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偽りの帝国騎士と白雪百合と白雪薔薇の巫女 ―リューティエスランカ帝国建国物語秘話―  作者: 陵 棗
第  章 フリードリヒと消えた白雪百合の行方(フリードリヒ編)

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第   話 神殿奥院の禊水と蜂蜜酒《ミート》



 前話『グランツフェルト辺境伯令嬢の元婚約者とヒルデブラントの隠し子疑惑』の後書きで予告の『神殿奥院の禊水と蜂蜜酒(ミート)』ができましたので新規で投稿します。



 例によってヒルデブラント編で書かれていない部分のネタバレ要素、というか……ほぼネタバレ。


 こちらの詳細は別途、ヒルデブラント編にて書く予定です。


 推敲はしましたが、書ききれていない部分があるかもしれないので改稿する可能性があります。

 

 


 神殿奥院。


 ヒルデブラントが婚約者の一人グランツフェルト辺境伯令嬢リヒャルダ・エルネスティーネを連れ、神殿奥院の敷地に入っていく。


 奥院巫女がヒルデブラントと辺境伯令嬢の二人に気づき、案内をしていく。

 奥院禊場にて改めて禊を受け、奥院に入る。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 巫女がフリードリヒとローミィ、モルゲンネーベル辺境伯令嬢の待つ応接の間にヒルデブラントとグランツフェルト辺境伯令嬢の二人を案内した。


