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偽りの帝国騎士と白雪百合と白雪薔薇の巫女 ―リューティエスランカ帝国建国物語秘話―  作者: 陵 棗
第一章 第一皇子ヴィリバルト・フリードリヒ(フリードリヒ編/話数追加で改稿予定)
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第  5話 フリードリヒの皇子教育と絵姿

 


 話数を第4話から第5話に変更しますm(_ _)m。

 話数のみ変更で本文の変更はしないはずでしたが、本文の言い回しなど気になる部分がありましたので追加や修正を行い、本文の改稿をしました。



◇◇◇◇◇◇


 言い回しなどに追加や修正を行い、本文の改稿をしました。

 内容に大きな変更はございません。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 読み直していたら、また誤記が……Σ(-∀-;)。

 併せて、改稿しました。



 

 第一皇子、フリードリヒの私室。



 フリードリヒは私室で長椅子に座り、窓際に置いてある花瓶の花を眺めていた。


 扉が三度、叩かれる。宮務官が扉を開け、入ってきた。


「失礼します」


 宮務官は細長い箱に入った巻物をいくつも持ってくる。


「殿下。本日の授業はこちらを使います」

「何だい?」


 宮務官は細長い箱から取り出した巻物をフリードリヒの前にある執務卓にいくつも並べていく。

 フリードリヒは宮務官が置いた巻物をしばらく眺めている。

 宮務官は並べ終えるとフリードリヒを見た。


「こちらは本日の教材、絵姿にございます」

「何の絵姿だい?」


 フリードリヒは宮務官に訊く。


「それはもちろん、殿下の好みを探るためのものでございます」


 フリードリヒはおもむろに腕を組み、宮務官を見据えた。


「私の…………好み?」

「はい、殿下の好みにございます」


 フリードリヒは腕を組み換え、静かに告げる。


「私の好みなど、何に使うのだ?」


 フリードリヒはため息を()く。


「他に覚えなければならないことがたくさんあるだろう。違うか?」


 フリードリヒは沈黙する。

 宮務官はフリードリヒの言い分に聞く耳を持たず、考えを通す。


「殿下! こちらのことも大事なことですよ!」


 宮務官は置き忘れていた巻物を応接卓に置く。


「殿下。どうかご覧になられていただけませんか?」


 フリードリヒは立ち上がると絵姿の入った箱の一つを宮務官に突っ返した。


「とりあえず、今日の授業はなしだな」

「殿下?」

「ご苦労様」


 フリードリヒは笑顔のまま、宮務官を部屋から叩き出す。そのまま扉を閉める。


 宮務官は廊下で呆然としていた。


「殿下?」


 急に扉が開き、フリードリヒが出てくる。

 宮務官は思い直したのかとばかりに表情を顕にした。


「忘れ物だよ」


 フリードリヒは笑顔で巻物の入った箱を廊下に置く。

 期待を砕かれた宮務官の大きな声が廊下に響いた。


「殿下! こちらはこれからの殿下にとって、大事なもの、かけがえのない存在になるかもしれないお方ですよ。お受け取りください!」


 フリードリヒは再び扉を開け、宮務官に告げる。


「……それほど大事なものなら、そなたが貰えばいい!」


 フリードリヒは言い切って、扉を閉めた。

 宮務官はフリードリヒの言葉に詰まる。


「殿下! 困ります!」

「この絵姿は殿下のために描かれたものです!」


 宮務官の前にフリードリヒが出てくることはなかった。


 フリードリヒは宮務官から絵姿の話を何度も持ち込まれるが、応じない。

 宮務官の絵姿攻撃をうまくかわしていくフリードリヒだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 数日後。


 宮殿の廊下には数人の宮務官が集まっている。大きな荷物を持ち、運ぶ。


「お前もか?」

「あぁ、主に頼まれた」

「そうか。うちもだ」


 宮務官がぼやき続ける。持ち込む絵姿を第一皇子に受け取って貰えずにいた。今日も懲りずに絵姿を持ち込もうと考えている。


「今日こそは成功するぞ!」

「はい」


 意気込みも新たに第一皇子の部屋に向かう宮務官だ。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 第一皇子、フリードリヒの私室。


 一人の宮務官が扉を三度、叩く。

 別の宮務官が扉を開けた。

 絵姿の入った箱を台車ごと運び込もうとしている。


 フリードリヒは箱を見た瞬間、立ち上がる。


「今日の授業はなんだ?」

「本日は絵姿の選び方にございます」


 フリードリヒは考え込む。


「……それは必要なのか?」


 フリードリヒは思わず、突っ込んだ。


「必要です」

「絵姿を欲しているのは私ではなく、卿らだろう? 今の私には不必要なものだ」


 フリードリヒはため息まじりに告げた。


「持って来た絵姿は差し戻す。今日の授業も中止だ!」


 フリードリヒは宮務官たちを部屋から追い出す。


 宮務官は意気揚々と挑んだが、絵姿の箱を見た第一皇子のフリードリヒに皇子の部屋から追い出され、遇えなく玉砕した。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◇



