第 15話 ヒルデブラントの謁見願いと騎士見習いの摸造剣
併せて本文の言い回しや不足していた部分の追加修正を加えて本文を改稿しましたm(_ _)m。
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第14話の後書きで第15話は
『ブランデンフェルト辺境伯の狙い』と予告しておりましたが、サブタイトルを『ヒルデブラントの謁見願いとフリードリヒの憧れ』を投稿しました。
投稿にあたってサブタイトルを『ヒルデブラントの謁見願いと騎士見習いの模造剣』に変更しました。
ヒルデブラントは第一皇子のフリードリヒが帝国騎士に憧れを抱いているということを始めて知り、驚きつつも嬉しさを覚えていた。
殿下の私室から退室した後、殿下の願いを叶えようと思い長い廊下を歩いている。
ヒルデブラントに声をかける一人の侍従がいる。
「閣下、お探しいたしました」
「なんだい?」
「ブラウシュタイン公爵閣下が閣下をお探しでした」
「分かった。父が私を探している理由、分かるかい?」
「詳しくは訊いておりません」
ヒルデブラントは考え込む。
「そうか。私の用が終わったら、父に会いにいくよ」
「畏まりました。公爵閣下にはそうお伝え致します」
「頼んだ」
ヒルデブラントは侍従を呼び止めた。
「あぁ、そうだ。すまないが、なるべく早い時間の謁見願い、その手続きを取れないか?」
「用件を伺えますでしょうか?」
「第一皇子、フリードリヒ殿下のことです」
侍従が動きを止め、言葉を続ける。
「閣下。謁見願いの内容がフリードリヒ殿下の皇子妃についてでしたら、私どもは取り次ぎできません」
侍従はヒルデブラントを見据え、凝視する。
「あ、いや。私は皇子妃についてではなく、本当に別件だ。フリードリヒ殿下の皇子教育について加えたいことがあり、陛下に奏上してその許可を得たい」
「皇子教育ですか?」
「あぁ。殿下に知識の学だけではなく、武の方も学んでいただくきっかけを与えたい」
侍従はヒルデブラントが謁見する理由に納得した。
「畏まりました。侍従長に確認して参りますので少々、お待ちください」
「すまぬ」
「公爵閣下の伝言は、別の者に頼んでもよろしいでしょうか?」
「あぁ、対応は任せる」
侍従は通りがかった公爵家筋の宮内官に声をかける。
宮内官に公爵への伝達を頼む。
侍従は侍従長に謁見願いを通しに行くため、向かった。
ヒルデブラントは謁見願いや拝謁伺いを行った者が待機する控えの間に進む。
いくつかある控えの間、その一つに通される。
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ヒルデブラントが謁見願いを行った侍従が戻って来る。
「閣下。閣下の謁見願い、陛下がお会いするそうです。」
「ありがとうございます」
別の扉から侍従長がやって来た。
「すまぬが、私が陛下の元に案内する。侍従は持ち場に戻ってよろしい」
「はっ」
「あぁ、侍従。すまぬが、この部屋には誰も通さぬ用にして欲しい。謁見を終えたあと、ブラウフフェルト辺境伯はこの控えの間に戻って来る」
「畏まりました」
侍従は表示をそのままに残し、控えの間を退室していった。
侍従長はヒルデブラントに声をかける。
「ブラウフェルト辺境伯、陛下がお待ちです。参りましょう」
「はい」
ヒルデブラントは侍従長の後に続く。
侍従長は侍従が出ていった扉には向かわず、先ほど入って来た扉へと歩いていく。ヒルデブラントを連れ、謁見の間に向かう。
「侍従長」
「閣下。ご案内するのは陛下のもうひとつある執務室です。皇子妃絡みの拝謁伺いや謁見願いはすべて断っている関係で、表が使えないのです」
「……分かりました」
ヒルデブラントは黙って侍従長の後に続く。
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陛下の居住区域にある陛下の執務室。
侍従長は扉を数回叩き、声をかける。
「失礼致します。陛下、ブラウフェルト辺境伯をお連れいたしました」
「あぁ、遠してくれ」
陛下は手を止め、書類を置く。
侍従長はヒルデブラントを部屋に案内する。
執務室に入室したヒルデブラントだった。
陛下は椅子から立ち上がり、応接用に置かれた長椅子に向かう。
ヒルデブラントは姿勢を整え、跪拝する。
「陛下、謁見願いをご拝受いただき誠にありがとうございます。陛下のご尊顔を拝する栄誉を賜り恐悦至極に存じます」
陛下は軽く咳払いをした。
「ヒルデブラント。今日は堅苦しい挨拶は抜きだ。まずは座ると良い」
「御意」
ヒルデブラントはその場で立ち上がる。陛下の前にある長椅子まで歩き、座った。
陛下はヒルデブラントが座るのを待って告げる。
「フリードリヒについて何か報告があるそうだな」
「――はい」
ヒルデブラントは深呼吸し、話を切り出す。
「フリードリヒ殿下は、我々帝国騎士に興味があるようです」
陛下はヒルデブラントの服装に目を止めた。
「そうか……。フリードリヒはときどき、そなたたちの訓練を覗いておったぞ」
「御存知でしたか?」
「あぁ、フリードリヒは宮務官の撒きかたを覚えたようでな……。庭園に向かうのを良く見る」