「ブラウフェルト辺境伯閣下。フリードリヒ殿下、モルゲンネーベル辺境伯令嬢はこちらです」


 巫女は二人を部屋に通す。

 ヒルデブラントは部屋に入る。モルゲンネーベル辺境伯令嬢を確認した。フリードリヒに声をかける。


「フリードリヒ殿下」

「やあ、ヒルデブラント。来るのを待っていたよ」

「殿下、妹君が同行しているとのことですが……」


 フリードリヒは目を反らせつつ、言葉に詰まる。


「あ、いや……違う。うーん……。ヒルデブラント。説明が面倒で私の妹で通しているが、実は庭園で会った園丁のお嬢さんでローミィだよ」


 フリードリヒは横にいたローミィの後ろに立つ。

 ヒルデブラントはフリードリヒのそばにいたローミィを目を向ける。


「……殿下。園丁のお嬢さんですか」

「あぁ。北離宮にある庭園の散策中にローミィから兄に間違われてね。お花畑が見たいと懇願され、散策しながらこちらの奥院まで来ることになった」


 フリードリヒは今までの経緯を簡単に説明していく。

 ローミィは背の高いヒルデブラントを見上げ、フリードリヒの後ろに隠れている。少しだけ顔を覗かせ、背の高いヒルデブラントを伺う。


「殿下。確認いたしますが、そちらのお嬢様をお連れになること、保護者の許可は得ておりますか?」

「勿論、許可は得ているよ。今日は北離宮の庭園で手入れをしていたから、おそらくは北離宮に近い園丁詰所に戻っているのではないかな」

「お嬢様の所在が不明では心配でしょうから、神殿奥院に滞在していると伝言を頼むことにしましょう」


 フリードリヒは思い出したようにヒルデブラントに言葉をかける。


「あ、そうだ。奥院に用事があるグランツフェルト辺境伯令嬢に会ったので一緒に連れてきたよ」

「殿下、ありがとう存じます」


 ヒルデブラントもフリードリヒの後ろにいたモルゲンネーベル辺境伯令嬢に歩み寄っていく。


モルゲンネーベルフロイライン・マルクグレーフィン辺境伯令嬢(モルゲンネーベル)。お声をかけること遅くなりましたこと、お許しください」

「いいえ、ヒルデブラント様」


 モルゲンネーベル辺境伯令嬢はローミィの姿を見つつ、ヒルデブラントに告げる。


「私も会うことのない姪に会うことができましたので幸いです」


「姪?」

「えぇ、父に妹君がいらっしゃるのはご存知ですか?」

「えぇ、存じ上げております。社交界からは退いておられるようですが」

「妹君のお子様がローミィ様」


 ヒルデブラントはモルゲンネーベル辺境伯令嬢とローミィを見比べる。


「確かに似ているな……。私の隠し子疑惑はそういった事情も含まれていたのか」

「隠し子……ですか?」


 ヒルデブラントはしばらく沈黙し、言葉を続ける。


「モルゲンネーベル辺境伯令嬢、グランツフェルト辺境伯令嬢。私以外の第三者から私に隠し子が存在する噂を聞くよりも二人には真相を話して置きましょう」

「は、はい」


 ヒルデブラントは事実だけを述べていく。


「いくつかの要因が重なって起きているもので、あくまでも事実ではないですよ」

「分かっておりますわ」

「ヒルデブラント様は金鷲騎士団ですものね」

「そうです」


 ヒルデブラントはモルゲンネーベル辺境伯令嬢とグランツフェルト辺境伯令嬢の二人に告げる。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 巫女は会話が途切れたことを見計らい、声をかける。


「皆さま、お部屋の準備が整いましたのでご案内いたします」


 ヒルデブラントはローミィに声をかけ、抱き上げる。


 巫女の案内で奥院にある控えの間に移動していく。


「フリードリヒ殿下、ブラウフェルト辺境伯閣下。モルゲンネーベル辺境伯令嬢、グランツフェルト辺境伯令嬢、ミーネ様。まずはこちらの禊水をどうぞ」


 巫女はお盆に六人分の禊水を差し出した。

 ヒルデブラントはまずフリードリヒに禊水を渡す。

 フリードリヒはヒルデブラントから受け取る。

 ヒルデブラントはお盆から二人分の禊水を取り、辺境伯令嬢に手渡した。

 辺境伯令嬢も受け取っていく。

 目線を下げ、ローミィに渡す。

 ローミィは差し出されたそれに目を向け、顔を傾げる。


「ローミィみょ、いいにょ~?」

「どうぞ」

「あい」


 ローミィはヒルデブラントが持っていた筒を受け取る。

 ヒルデブラントは残っていた筒を取り、飲み干した。

 フリードリヒも続く。

 辺境伯令嬢も遅れていただく。

 ローミィの周りで精霊たちが禊水に集まっていく。

 巫女が浅い皿に禊水を入れて戻って来るとローミィから少し離れた位置に皿を置く。

 精霊たちはそちらに移動していった。

 皿に集まった精霊たちは禊水を霧状に変え、全身で浴びている。


 フリードリヒは精霊たちの禊水浴びを眺めている。辺境伯令嬢も精霊たちの動向が気になり、目を向けていく。




 しばらくすると別の神官がやってくる。


「ブラウフェルト辺境伯閣下。閣下とそちらのお嬢様方には蜂蜜酒(ミート)にございます」

「ありがとう」


 巫女は蜂蜜酒の入った器をヒルデブラント、モルゲンネーベル辺境伯令嬢、グランツフェルト辺境伯令嬢の三人に渡す。

 次に巫女はお盆に二つの器を載せ戻ってきた。


「フリードリヒ殿下とローミィ様のお二人は蜂蜜湯。神殿で採れたばかりの蜂蜜をお湯で割ったものです」


 フリードリヒは受け取る。

 ローミィも受け取り、覗き込む。顔を上げ、聞く。


「ローミィちゃ、……はちみちゅしゅ(ミート)〜?」


 ローミィは顔を傾げる。

 巫女はローミィに向け、応える。


「いいえ、蜂蜜酒(ミート)はお酒です」

「おしゃけ〜?」

「はい。フリードリヒ殿下とローミィ様のものはお酒の入っていない蜂蜜湯です」

「はちみちゅゆ〜。ありあと」


 ローミィは小さな手に筒を持ち、口をつける。


「おいち」


 ローミィは残りもゆっくりと飲み干した。

 禊水浴びを満喫した精霊たちはふわふわと浮き出す。

 精霊たちは蜂蜜の香りに気づく。小皿に満たされた金色の湖に誘われていった。

 蜂蜜酒や蜂蜜水に集まる精霊たちは一口づつ味見をしていく。


『おいちはちみちゅ』

『はちみちゅ』

『ちゃくしゃん』

『おしゃけ』


 精霊たちはくるくると踊りながらふわっと浮く。淡い光を伴い、姿を消す。

 精霊たちの小皿は空になっていた。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 しばらくして、再び精霊たちが戻って来る。淡い光をまとい、姿を見せた。その手にはたくさんの花を抱えている。


