第 話 園丁リヒャルトが困惑する娘、ローミィの行方
ヒルデブラント編として第五章のタイトルを『ヒルデブラントの婚約者』から内容に併せ、『モルゲンネーベル辺境伯家と辺境伯家の事情』に章のタイトルを変更しました。
混在している第五章をモルゲンネーベル辺境伯家の事情でまとめなおすため、前話の後書きで予告していたモルゲンネーベル辺境伯家絡みの次話『モルゲンネーベル辺境伯と二人の辺境伯夫人』を新たに割り込み投稿しました。
内容に併せてサブタイトルを『モルゲンネーベル辺境伯と二人の辺境伯夫人』から『モルゲンネーベル辺境伯と辺境伯第一夫人』に変更します。
前書きに割り込み追加したことを書き加えたのみで本文に変更はありません。
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✧\(>o<)ノ✧
前回(2024/05/18 )、見直して改稿したはずが、中途半端な文章を見つけてしまった(╥﹏╥)
言い回しなど気になる部分も見つけたので、そこを修正しつつ、本文を改稿しました。
この改稿による大きな変更はございません。
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前話の『フリードリヒと神殿の慰霊塔』の後書きでの後書きで予告の次話
『園丁リヒャルトが困惑する娘、ローミィの行方』ができましたので新規で投稿します。
リヒャルトから娘の行方を知りたいと突っ込まれました。(催促されました)
時系列的にヒルデブラント編のネタバレしている気がする(╥﹏╥)。
帝宮、謁見の間に続く控えの間。
その一つに宮廷園丁であるリヒャルトが通されている。
宮内官から呼び出しがあるのを待っていたリヒャルトは長椅子に座る。
しばらくすると入ってきた廊下に面する扉ではなく、別の扉が開くのに気づく。
部屋の奥へと目を向け、立ち上がる。
入室してきたのは宮内官ではなく別の人物だった。
リヒャルトは男性のその姿に驚き、声を出す。
「へ、陛下?」
リヒャルトは陛下の来室に驚きつつ、部屋の奥へと目を向けた。
「すまない、リヒャルト。宮内官には話を通してある」
陛下の入って来た扉の奥には専用通路が設けられており、意図せず拝謁が叶うこともしばしばある。
人目につくことなく目的の部屋にたどり着くことも可能となり、隠し通路としての機能も併せ持つ。
リヒャルトは陛下の後に続き、通路を進む。
「リヒャルト。このまま進むぞ」
「陛下。私用区域に入るようですが、よろしいのでしょうか?」
「構わない。こちらのほうが都合が良い」
リヒャルトは素直に従った。陛下が進む方に向かう。
通路は公用区域を抜け、私用区域に入っていく。長い廊下には採光のため、等間隔に小窓が設けられている。
さらに進むと侍従長と侍従、護衛騎士らの部屋が並ぶ。
そこを通過すると小規模なの図書室や個人的に客を通すための応接の間などが見え、奥にある陛下の私室に続いている。
陛下は応接の間の前で止まる。扉を開き部屋に入った。リヒャルトも続いて応接の間に入る。
部屋のなかには先客がいた。
長椅子には神官長と巫女長の二人が待ち構えている。
リヒャルトは陛下、神官長、巫女長という三役の姿が揃っていることに恐縮し、跪く。
「陛下、神官長、巫女長。お三方のご尊顔を賜りし栄誉、恐悦至極に存じます」
陛下は畏まるリヒャルトに声をかけ、促す。
「宮廷園丁長。とりあえず、堅苦しい挨拶は抜きだ。まぁ、座りたまえ」
リヒャルトは下座にある長椅子に腰をかけた。
神官長は懐から二通の書状を取り出す。
「まずはそなたの心配ごとを解決しようではないか」
「ありがたき幸せに存じます」
しばらく沈黙が訪れる。
陛下はおもむろに言葉を出す。
「園丁長、いや……リヒャルト。そなたの娘は庭園で出会った男の子と一緒に神殿の庭園に行くと申しておったそうだな」
「左様にございます」
神官長が陛下に変わって答える。