「陛下」
「そなたたちの訓練風景をじっと眺めていた」
陛下はため息を吐き、遠くを見つめている。
「……陛下?」
「そのうち宮務官や宮内官、馬丁や園丁などに化ける用になる。まぁ…………、以外にばれないものでな。さまざまなものが見えることもある」
ヒルデブラントは驚き、陛下に進言する。
「陛下、ご身分をお考えいただけませんか?」
「ヒルデブラント、朕にも休息は必要だ」
陛下は事実を告げた。
「陛下、お忍びでも護衛はお付けください」
「忍んでいるのは神殿を含めた帝宮の敷地内だけだ。城下にはでないよ」
「陛下、お忍びはお控えください」
「ヒルデブラント。とりあえず、脱線した話は戻そうか」
陛下は不毛な展開に終止符を打った。
「畏まりました」
ヒルデブラントは頷くしかない。
陛下は話を戻し、本題に入る。
「フリードリヒは、帝国騎士についてなんと申しておった」
「僭越ですが、皇子宣下の儀式を終えられた殿下に私の礼装と剣をお貸しいたしました」
「なんと答えた?」
「帝国騎士の地位と勲章は重いと申しておりました」
「そうだな。軽く考えて貰っても困る」
「――――はい」
しばらく沈黙が訪れる。
陛下は言葉を続けた。
「息子は騎士としてやっていけると思うか?」
「えぇ、帝国騎士として異名を持つ、陛下の血をお引きのフリードリヒ殿下です」
「”黒鷲のジギスムント”か?」
「えぇ。いずれは陛下に負けじ劣らず、騎士として異名を得るほどの猛者になられることでしょう」
「そうか……」
陛下は考え込む。
ヒルデブラントも黙した。
陛下はヒルデブラントに一つ提案する。
「フリードリヒに見習い騎士用の模造剣を持たせ、少し訓練をつけてくれるか?」
「陛下、よろしいでのでしょうか?」
「あぁ。筋が良ければ本格的に見習い騎士への出仕も考えよう」
「ありがたきお言葉、至極にございます」
陛下も騎士や帝国騎士としての実務経験を持つ。
「我が国の皇子は騎士や帝国騎士となり、実務を行う必要がある。ロイヒテンフェルゼン大公の座をフリードリヒの意思とは別に保留にした理由もそこにある」
「えぇ、歴代の大公殿下は帝国騎士でもありました」
陛下もヒルデブラントの言葉に頷く。
「ヒルデブラント。フリードリヒを騎士、いずれは帝国騎士として使えるように鍛えてほしい」
「御意。必ず、殿下を帝国騎士に――――」
ヒルデブラントは立ち上がる。陛下のそばに歩みより、跪拝した。
「任せた。フリードリヒを見習い騎士として出仕させる件、朕から改めて勅旨を出そう」
「ありがたき幸せにございます」
「仮の書状を授けよう。必要とあらば、追って正式な書状を届けよう」
「御意」
ヒルデブラントは跪いたまま、再度頭を下げる。
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ヒルデブラントは一通の仮発行された書状を持って、陛下の執務室から退室する。
侍従長の案外で控えの間に戻った。
ヒルデブラントは金鷲騎士団宿舎に与えられた部屋に戻り、礼装からいつもの服に着替える。
騎士団の備品武庫に向かう。
「閣下、装備品の補充ですか?」
ヒルデブラントは考え込む。
「備品には間違いないが、見習い騎士用の模造剣をいくつか借りられるか?」
「構いませんが、見習いの模造剣を何にお使いですか?」
「あぁ、剣をお教えしたいお方がいる。そのお方に合う物を選びたい」
「畏まりました」
フリードリヒは整頓された棚から見習い騎士用の模造剣をいくつか選ぶ。
訓練用に新たな剣を探しに来た騎士が入った来た。ヒルデブラントがの模造剣を持っているのに気づき、声をかけてくる。
「閣下」
「何だい?」
「あの……、そちらの見習い騎士用の剣をどうなさるのですか? 閣下にはそちらは不釣り合いです……」
ヒルデブラントが手に数種類の剣を持っていた。
「あぁ、違う。剣をお教えしたいお方のため、合う物を選びたい」
「そういうことでしたか」
「いきなり我々と同じ剣を使わせ、お怪我を負わせでもしたら大変なことになりますので……」
「そうですね」
それなりの身分を持つお方に与える物だと理解した騎士はそれ以上、詮索しなかった。急いで使う剣を選び、部屋を後にした。
宮内官はヒルデブラントに確認する。
「それでは模造剣を七本ですね」
「よろしくお願いします」
「こちらの書類に署名をお願いします」
宮内官はヒルデブラントに署名を頼む。
ヒルデブラントは書類を受けと取り、名を記入した。
宮務官は署名を確認すると持ち場に戻っていく。
ヒルデブラントの殿下が待つ、私室に向かう。
第16話はサブタイトルを『フリードリヒの憧れと模造剣』に変更し、投稿済み。
第17話はサブタイトルを『ヒルデブラントと剣術指南』に変更して投稿済みです。
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次は
『第 16話 ブランデンフェルト辺境伯の狙い』
『第 17話 ローゼンシュタイン公爵家と二人の贈り物』
の予定で作成中です。
サブタイトルは変更するかもしれないし、前後するかもしれないです(;・ω・)




