第 話 花の精霊と幼い女の子
本文の言い回しや表現で少々気になる部分を見つけましたので、読み直して本文に追加修正を加えて改稿しました。
今回の改稿で大きな変更はございませんが、割り込みしているヒルデブラントと婚約者という部分では、若干のネタばれをしているような……気がする……m(_ _)m。
この話の前に割り込みしているヒルデブラントと婚約者のお話が思ったよりも長くなりそうです(^-^;。
どうしようo(T△T=T△T)o。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
すみませんm(_ _)m。
前の話とこの話は、まだつながっておりません。書いていくうちに話数が増える怪……が発生しております。
繋げる際につながるように改稿しする予定です。
まだ前に話を追加している関係でつながっておりませんが、文章を若干見直し改稿を加えました。
次話予定も後書きに追加しましたm(_ _)m。
え?
肝心の次話は……(ー_ー;)
夜も更け、ふくろうの鳴き声も聞こえ始める。満ちた月に静寂が訪れていく。
たくさんの花が咲き揃う小さな庭園を月明かりが照らしていた。こじんまりとした規模の庭園ではあるが、幾種の花が咲き誇る。
どこからともなく現れた淡い光がふわふわと漂う。くるくると舞うように動く小さな光は一瞬強く輝き、二つに分かれた。微かに声がする。
『どこにいるの?』
淡い光のなかには小さな姿が二柱、見えていた。かわいらしい容姿の精霊は白い花のような衣をまとっている。
『本当にいるのかな……』
『私たちの主、……ここにはいないのかも』
『どこにおられるのかな……』
精霊たちは淡い光をまとったまま、ある花に吸い込まれていく。存在感を示す大輪の花に隠れるように、ひっそりと咲く白い小さな花――。
小さな淡い光の主は誰かを探しているように姿を見せ、しばらくすると消えていく。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
東に連なる山々にほの暗い光が見えはじめ、しだいに染まり出す。しばらくして太陽が姿を見せ、空が明るくなる。時間とともに昇っていく。
精霊たちが闊歩していた庭園から少し離れた場所に園丁詰所が建っていた。
仕事に使う道具と荷車を置く倉庫に併設された詰所は、園丁の住居も兼ねている。そのため、幾つかの部屋があった。
使い込まれた作業着を身につけた男性が部屋の奥から出てきた。壁に掛けてある麦わら帽子と手拭いを取り、仕事に向かう準備をしている。
しばらくすると再び、部屋の扉が開く。
扉から少しだけ顔を覗かせる幼く小さな女の子がいた。
目を輝かせて、男性の方をじっと見つめる。
「とうしゃま、とうしゃま!」
「なんだい? ローミィ」
とうしゃまと声をかけられた男性がローミィの声のする方を向く。男性は女の子のそばまで歩み寄る。腰を落とし、目線を合わせた。
「きょ、おにわいく?」
「ローミィは留守番だよ」
男性は女の子の頭を撫でる。
「るしゅばん?」
「留守番」
「……いかにゃい?」
「そう。留守番」
ローミィと呼ばれた女の子はもの悲しい表情と悲壮感を漂わせ、がっかりと肩を落とす。
男性は優しく声をかける。
「ローミィ。父様は遊びにいくのではなく、仕事に行くんだよ」
「とうしゃま。ローミィ、じゃましにゃい!」
ローミィは満面の微笑みでこちらを見上げてくる。
「ローミィ。おはにゃ、みちゃい」
男性は頭を撫でながら、諭す。
「ローミィ。今日、父様がお仕事をする場所は、ここの近くではなく別の場所だよ」
「そにゃの?」
「そう。ここの詰所から少し遠い北離宮にある小庭園だよ。神殿が近くにあって庭園が幾つかあるよ」
「そにゃの~?」
ローミィは傾げた。
男性は声をかけ続ける。
「昨日までの庭園と違って、お花を自由に見ることはできないよ。高位身分の方が庭園の散策をご希望になる場合には先触れがあるから、その場合はじっと待つことができるかい」
男性はゆっくりとローミィに告げる。
ローミィは笑顔を見せていく。声を挙げた。
「ローミィ、まちゅ!」
「大丈夫かい?」
ローミィは肩に掛けて持っていた小さな鞄を前に出す。
「あい! もちゅもちゅ」
男性は再び、ローミィの頭を撫でた。
ローミィは男性を見上げ、微笑む。
「では、行こうか」
「いきゅ!」
男性はローミィを抱え上げ、玄関を出る。ローミィを荷車に乗せたあと、仕事道具を積み込む。詰所の扉に鍵を閉めた。