「本日、神殿に男の子と女の子の二人で参られたのは四組です。そのうちの三組は神殿の禊場で簡易手順で行われた禊を受け、通過儀式を終えました。既に親元に戻っておりますよ」
「左様にございますか……。それでは私も娘が待つ詰所に戻らねばなりません」
リヒャルトは急ぎ立ち上がる。
神官長はリヒャルトを制止した。
「園丁長。慌てるでない」
「なぜ、言い切れるのです」
リヒャルトは立ったままだ。
神官長は話を続ける。
「神殿をあとにした者たちはそなたの娘ではない。話題に出した三組は貴族の身分を有した者の子たちだ。あちらの家から儀式を手短に終わらせてくれと要請があったので貴族であるにも関わらず、略式の禊を行う簡易禊場を使ったのだ」
リヒャルトは困惑した。
「それでは、当家の娘はどちらにいるのでしょうか?」
「そなたの娘はまだ神殿におる」
神官長は言い終え、沈黙する。しばらくの後、言葉を続けた。
「残っている一組がそなたの娘と男の子だ」
「本当ですか?」
「あぁ、そういうことで二人の所在ははっきりしている。安心するといい」
「あの……、神官長。本当に私の娘はまだ神殿にいるのでしょうか?」
神官長は小出しに情報を出していく。
「そちの娘は神殿に入る際にフリードリヒ殿下と一緒に正規な手順で禊を受けたのだ。そこで重要な神殿儀式である"皇子妃託宣花の儀"にも立ち会った」
リヒャルトは沈黙したまま、話を聞いている。
神官長はおもむろに言葉を続けていく。
「二人は儀式の後も神殿に留まり、殿下と一緒にいくつかの庭園を散策していたそうだ。その足で慰霊塔に向かったと聞く」
リヒャルトはおもむろに会話に入る。
「娘には慰霊塔や慰霊碑を見かけたら足を止め、祈りを捧げることや花を手向けることを教えていました」
「そうか……。それは例の件が関係しているのか」
「左様にございます」
しばらく沈黙が降りた。時間だけが過ぎていく。
リヒャルトは顔を上げ、静寂を破る。
「その……、娘は本当に神殿に留まっているのでしょうか?」
「あぁ。どうも…………そちの娘を留めているのは精霊たちの」
陛下は書状に目を通す。
「そちの娘は皇子妃託宣の儀に使われるはずだった花を儀式に戻させたことで意図せず、女神の加護を授かることになった」
「……どういうことでしょう?」
リヒャルトは陛下と神官長を見据える。
神官長はリヒャルトを見返す。
「神殿には奥院があるだろう」
「えぇ、奥院の手入れを頼まれることがあり、そちらに伺うことがございます」
「そこで限られた者のみが入れるという女神の祠でフリードリヒ殿下と一緒だ」
リヒャルトは会話の中で気になる単語があり、疑問を告げる。
「……あの……。つかぬことを伺いますが、娘はいつから第一皇子のフリードリヒ殿下とご一緒だったのでしょう?」
陛下はリヒャルトに答えていく。
「そなたと庭園で出会ったのは紛れもなく、朕の息子フリードリヒで間違いない。北離宮は過去には大公宮とも呼ばれていた建物で、帝室成員の住居としての側面がある離宮だ。フリードリヒは何気なく使っているようだが、実のところは休憩場所として気軽に使える場所ではないぞ」
「…………」
リヒャルトはそのことを失念していた。
「フリードリヒが皇子妃託宣花を持ったまま、そなたの娘を連れて女神を祀る祭壇に行っておる――」
リヒャルトは祭壇の場所を確認していく。
「表にある祭壇でしょうか?」
「いいや、奥院にある祭壇だ」
「……………奥院ですか」
「そうだ」
陛下とリヒャルトの二人はしばらく沈黙する。
陛下は神官長の目配せを受け、リヒャルトに声をかける。
「リヒャルト」
「…………陛下」
リヒャルトは顔を上げ、陛下に目を向けた。
陛下は言葉を続ける。
「息子にそういう意図があった訳ではないとは思うが、皇子妃の託宣花を持ったまま奥院にある女神の祭壇に行くという暴挙を許して欲しい」
リヒャルトは陛下の言葉で血の気が引くのを感じた。
「陛下。当家の娘はいったい何をしでかしたのでしょうか……」
