第 22話 グランツフェルト辺境伯令嬢エルネスティーネと念願の庭園散策
気になる部分がありましたので、本文の改稿しました。この改稿による大きな変更はございません。
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第21話の後書きで予告の第22話『グランツフェルト辺境伯令嬢エルネスティーネと念願の庭園散策』ができましたので新規で割り込み投稿します。
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今回も相変わらず、ヒルデブラントとギーゼルベルト、ヴェルナーの三人が…………。
中央庭園。
別名、皇帝の庭園に無事入場することができたホーエンブルク伯爵夫人とグランツフェルト伯爵令嬢エルネスティーネと侍女たちは安堵している。
ヒルデブラントとギーゼルベルトとヴェルナーの三人は休憩時間で散策していたこともあって女性陣の後ろに立つ。
ヒルデブラントは特に職務の関係で来園頻度が高く、園丁とも顔見知りである。
案内担当の園丁が周囲を確認しつつ、基本の散策順路を先導していく。
花壇に咲く花々は園丁の手入れを待ち、ゆらゆらと揺れている。
案内係の園丁は中央庭園の位置を示す案内板の前に立つ。ヒルデブラントらに目を向けつつ、ホーエンブルク伯爵夫人や辺境伯令嬢に視線を移す。
「すでに立地に関してはご存じのお方もいらっしゃるかと存じますが、帝宮内には趣向を凝らした庭園がいくつもございます」
園丁はそのまま続けていく。
「そのなかでも中央庭園は"皇帝の庭園"とも呼ばれております。群を抜いた敷地面積と規模を誇り、荘厳さも併せ持つ大規模庭園としても知られています」
園丁は自信を持って皇帝の庭園、中央庭園を薦める。
「さらに趣の異なる小さな庭園がいくつも点在しており、こちらもお薦めです」
ホーエンブルク伯爵夫人は園丁に訊く。
「庭園には休憩できる場所もあるのかしら?」
「夫人、それはもちろんにございます」
園丁は即答する。
「こちらの庭園はとても広いため、休憩無しでの散策は現実的ではありません。各庭園に休憩用施設もいくつかございますので、併せてお楽しみください」
「……確かに休憩も必要よね」
伯爵夫人は園丁に目を向け、聞いていた。
「庭園には休憩用施設の他にも庭園を彩るためだけに建てられた装飾用建築物がございます。ただ、こちらは休憩に向かない場合が多いです」
「屋根のない建物に柱だけのもの、廃墟のような朽ちた建造物。そういったもののことですな」
園丁の言葉に続けたのはホーエンブルク伯爵だ。
「えぇ、そうです。趣の異なる建物もございますので、併せてそちらもご覧ください」
園丁もおもわずところに力が入り、ついつい情報が盛られていく。
「休憩用の施設は景色を楽しめる四阿や、係員が常駐しゆっくりと休息が可能な回廊園亭もございます」
「今日はその回廊園亭は利用できるのかしら?」
伯爵夫人は気になっていることを園丁に訊く。
「もちろんです。定期の修繕を行う予定の建物を除き、ご利用いただけると思います」
「それは楽しみですわね」
伯爵夫人は伯爵に目を向けた。
ヒルデブラントは会話が途切れたことを知り、声をかける。
「回廊園亭は外観も素晴らしいものですが、建物だけではなく内装も見処の一つですよ。休息だけではもったいない」
「そうですね」
「もちろん休憩だけではなく雨宿りもできますし、大回廊園亭には暖房設備もありますので寒さも凌げたりもしますよ」
伯爵夫人は盛りだくさんの情報に興味を惹かれていた。
「大回廊園亭…………」
「回廊園亭には大回廊園亭と呼ばれる大きなものから、こじんまりとした小回廊園亭と呼ばれるものまでございますよ」
伯爵夫人の後ろで辺境伯令嬢のエルネスティーネは考え込んでいた。
伯爵夫人はため息を吐き、案内板を眺める。
園丁はさらに続けていく。
「夫人、その他にも庭園はございますよ。南離宮には南苑や池苑があり、北離宮には北苑や女神の泉庭もございます」
「回っていない場所も多いですわね」
「そちらについては伯爵閣下とご一緒にどうぞ……」
