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偽りの帝国騎士と白雪百合と白雪薔薇の巫女 ―リューティエスランカ帝国建国物語秘話―  作者: 陵 棗
第一章 第一皇子ヴィリバルト・フリードリヒ(フリードリヒ編/話数追加で改稿予定)
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第  3話 フリードリヒと夢

話数を第2話から第3話に変更しました。


内容については、誤記訂正と細かい修正もしましたm(_ _)m。



 

 精霊たちの懇願は終わり、部屋に静寂さが戻る。


 帝都の東に連なる山肌が明るさを取り戻しはじめた。太陽が少しずつ昇っていく。

 人々が生活のために動き出す。



 ******



 剣を携えた二人の護衛騎士が長い廊下を歩いている。

 ある部屋の前まで到着すると一人の騎士が姿勢を整え、おもむろに扉を叩く。


「フリードリヒ殿下、失礼致します」


 部屋のなかからは返答がない。

 二人はいつものように入室した。


 一人が掃き出し窓や出窓を覆い隠すフォーアハング(カーテン)を次々と開いていく。

 日差しが部屋の中に差し込み、明るくなった。


 もう一人が寝台脇へと歩み寄り、声をかける。


「フリードリヒ殿下、朝ですよ」


 脇机に置かれた手持ち燭台(しょくだい)を定位置に戻す。


「殿下」


 声をかけられたフリードリヒはまぶたを開ける。


「あぁ、起きている」


 眠そうに体を起こす。両手を上げ、背伸びをする。


「ヒルデブラント、もう朝かい」

「すでに朝にございます」

「そうか。――起きるか」


 フリードリヒはもう一度、背伸びをしていた。


 ヒルデブラントは籠に準備されていたフリードリヒの着替えを差し出す。

 フリードリヒは受けとると、寝間着から私服に着替える。


 ヒルデブラントは寝台の枕元に目線を落とす。

 枕元には読みかけの本と数本の花が置かれていた。


「殿下、ご就寝になられる前に花瓶から花を持ち出しましたか?」

「いや……」


 フリードリヒは枕元に目を落とす。読みかけの本の隣に花がある。


「私が持ってきたのはこの本だけだよ。まぁ、その途中で寝落ちしたらしいけどね」


 フリードリヒは本を持ち上げた。


「殿下。この花は……」

「いまは花瓶に戻そう」


 フリードリヒはヒルデブラントの言葉を遮る。

 寝台から起き上がると枕元の花を手に取り、花瓶がある脇机まで歩き、花を差し入れた。


「入手経路は不明だが、花に罪はない。しおれるとまずいだろう」

「さようにございますが……」


 フリードリヒはおもむろに花の上で手をかざし、呟く。


『――』


 淡い光が現れて花瓶を包む混む。しばらくすると光は吸い込まれるように消えていった。

 風もないのに数輪の花がゆらゆらと動き、しだいに全ての花が揺れる。


『ありがとごじゃいましゅ』


 姿なき主の声が聞こえる。淡い光が呼応するかのように煌めき、花のなかに消えていく。


 フリードリヒは笑う。


「水も変えたし、大丈夫だろう」


 フリードリヒは不意に思い出した。


「あぁ、そうだ。ヒルデブラント」

「なんでしょう」

「昨日、私が寝入っているとき寝台のそばでなにか話し合ってなかったか?」


 ヒルデブラントは驚く。


「どういうことでしょう? 殿下」


 フリードリヒはいったん沈黙し、考え込む。


「枕元で囁かれた気が……する」


 ヒルデブラントは聞き返す。


「囁くほどの小さな声ですか?」

「あぁ、必死にお願いされた気が……するんだ」


 フリードリヒは思いだしながら、続ける。


「古い言葉で、『助けて……ほしい……』と――――。小さな子どものような声だった」


 ヒルデブラントは改めて驚く。


「殿下よりも幼い子どもですか」