陛下は巫女長に目配せを送る。
「リヒャルト。そなたの娘は別に失策や問題を起こした訳でもない」
リヒャルトは安堵した。
陛下は姿勢を正し、リヒャルトを見据える。
「リヒャルト」
「……何でしょう」
陛下の改まった言葉にリヒャルトは緊張していく。
「そちの娘だが、時機をみて神殿に出仕させるつもりはないか?」
陛下は本題に入る。
「陛下。出仕にございますか?」
「そうだ」
「娘を神殿に出仕させること。こちらに異存はございません」
「適切な時期を迎えた際に、神殿に出仕してもらおう。巫女長、頼む」
「そのように取り計らいます。神殿の奥院でよろしいでしょうか?」
巫女長は陛下の間で出仕の話が進んでいく。
「うむ。息子の皇子妃託宣花の件もあるから、巫女長の勧める奥院で良いだろう」
「畏まりました」
巫女長と陛下の間でリヒャルトの娘を出仕させる職場も決まっていく。
陛下はリヒャルトに目を向け、別の話を切り出す。
「すまんが、リヒャルト。もう一つある」
「何でしょうか?」
陛下は暫く沈黙し、続ける。
「皇子妃託宣花の儀式は、その名の通り皇子妃を選ぶための儀式だ。とりあえず、立太子される前の儀式で公表されているのは選ばれた花の数と枠のみだ」
「そう聞いております」
「…………ただ、選ばれるのはそれらだけではないのだ」
陛下はため息を吐き、悩む。おもむろに告げていく。
「今回の儀式でそちの娘が託宣花を救ったのは紛れもない事実だ。過去の儀式において、その者が皇子妃候補者に選ばれたこともある。託宣花はそういう面も併せ持つものだ」
「へ、陛下?」
リヒャルトは顔を上げ、驚く。陛下を見据える。
陛下もリヒャルトを見返す。しばらく、沈黙が続く。
陛下は神官長と巫女長に目配せを行い、リヒャルトに目を向けた。
「……そなたの娘を第一皇子フリードリヒの皇子妃候補者としてすぐに公表することはない」
リヒャルトは固唾を呑む。
陛下も思案を続け、言葉を紡ぐ。
「フリードリヒの皇子妃候補者を選ぶ際に託宣花に選ばれた一人として、その名を連ね可能性があることを心に留めておいて欲しい」
リヒャルトは幼い娘が第一皇子の皇子妃候補者に選ばれる未来があることを知り、その重責を担えるか熟考していた。
陛下と神官長、巫女長の三人も沈黙を守る。
リヒャルトはおもむろに立ち上がり、姿勢を正すと跪く。
「……陛下。この度はお披露目前の娘に皇子妃の候補という多大な栄誉を与えていただき、恐悦至極に存じます。当家におきましても皇子妃候補者に選ばれたことだけでも身に余るほどの名誉にございます」
リヒャルトはいったん言葉を止め、陛下を見上げる。
「――――私の娘は身位もなく、貴族名鑑に名を連ねるほどの由緒ある貴族ではありません。皇子妃候補者の件は慎んで拝辞したく存じます」
陛下はリヒャルトに目を向け、見据える。
「即答するか……」
リヒャルトは跪拝したまま、沈黙を続けた。
陛下はため息を吐く。
「分かった。そちの申し出はこのまま保留にしておこう」
「……陛下。何度申し込まれても皇子妃候補者の件、拝辞しとう存じます」
「リヒャルト。そちの言い分も分かるが、今回の件については問答無用で保留だ。そなたの言い分は分かるが、皇子の儀式で選ばれた花と同じ品種のものを神官長に持って来てもらった」
陛下は神官長に目配せする。
神官長は陛下の意図を知り、細い花瓶に生けられた二輪の花をリヒャルトに見せる。
「これを見ても拝辞するか――――」
「陛下。そちらの花はまさか…………」
リヒャルトが目にしたものはある二輪の花。一つは禁忌の名で知られるものだった。
「そなたに説明するまでもなかろうが、白雪薔薇と白雪百合だ。そちの娘が神殿の託宣花の間で捨て置かれたものを見つけ、フリードリヒに手渡した。困ったことに本物の託宣花はそちの娘が持っておる」
リヒャルトはどう答えて良いか分からず、困惑する。
「……託宣花を返上するよう娘を説得します。陛下」