 フリードリヒの私室。


 フリードリヒはどっと疲れがでたのか、長椅子に座っている。何もない空間をただ眺めていた。


 フリードリヒはため息を吐き、悩む。


「今日も、か……」


 しばらくすると扉が三度叩かれる。

 別の宮務官が扉を開け、入ってきた。


「殿下」

「すまないが、巻物は却下だ。何ども言わせるな……」


 フリードリヒは宮務官の言葉を遮り、告げる。

 宮務官は言葉を続けた。


「殿下。……何の巻物でしょうか?」


 フリードリヒは部屋にいる宮務官が、追い出した宮務官と違うことに気づく。


「あ、いや。何でもない。え~っと、何だい?」


 フリードリヒは焦っている。


「殿下。陛下がお呼びでございます」

「父上が?」

「左様にございます」


 フリードリヒは考え込み、悩む。


「……用件は?」

「殿下に直接お話をお伝えするとのことです」

「そうか、分かった。陛下にお伺いすると伝えてほしい」

「畏まりました」


 宮務官は部屋をあとにした。

 フリードリヒは寝室へ戻り、上着を変えた。鏡を覗き、襟を正す。寝室から出る。

 戻ってきた宮務官の案内で陛下の待つ、執務室の隣にある控えの間に向かう。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 陛下の執務室は皇帝の政務を行うための、部屋だ。