御者席に座ると手綱を持ち、荷車を出発させた。車輪が動き、ゆっくりと走り出す。
男性は荷車を北に向け、しばらく道なりに進めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
手前に見えてきたのは帝都に幾つかある離宮の一つで、北離宮とも呼ばれている。
由緒ある建物は重厚な造りだが、質素な外観を持つ。
帝室大公としてその名を知られる爵位のロイヒテンシュタイン大公。
北離宮は大公が帝都に滞在する際に住居として使われていた。
数代前の大公が別の離宮に居を構えたため、現在は使われていない。
湧水が流れ込む泉にこじんまりとした庭園。
女神に捧げられた泉庭には、花の女神が好んでいたとされる花が多く咲き揃う。
遠くに神殿の白い建物が小さく見え始める。
神殿が近づくにつれ、厳かな空間である神域を隠しきれない。
北離宮は神殿に近い位置に存在するため、神殿の厳かさな雰囲気を損なわないために華美な趣向は取り除かれた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
男性は馬を操り、北離宮にある庭園近くの園丁詰所まで荷車でやって来る。
おもむろに詰所の入口に立ち、扉の鍵を開けた。部屋に入ると締め切られていた窓を解放していく。
足りない園芸道具を荷車に積み込み、手入れを行う庭園に移動する。
男性は散策路を歩く人の邪魔にならないよう端に荷車を止めた。御者席から降りると車輪止めを噛ませる。
「着いたよ。ローミィ」
後ろの席から反応がなかった。男性は振り向き、籠まで歩みより覗く。
ローミィは荷車の揺れに誘われたらしく、睡魔の友を迎えていた。いっこうに起きる気配はない。小さな子供が落ちないように作られた特注の荷台の乗り心地は良いようだ。
(「このまま眠らせておこうか……。お昼寝の時間は大事だ」)
男性はローミィが眠っているのを確認する。荷車の稼働する扉を静かに取り外す。音を立てないように気を付けながら仕事道具を下ろした。
男性は娘の上に手をかざす。
男性の前に淡い光が集まると白い衣装を身につけた小さな精霊が四柱、姿を現す。
『ご主人様、お呼びでしょうか?』
『いつものように御守護ですね』
容姿の異なる精霊が男性の前に揃う。
男性は精霊たちにそれぞれ声をかけた。
『すまないけど、今日も娘のことを頼んだよ』
『畏まりました』
精霊たちは持ち場で漂っている。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
しばらくすると花壇にはどこからともなく淡い光が一つ、また一つと集まり出す。新たな光の気配を感じ、守護精霊たちもそれに同調していく。
『そわそわ』
『そわそわ』
『おひろめおひろめ』
『ご主人様。今年はおひろめ、ある?』
男性も現れた精霊たちの気配と独特の雰囲気に気づく。
『あぁ、分かるかい?』
『同胞、たくさん』
『そわそわ、そわそわ』
『たくさん、キラキラ』
淡い光は更に増えていた。増え続ける精霊たち。
男性は仕事の手を止め、精霊に声をかける。
『今年は五年ぶりにお披露目の儀式が開催される予定だよ』
『みんな、わくわく』
精霊たちは活発に動く。
男性は精霊たちだけではないことを知っている。
『花の精霊たちだけでなく、我々園丁だけではなく宮内官も大忙しだよ。今年はよりいっそうの仕事を求められている』
男性は立ち上がると目の前にある庭園を見渡す。
精霊の一柱がふわふわと浮かび、男性の目の前で止まる。
『くるくるは?』
『もちろん、舞踏会も行われるよ』
精霊たちはそれぞれに回っている。
『ご、ご主人様。私たちの小さなお嬢様は出ない?』
下にいた三柱の精霊も最初にいた精霊の隣に並び、くるくると舞う。
『娘はまだ出ないよ』
『ほんとにでない?』
『出ない』
精霊たちは男性に詰め寄る。
『くるくるもでない』
『舞踏会も出られない』
『ほんとにでないの?』
男性は精霊たちの質問に暫く、沈黙した。荷車まで歩み寄るとすやすやと眠る娘を見つめている。
精霊たちも男性のあとに続く。
『…………すまないね。娘はまだこの通り、幼い。お披露目の基準年齢に達していない訳だよ』
男性は娘の頭を撫でていた。
精霊たちも覗き込む。
『おひろめ、ちいさい、ダメ?』
『あぁ、ダメ』
『本当にダメ?』
『ダメだよ』
精霊たちはそれぞれに疑問をぶつける。
男性は少し離れた場所に移動すると話を続けた。
『お披露目の儀式に出席するためには、貴族名鑑に名を連ねている必要がある』