「リヒャルト。とりあえず、そのままで良い」
「陛下?」
リヒャルトはしばし、沈黙する。
陛下はさらに続けていく。
「フリードリヒが皇子妃託宣花の儀式を受けたことはその場にいた数人の神官から、その事実が広まっているだろう」
リヒャルトは固唾を呑み、拒否権がないことを知る。
「皇子が受けた託宣花の儀式について帝室会議で報告することになるが、この白雪百合は出せぬ」
「そちらは心得ております」
「そこで白雪薔薇が二つだったことにしたいのだ。良いな」
「こちらとしても異存はございません」
神官長、巫女長、リヒャルトの三人は同じ言葉を出す。
リヒャルトは言い終えたあと、安堵する。
「陛下。その…………娘は……」
「あぁ、そなたの娘は明日も慰霊の塔で祈りを捧げて神殿の庭園を見たいと言っているそうだ。遠からず詳細は未定だが、そちの娘もいずれは他の者たちと一緒に神殿に出仕することになるだろう。今後のためにも要望は叶えてやると良い」
「畏まりました。………その娘の出仕は決定事項でしょうか?」
リヒャルトは確認のために訊く。
「あぁ。託宣花に選ばれたからには必ず出仕してもらう。巫女長」
陛下は巫女長に促す。
「陛下。奥院において見習い巫女待遇で迎えること、承りました。いずれはお披露目も視野に入れ、二輪の一つを保護し育てましょう」
「頼む」
リヒャルトは娘が第一皇子であるフリードリヒ殿下の皇子妃候補者としていつの間にか出仕の話が進んでいくことに困惑しつつ、静観している。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
しばらくして侍従長が応接の間にやって来た。
侍従長は陛下のそばに近づき、何やら耳打ちしていく。
「リヒャルト」
「なんでしょう?」
「お披露目の祝賀行事が終わるまでは帰宅せず、残るようにしてくれ」
リヒャルトは驚き、立ち上がる。
「陛下、私は早々に退出したく存じます」
「そなたは娘を置いていくのか?」
「娘にございますか?」
「そうだ。先ほどまで失念していたが、そなたの娘はモルゲンネーベル辺境伯家に連なる血筋であったな」
「左様にございますが、妻は辺境伯家の籍からはすでに抜けております」
「そうだったか?」
「妻に迎えた際に私の籍に入れましたので…………」
「そうだったな」
陛下だけではなくリヒャルトも黙す。
しばらく静かに時間が過ぎていく。
陛下はリヒャルトに目を向け、おもむろに話を続ける。
「リヒャルト。そなたの血筋もある意味、問題なのだ」
「……私の血筋ですか?」
「そうだ。本来ならリーリエンヴァルト王国の直系王族であり、リーリエンフェルト大公と呼ばれる立場だっただろう」
リヒャルトは跪き、言葉を紡ぐ。
「陛下。確かにリーリエンフェルト大公位は、リーリエンフェルト王国の王位継承権第一位である王太子の称号であり、王太子が持つ爵位でした。しかし、今はそのリーリエンフェルト王国は昔の面影もなく、現在は歴史にその名を残すだけとなっております」
リヒャルトは事実を告げる。
「陛下。我が祖国は、私が生まれる前にラゲストゥーエ帝国に併合されております。それから数百年も経っており、私は祖国を再興したいとは思っておりません」
「そうか?」
「はい。それに…………」
リヒャルトは過去の出来事を思い出し、続ける。
「ノイグラウシェレ方伯閣下がそれを許すはずありません」
「………………まぁ、そうだな」
陛下は言葉少なく、返す。
「それでもそなたはリーリエンフェルト王国直系男子だ。今は廃国となっておるが、帝国南部にあるノイグラウシェレ方伯領の東に位置していた小国リーリエンフェルト王国を治めていた国王の直系子孫であり、しかも男系血族が残っていることを知る者は少ない」
陛下は忘れていたことを思い出し、話題を進める。
「すまんが、話は変わる。少々困った問題があってな」
「はい?」
リヒャルトは声に出る。