「たぶん。明確に誰とはいえないが、微かな声だった」


 フリードリヒは思い出しつつも悩む。


「少々お待ちください」


 ヒルデブラントはもう一人の護衛騎士に声をかけ、擦り合わせた昨夜の警備記録を確認する。

 ヒルデブラントの隣には同じく護衛騎士のシュラエルマイヤーが並ぶ。


「殿下。我々は定期的に部屋のなかも巡回しておりますが、ご就寝中のそれも耳元で話しかけることなど致しません」


 フリードリヒはしばらく沈黙する。


「そうか、それもそうだよな。私の気のせいか……」


 シュラエルマイヤーは進言する。


「殿下、そういう問題ではございません。不審者の侵入を許したとあっては我々の責任問題につながります。警戒を強化致します」

「シュラエルマイヤー。たぶん、その必要ない」

「殿下」


 フリードリヒはシュライエルマイヤーを諭していく。


「声の主から危害を加えられる可能性はなかったと思う」

「なぜです」


 フリードリヒは考え込む。


「この花を置いていっただけだよ。私が起きなかったということは寝ていた者に対して危害を加える気はなかったということだと思う」

「殿下」


 フリードリヒは花瓶を指し示し、告げる。


「この花はどこにでも咲いている白い花だ。花には罪がない」

「確かにそうですが……」


 シュライエルマイヤーはフリードリヒのほうを向く。

 フリードリヒは花瓶を眺めている。


「花の主からの贈り物は、本当に私宛で良いかどうかは分からないが、……助けてほしいという懇願(こんがん)無下(むげ)にはできないよ」


 フリードリヒはヒルデブラントとシュライエルマイヤーに告げる。


 シュライエルマイヤーはヒルデブラントに声をかける。


「閣下、私は持ち場に戻ります」

「そうだな」


 シュライエルマイヤーは持ち場に戻っていった。


「殿下、本日のご予定はどうなさいましたか?」


 フリードリヒは座っていた長椅子から立ち上がる。


「今日の予定なら、すべて中止になったのではないかな」

「さようにございますか?」

「宮務官がこの時間まで誰も来ないのは、よほど忙しいとみえる。私付の宮務官までお披露目に絡む祝賀行事の準備に動員されてしまっているようで、こちらまで気が回らないらしい」


 フリードリヒはため息を吐く。


「確かに宮務官の姿がないようですね」

「そういうことで今日は一日暇になったよ」


 フリードリヒは身を投げるように長椅子に座った。

 ヒルデブラントは確認していく。


「殿下、本日はどうなさいますか?」

「うーん、そうだね」


 フリードリヒは考え込む。


「…………とりあえず、今日はおとなしく部屋で読書でもしていようかな」

「殿下。それでは宮殿の外にお出かけになる際は護衛騎士にお声をお掛けください」

「あぁ、分かった」


 フリードリヒは壁にある本棚から本を何冊か選び、長椅子に戻った。

 一冊手に取ると残りの本を机に置き、長椅子に転がる。ある意味、暇をもてあましていた。


 持ってきた本を読み終えたフリードリヒはその本を片付け、寝室へと移動する。

 寝台に座り、寝台脇に置かれた花瓶に咲く花を見つめている。

 いつまでも枯れぬ花に悩みごとを(つぶや)く。


(すまないが、教えてほしい――――)


 フリードリヒは花瓶から一輪の花を取る。ため息を()き、寝台に転がった。持っていた白い花を眺め、考え込む。


(声の主は私に誰を助けてほしいのか……。いつも肝心な部分が聞き取れない)



 ******



 正体不明の主はその後も不定期に訪れた。

 贈り物の花が必ず、一輪届く。いつも同じような白い花――。

 相変わらず、フリードリヒの耳元で囁くと消えていった。




 

第3話の文章を修正、追加しました。

後書きも併せて修正しました。



第4話は投稿しました。




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