『そうなの?』
『末席にでも名を連ねられるような身分が私にあれば、招待される可能性はあるけどね』
『おひろめできないの?』
『そういうこと』
『貴族なら、だれでも良いの?』
精霊たちはふわふわと舞いあがる。
『そういう訳でもないかな……。名鑑上位にいるほど有利であることは確かかな』
男性は考え込みながら、告げた。
『お披露目の儀式に招待されるためには、宮内省が発行した正式な招待状がいるんだよ』
男性は精霊たちを諭していく。
『お披露目は皇女殿下や貴族の令嬢たちが婚姻可能な年齢に達したこと。成人したことを国内外に知らせるために開催される通過儀礼。国を挙げての公式行事かな』
ある精霊は呟いた。
『……つまらない』
つられるように他の精霊たちも続く。
『ざんねんです』
『悲しいですわ』
『さみしいですわ』
守護精霊の四柱につられて次々と文句を告げていくのは、そこに住む花の精霊たちだった。
『私たちを守護に持つ令嬢がお披露目できないなんて、陛下の目も節穴ね』
淡い光を伴っていた精霊たちの中で年長に当たる者が存在感を出してくる。
『そうですわ』
精霊たちの声が重なる。
男性は途切れたのを見計らい、精霊たちに告げる。
『言葉の分かる人の前でそういうことは言わないこと。花の精霊は国を挙げて保護されてはいるけど、そのことをよく思わない人物もこの国の中には一定数いるからね』
『は~い』
精霊たちは集まって相談し、それぞれがふわふわと動いている。どこかへと消えていった。
男性はため息を吐く。眠る娘を見ながら呟いた。
「娘を苦労の絶えない表舞台に出したくはない。それによる苦労もかけさせたくはない」
男性は言い切るとしばらく沈黙した。
『すまないが、いつものように娘のことを頼むよ』
『畏まりました』
四柱の精霊は一礼する。ふわふわと舞いながら持ち場に戻っていった。
男性はしばらく悩んでいた。
(「お披露目か――。そろそろ出立する準備を整えておく必要があるな……」)
空を見上げ、手拭いで汗を拭く。
他の園丁から今年のお披露目には五大公爵家が揃うと聞いている。
ブラウシュタイン公爵家では公爵の令息ブラウフェルト辺境伯が新たに婚約者を迎えた。
今回の舞踏会で二人のお披露目するのではないかと云う噂も飛び交っていた。
(「まもなくお披露目に伴う謁見の儀式と舞踏会が開催される。噂が事実なら、招待されている令嬢方や遠方の貴族だけではなく多くの貴族が早めに来訪してくるだろう……」)
男性は考えが迷走していることに気づく。
(「……仕事に戻ろう」)
男性は箱に入る仕事道具を持つと花壇に向かい、もくもくと仕事を続ける。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
淡い光を伴った花の精霊たちは点在しているいくつも庭園を行き来しているようだった。
『おひろめ、おひろめ』
『くるくる、くるくる』
精霊たちの言葉は特殊な情報網を伝播していく。
次は……いつになったら次話が……(ー_ー;)。
つながっていない状態での投稿はなしだよね……(ー_ー;)。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
一応、次話予定。
第2章から第3章に変更
『第 話 フリードリヒと宮廷園丁長』
『第 話 ローミィと兄、お花畑』
『第 話 宮廷園丁とビスマルク』
『第 話 ビスマルク卿の伝言(謁見予約)』
『第 話 フリードリヒと北離宮』
(フリードリヒ)
『第 話 神殿と禊、そして通過儀礼(神殿と禊の間)』
『第 話 皇子妃選定の儀と白い花(禁忌の花と神託)』
『第 話 神殿にある庭園』
『第 話 神殿奥院』
『第 話 謁見という名の呼び出し』(ローミィの父と陛下)
『第 話 陛下の執務室(託宣花と皇子妃)』
(ローミィの父)
『第 話 帰ってこない娘』
『第 話 奥院儀式』
『第 話 お披露目の謁見儀式』
(ヒルデブラントと婚約者)
『第 話 お披露目の舞踏会』
(ヒルデブラントと婚約者)
『第 話 フリードリヒとお披露目の儀式』
(見学ブースにいるフリードリヒとローミィと花の精霊)
『第 話 フリードリヒと勿忘草』
(ローミィと花の精霊から贈り物)
前に追加していることでこちらがなかなか改稿できずにいます……(ー_ー;)。
話が増えたり前後したり、サブタイトルは変更になるかもしれません。
話数の増える怪は続く…………。