「そなたの娘が今回のお披露目するモルゲンネーベル辺境伯令嬢に懐いて離れないのだ」
リヒャルトは困惑しつつ、立ち上がる。
「申し訳ありません。至急、迎えにいきます」
「すまんが、そなたが迎えに行くのは勧めない。間違いなくお披露目を迎えた辺境伯令嬢にあらぬ疑いがかかる」
「……はい?」
リヒャルトは思い止まり、陛下を見上げた。
陛下はある事実をリヒャルトに告げる。
「そなたの娘は偶然出会った辺境伯令嬢を見て母君だと思い込んだらしい。駆け寄って抱きついたそうだ」
リヒャルトは混迷を深め、言葉を発す。
「あの……、それでは私はどのように対応するのが良いのでしょうか?」
陛下はリヒャルトを諭していく。
「すまぬが、そなたの娘。今回は辺境伯令嬢の妹として辺境伯家に預けることにした。令嬢の父である辺境伯にはそのことは内々に話を通している」
陛下はさらに付け加えた。
「それとお披露目の祝賀行事を見学させることは女神の意思でもあるようだ。困ったことにな…………」
陛下はため息を吐く。
「辺境伯家に面倒をおかけして申し訳ありません」
「モルゲンネーベル辺境伯家は奥方の実家でもあり、そなたたちの後ろ楯でもある。それとブラウシュタイン公爵家に喧嘩を吹っ掛けるバカはおらぬだろう」
「ブラウシュタイン公爵家…………?」
陛下はリヒャルトを見据える。
「公爵家ですか…………?」
「その公爵家だ。そちらでも少々問題があってだな。辺境伯令嬢に抱きついた幼い子をそなたの娘だと申し付けたところ、辺境伯令嬢の婚約者側の問題も解消した。そちらの誤解も溶けたようだ」
「申し訳ありません」
リヒャルトは恐縮しつつ、成り行きを見守る。
「フリードリヒがそなたの娘を自分の妹だと通して神殿に出入りしていたようで、こちらも少々問題となっておる」
「どのようなことでしょう?」
「困ったことに隠し子の疑惑だよ。とりあえず侍従長に言付けを頼み、そちらも全面的に否定しておいたがね」
リヒャルトは陛下に返す言葉が見つからなかった。
「…………陛下。誠に申し訳ありません」
「いや、気にするでない。フリードリヒも説明が面倒だったのだろう」
陛下はため息を吐く。
「すまんが、そなたの娘。こちら側の問題を避けるためにもモルゲンネーベル辺境伯に保護してもらっている。お披露目の祝賀行事が終わるまで、もう少しだけ残ってくれ」
「畏まりました。祝賀行事の間は極力表に出ず、人の少ない場所にある園丁詰め所に控えております」
「…………すまないな」
リヒャルトは跪拝する。
侍従長がリヒャルトを連れ、例の隠し通路に向かう。
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陛下と神官長、巫女長は宮廷園丁長であるリヒャルトを見送った。
奥の通路につながる扉が閉まり、応接の間には三人だけとなる。
神官長が安堵しつつ、言葉を紡ぐ。
「陛下。ようやく引き止めることができましたね」
「あぁ。きっかけはどうであれ、お披露目の祝賀行事を終えるまで引き止めることができたな」
「そうですね。」
三人はそれぞれに考え込む。しばらく沈黙が続く。
次話は現在作成中で、下記を予定しています。
▼第 話
『ローミィと二人の辺境伯令嬢』
(作成中/ローミィが向かった先にいたのは?)
ただ、時系列的に割り込みしているヒルデブラント編の盛大なネタバレになっている気もしない……ような………:゜(;´∩`;)゜:。
▼第 話
『ヒルデブラントの隠し子疑惑』
(新規作成/別名、帝国騎士とエーヴァルトの勅令)
▼第 話
『フリードリヒと神殿奥院』
(新規作成/呼び出されたフリードリヒ)
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空欄の話数に関しては割り込み追加している部分が確定しだい、あとで入れる予定です。
書いていくうちに話数が増え長くなっていく怪が出没しており、思った以上に増えています(・・;)。