『はちみちゅ』

『はちみちゅ』


 精霊たちが集めてきた花には周期咲きで知られる品種も見える。


『おはにゃ〜あちゅめちゃ』

『あちゅめちゃ〜』


 精霊たちは往復してたくさんの花を持ってきた。


『うつわ』

『いっぱいはちみちゅ』

『はちみちゅ。おいち』


 精霊たちは持ってきた花の蜂蜜を入れるものを要求している。


 ヒルデブラントは巫女と神官に空になっている酒壺を取りに向かわせた。

 しばらくすると壺を抱えて戻って来る。

 神官は食卓机に壺を置く。


 精霊たちが壺の周りに集まってきた。一柱の精霊が壺の中に入り、確認する。

 精霊たちは淡い光を発し、持ってきた花を壺の上に集める。宙に浮いた花は光を保ったままだ。

 精霊たちが歌い踊りだす。


『はちみちゅ』

『おいちはちみちゅ』

『めがみしゃま。ささげゆ、おいちはちみちゅ』

『ほこら』

『はちみちゅけんじょう』


 壺に注がれた蜂蜜は黄金色をしている。

 精霊たちは満面の笑みを浮かべ、満足していた。


『はちみちゅ。いっぱいにゃりましちゃ』


 ローミィは壺を覗き込む。


『おはにゃしゃん、なみなみ〜』

『はちみちゅどじょ』


 ローミィは思い出す。


『おちゅかれしゃまでしゅ。おはにゃしゃん』

『はちみちゅちゅどじょ』


 壺から立ち上がる芳しい香りは食欲を刺激していく。

 巫女長は精霊たちに声をかける。


『精霊様、こちらの蜂蜜酒は皇帝陛下に献上しても宜しいでしょうか?』

『こうていへいか〜?』


 精霊たちはきょとんとして居る。


『即位に伴う大嘗祭や新年の新嘗祭を行っているお方です』


 巫女は精霊たちに告げる。


『だいじょうしゃい、にゃめしゃい』


 精霊たちは集まり、相談している。決まると並ぶ。


『おはにゃいっぱいくだしゃい』

『こちゅ、はちみちゅちゅ。こうかん』

『おいちおみじゅ』

『めがみしゃま、はちみちゅ』


 それぞれの精霊たちが要望を告げていく。


『献上する前にこちらで確認しても宜しいでしょうか?』

『あい』


 巫女長は壺から蜂蜜を掬い、小皿に取る。匙を使い、味をみた。


『花の香りは複雑な芳醇さが醸し出していて雑味もなく、とても濃厚な味わいです』


 ヒルデブラントもお裾分けをいただく。


『薫るほど凝縮され、美味しいな』


 ヒルデブラントは蜂蜜の入った小皿をフリードリヒとローミィ、二人の辺境伯令嬢にも渡す。

 辺境伯令嬢もいただく。


 精霊たちは壺に集まり、声を出す。


『はちみちゅ、おいちおみじゅ。いれる』


 巫女は蜂蜜の入った壺に採取したばかりの禊水を注ぐ。

 精霊たちは壺の周りをくるくると回っていく。


『まぜまぜ』

『まぜまぜ〜』


 精霊たちに誘われるようにローミィも動き出す。

 精霊たちの力により、時間をかけずに蜂蜜酒が完成した。


 ヒルデブラントは精霊と戯れるローミィの姿で思い出す。


「咲く時期の異なる周期咲き品種の開花時期が揃う奇跡と数年前に園丁が話していたことがあった。時期限定の小さな来訪者はもしかしたら……」



「期間限定の来訪者?」

「精霊たちの戯れと噂されていた」










 次話は『神殿奥院と女神の祠』を予定しております。

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