺境伯は娘ヴァレンティーネに伯爵を引き留めるよう念を押しつつ、急いで馬車を帝宮に向かわせる。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 辺境伯は正門を通り、宮内省を経て宮殿に参内した。

 辺境伯は侍従(カマーヘル)を通し、侍従長(オーバーカマーヘル)に面会を求める。


 侍従長は急ぎ面会を求めて来た人物を見て、言葉をかける。


「グランツフェルト辺境伯閣下。本日は休日ではありませんでしたか?」

「侍従長。確かに休日ではありましたが、休んではおられない用件が発生したため参内いたしました」


 侍従長は辺境伯が軽く咳払いをし、告げる。


「そうでしたか。面会理由を聞きましょう」


 辺境伯は姿勢を整え、侍従長を見る。


「当家から第一皇子フリードリヒ殿下へお送りしました絵姿釣書の件にございます」

「貴家からの絵姿釣書ですね。確かに正規の手続きに則り、届いておりましたよ」


 辺境伯は言い(よど)み、続けた。


「いえ、その……。当家からの絵姿釣書ですが、一度取り下げることは可能でしょうか?」


 侍従長は辺境伯に確認する。


「絵姿釣書を取り下げる?」

「はい。当家の事情で取り下げたく存じます」


 侍従長は辺境伯に問う。


「理由は?」

「本来送るはずだった四番目の娘、ミヒャエーラ・シャルロッテの絵姿釣書と婚約者のいる一番目の娘のものを送ってしまい、こちらを取り下げたく存じます」

「そうか。やはり取り下げることにしましたか」


 侍従長は辺境伯が来た理由に納得していた。


「はい。娘が婚約者のために新たに描き起こした絵姿ですから、娘の婚約者に渡したく引き取りに参りました」


 辺境伯は侍従長の言葉に気になる言葉を見つけ、侍従長に目を向ける。


「…………やはり?」


 侍従長はおもむろに告げていく。


「正規な手続きに則り辺境伯家から持ち込まれた絵姿釣書(もの)でしたが、婚約者のいる辺境伯令嬢のもの。第一皇子のフリードリヒ殿下だけではなく、陛下も手違いで届いたのだろうとおっしゃっていましたよ」


 侍従長は陛下と殿下のお言葉を辺境伯に伝える。


「それでは……」

「殿下は辺境伯令嬢を皇子妃候補者として受け付けることはないと明言しております。陛下もそのことは認め、絵姿釣書はそのまま辺境伯家に差し戻すことになっております」


 辺境伯は安堵する。


「ありがたく存じます。つきまして皇子妃候補者には別の者を推挙したく存じます」


 辺境伯は侍従長に感謝を述べ、言葉を続けようとした。


「グランツフェルト辺境伯」


 侍従長は辺境伯の話を(さえぎ)る。


「第一皇子の皇子妃についてだが、今はその話を続けないほうが良い」

「侍従長殿? 噂では受け付けが始まったと聞きましたが、違いましたでしょうか?」


 辺境伯は侍従長を見上げた。

 侍従長は軽く咳払いをし、話を続ける。


「フリードリヒ殿下の皇子妃については、陛下の通達により絵姿釣書はいっさい受け付けしないことになっている」

「そうでしたか……」


 侍従長は続けていく。


「ごく一部の先走った貴族たちが宮務官を通し、()姿()()()を持ち込み続けているだけだ。辺境伯がその真似する必要はない」

「…………畏まりました」


 辺境伯は考え込む。

 侍従長は辺境伯に忠告する。


「第一皇子フリードリヒ殿下の皇子妃候補者に令嬢を推挙したければ、陛下の通達が解除されるまで待つがいい。くれぐれも早まった真似はするでないぞ」

「侍従長、当家は通達の解除を待ちます」


 辺境伯は侍従長の言葉を受け入れ、陛下の通達が解除されることを待つことにした。


「侍従長殿。娘の絵姿釣書は持って帰ることはできますでしょうか?」

「今すぐ必要か?」

「はい。娘のためにも持ち帰りたく。そのため、婚約者の伯爵を引き留めております」


 侍従長は辺境伯が急ぎ参内した本当の理由に気づく。


「返却の手続き済みだ。持ち帰ることは問題ない」


 侍従長は振鈴用小鐘を鳴らし、宮内官を呼ぶ。しばらくして宮内官が絵姿釣書を持参する。


「侍従長殿。ご要望のもの、グランツフェルト辺境伯家から届いた絵姿釣書を――、と連絡がございましたのでお持ちしましたが……」

「そこに置くように」

「畏まりました」


 宮内官は指示された机に絵姿釣書を置く。

 用事を済ませた宮内官は退出していった。


 侍従長は箱に入った絵姿釣書を取り出す。


「二通あるな」

「はい。当家から二通、提出しました」


 辺境伯は話を切り出す。


「侍従長殿。絵姿釣書を取り下げる前提でお話をお聞き入れください」


 侍従長は辺境伯の言葉を聞き入れた。


「申してみよ」


 辺境伯は絵姿釣書について考えを述べる。


「フリードリヒ殿下の皇子妃にと考えておりましたのは、婚約者のいない娘二人でした。当家からの絵姿釣書は陛下の通達が出される前に正規の手続きを通し、皇子妃の申し入れを行ったものです」

「確かに時期的にそうだな」

「陛下の通達を受け、もう一人の娘の絵姿釣書もいったん取り下げたく申し上げます」


 侍従長は驚き、辺境伯に確認する。


「そちらも取り下げる。持って帰りたいというのか?」

「はい。陛下の通達が出されていることを考えると取り下げた方が良いと判断せざるを得ません」


 辺境伯は続けた。


「陛下の通達の重要性を鑑みると当家の絵姿釣書がこちらに残っていては、後々問題になるのではないかと存じます」

「……うむ。確かにそうだな」


 侍従長は辺境伯の申し出を受け入れ、二通の絵姿釣書を返却することにした。


「陛下には辺境伯の申し出を奏上しておく」

「よろしくお願いします」


 辺境伯は取り下げた絵姿釣書を受け取る。絵姿釣書を持ち、帰途につく。





 次の第10話はサブタイトルを『グランツフェルト辺境伯と謁見の間』に変更し、投稿済みです。


 下記の予告は初期投稿時のものです。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 次の第10話は新規で追加予定の

『グランツフェルト辺境伯令嬢エルネスティーネと婚約者』

(婚約者を訪ねて辺境伯家に)


となります。


 話数とサブタイトルはもしかしたら変更になるかもしれません。


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