 執務室には幾つかの控えの間がある。通される部屋は侍従長の采配で決まっていた。

 執務室脇にある控えの間には、侍従長の部屋もある。


 宮務官は指示された控えの間の扉を三度、叩く。少し待ちを取り、入室した。


「侍従長。殿下をお連れしました」

「殿下をお通してください」

「畏まりました」


 宮務官は扉を開けたまま、部屋を出る。宮務官はフリードリヒを通す。

 フリードリヒは控えの間に入る。

 案内を終えた宮務官は扉を閉め、退室していく。

 侍従長は殿下のもとへ歩み寄る。


「殿下、少々お待ちください」

「分かりました」


 フリードリヒは部屋の入り口近くにある長椅子に座って待つ。

 華美すぎず、落ち着いた感じの調度品が置かれている。

 フリードリヒはしばらく部屋を眺めていた。

 奥の扉が開く。


「陛下がお待ちです」


 フリードリヒは立ち上がり、歩き出す。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 陛下の執務室。


 侍従長は執務室の扉を、三度叩く。しばらく待ち、扉を開けた。部屋に入り、その場で立つ。


「陛下。殿下が参られております。お通ししますか?」


 部屋の奥から声が聞こえる。


「あぁ、通せ――」


 侍従長は再び扉を開け、殿下を促した。

 フリードリヒは部屋に入る。

 侍従長はその場で待つ。


「侍従長。すまないが、例のものを持ってきてくれないか?」

「畏まりました」


 侍従長は一度、退出していく。侍従長室に置いてある二通の書状をお盆に載せ、戻ってきた。


「お待たせいたしました。こちらにございます」


 陛下は侍従長が持ってきた封筒を開け、書状を改める。

 良質な料紙に帝国と帝室の紋章が鎮座していた。確認を終えると畳み、封筒にしまう。


 陛下は椅子から立ち上がり、フリードリヒのそばに歩み寄る。

 フリードリヒは驚き、その場で立ち上がった。


「フリードリヒ、久しぶりだな」

「はい、父上」

「元気だったかい?」

「はい。父上も息災で何よりです」


 二人は沈黙した。

 陛下はフリードリヒに正面の椅子に座るように促す。

 フリードリヒは示された長椅子に腰かける。

 陛下も一人掛け用椅子に腰を落とす。


「フリードリヒ。朕がそなたを呼ぶことにした理由はわかるな?」

「はい。おそらく……、皇子宣下についてのことでしょうか?」


 陛下は侍従長に合図を送る。

 侍従長は執務机のお盆を持って来た。応接卓に置く。


「フリードリヒ。皇子宣下の儀式についての詳細は宮務官から聞いているな」


 フリードリヒは考え込む。記憶を辿るが、思い出す内容は同じだった。


「はい。若干、偏りぎみですが……ね」

「偏っている?」


「はい。儀式の内容は、軽く説明がありました。その後は皇子妃について、私の好みを探ろうとしているようです。ときおり絵姿をおしつけられそうになります」


 陛下は少し沈黙し、言葉を続ける。


「フリードリヒ。絵姿は受け取っていないだろうな?」

「はい。開封せず、すべて宮務官に戻しております」

「本当に開封せずに差し戻したのだな」


 フリードリヒはしばらく熟考した。


「はい、あの…………陛下。いちおう中身を確認した方がよろしかったでしょうか?」


 フリードリヒは対応をまちがえたかと不安になる。

 陛下はそれを否定した。


「いや、それで良い。今後も開封せず、そのまま宮務官に差し戻すようにしなさい」

「畏まりました」


 陛下はため息を吐く。腕を組み、考え込む。


「すでに絵姿が持ち込まれているか……。さすがにまずいな」


 陛下は沈黙した。しばらくして、侍従長を呼ぶ。

 侍従長は陛下のもとに歩み寄る。


「陛下お呼びでしょうか」

「あぁ、侍従長。第一皇子に持ち込まれる絵姿をどう思う」

「絵姿にございますか……」


 侍従長は軽く咳払いをした。


「あぁ」

「殿下は庭園で時間を忘れて花を()でることがお好きなようで、宮務官の策は今のところ(ことごと)く失敗しているようですよ」

「そうだな。今後のことを考えれば、こちらも対応を考えねばならないだろう」


 陛下は悩む。


「第一皇子の皇子教育について、ごく一部の宮務官が暴走しているようだな。…………今後、許可なく皇子に絵姿を渡した者は第一皇子付き宮務官から外す方向で動いてほしい」

「御意」


 侍従長は侍従に告げ、宮内尚書を呼び出した。別室にて対応を行っている。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 陛下はフリードリヒに書状を差し出す。


「後日、皇子宣下の儀式で渡す書状だ」


 フリードリヒは手に取り、じっくりと見つめる。


「これが……」


 フリードリヒが書状に見とれていた。

 陛下はそんなフリードリヒに別の書状を差し出す。


「そうだ。もう一通は内示の書状だ。本来であれば、ロイヒテンフェルゼン大公位を授けるのはもう少し経験を積んでからだが……」


 フリードリヒは叙爵状を眺め、椅子から立ち上がる。


「陛下。大公(グロースヘルツォーク)位の授爵、身にあまるほど名誉であり光栄なことです。若輩者につき申し訳ありませんが、謹んで拝辞(はいじ)申し上げます」


「フリードリヒ、早まるでない。今回は大公位の内示だ。正式な叙爵(じょしゃく)という訳ではない」


「父上。もう少し人生の経験を積ませてください」

「分かっておる」



「皇子教育は順調か?」

「は……、はい」


 フリードリヒは言葉に詰まる。

 陛下は話題を変えた。


「そういえば、小さな花の精霊から加護を貰ったそうだな」

「はい。八重咲きの白い花、その多くが意図的に抜かれておりましたので保護したおりにいただきました」


「そうか。そのなかに禁忌の花はあったのか?」

「いいえ、禁忌の花はありませんでした」


「そうか……。報告が上がっている通りだな」


 沈黙が続く。

 陛下は思い出したように告げる。


「あぁ、そうだ。()()はお披露目の儀式がある。将来のために見学できる場所を解放させておくから、雰囲気を覚えておくようにしなさい」


「……はい。都合をつけます」


 フリードリヒはしばらく考える。


「皇子宣下の儀式でこの書状を渡す。大事にしなさい」

「謹んで拝受します」


「フリードリヒよ。今は皇太子の称号とロイヒテンフェルゼン大公位の件は忘れていても良い――――」

「はい」



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ロイヒテンフェルゼン大公位は皇帝陛下が即位して以降、現在も空位のままだ。

 次にその大公位を継ぐのは、皇帝の第一皇子であるヴィリバルト・フリードリヒと目されている。


 ロイヒテンフェルゼン大公位はラゲストゥーエ帝国の皇帝と皇妃の間に生まれた皇子に与えられる帝室爵位。

 帝国の皇太子(クローネプリンツ)の称号でもあり、名実ともに皇位継承権第一位を有する爵位である。

 男系男子で幼少時に皇子宣下を受け、成年宣言を終えていることが必要だった。





 話数の変更に伴い、次は第6話となります。

 サブタイトルは『フリードリヒと持ち込まれ続ける絵姿』にて投稿済みです。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 次の第5話はサブタイトルを

『フリードリヒと持ち込まれ続ける絵姿』に変更して投稿済みです。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 次は『第5話 フリードリヒとローゼンシュタイン公爵』の予定で、作成中です。


……難航しておりますm(_ _)m

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