「えぇ、そうですわね。いずれ、機会を改めますわ」
伯爵夫人は話題を切り上げる。
園丁も話を戻す。
「神殿区域にも神々に捧げられた庭園がありますし、慰霊塔のある広場にも庭園がございます。そちらにも同様に四阿や回廊園亭が設けられています」
「どの庭園もゆっくり時間をかけ、散策されることをお薦めいたします」
「…………そうですわね。一日では無理そうですわね」
「はい」
園丁は案内板を離れた。一行を引き連れ、ゆっくりと順路を進んでいく。
多種多様の花が咲き、優雅に存在感を醸し出している。
目を惹くのは大輪で幾重にも連なる花弁を持ち、華やかに咲く八重咲きの薔薇だ。花弁が中央に高くなっている形の薔薇も見える。
後ろには大輪の紅百合が目を惹く。鮮やかな色彩で反り返る花弁が目立つ。
その一方で淡い色の花弁が筒状に伸び、下向きに広がっている。
離れたところにあるのは、小輪の花が見てきた。
咲いているのは鈴蘭だ。白色のものが多く、淡い色の紫の花弁が集まっている。小さな花を釣り鐘状に咲かせる。
ところどころに帽子を被った園丁が点在していた。腰を落とした園丁は花壇に咲く花から萎しおれた花や枯れた葉を選別したり、雑草を抜いたりしている。立ち上がると全体を眺めていく。地面に置いていたそれらを回収すると箱に入れる。園丁は手入れの指示札が置かれた次の場所ヘ移動していった。
園丁は記念碑のある銘板の前に立つ。
「こちらの庭園は初代皇帝陛下の偉業を讃えるために造成されたとも云われており、建国当時からこの場所に置かれております」
ホーエンブルク伯爵夫人とホーエンブルク伯爵の二人は記念碑の前に立ち、眺めている。
園丁は後ろを確認しつつ、順路を進む。
ホーエンブルク伯爵夫人は園丁に訊く。
「本日、こちらで見学をしている方々は他におられますか?」
園丁は立ち止まり、考え込む。
「少し前まで数組の方々がおいでになられておりましたが、すでに退出済みです。現在の来訪者はブラウフェルト辺境伯閣下がお連れになっている伯爵閣下御一行だけにございます」
「そうですのね。皆さま、ゆっくりと散策されなかったのでしょうか?」
「本日は我々があちらこちらにおりますから、お客様方がゆっくりとできなかったのでしょう」
「あら?」
「しばらくするとお連れの方と自由に回りたいいから最小限の見処を頼むと申され、機会を改めたいと多くの方がお帰りになりました」
「そういうことですのね」
「えぇ」
ホーエンブルク伯爵夫人は察したらしい。
園丁はさらに順路を進み、奥へと向かう。
エルネスティーネは荘厳さを醸し出す庭園に圧倒されていた。
エルネスティーネは兄のギーゼルベルトを見上げる。
「お兄様」
「何だい?」
ギーゼルベルトもエルネスティーネの方を向く。
「お兄様はいつもこちらの庭園を見ていらっしゃるの」
ギーゼルベルトは考え込む。
「それほどでもないかな。黒鷲騎士団は不意の呼び出しがあるから、今日のようにゆっくりと時間をかけてはみたことはないよ」
ギーゼルベルトは遠くを見つめる。
エルネスティーネは兄のギーゼルベルトが見ている先に目を向けた。
たくさんの園丁が花壇や散策路の手入れを行っている。
「お兄様?」
「少ない機会を有効に使えていたのか、実のところは分からない」
ギーゼルベルトはしばらく沈黙し、言葉を続ける。
「確かに回廊園亭は素晴らしい。その中でも私が薦めるのは大回廊園亭かな」
ギーゼルベルトはゆっくりと散策したいと思っていた大回廊園亭を思い浮かべた。
「皇帝の庭園を一望できる高台にある大回廊園亭。一階にある休憩場所から見える風景を見せたいと思っていた」
「お兄様のお薦めならぜひにでも見てみたいです」
「機会があれば連れていきたいよ」
ギーゼルベルトはエルネスティーネに告げる。
「ギーゼルベルト」
「は、はい。何でしょう、閣下」
「大回廊園亭は一階だけではなく、二階からの展望も素晴らしいよ」
「閣下。二階ですか?」
ギーゼルベルトとエルネスティーネはヒルデブラントを見上げる。
「一般的には事前予約が必要だけどね」
「あの……、閣下。普通に拝観できる場所をお願いします」
「あ、すまない」
ギーゼルベルトはヒルデブラントに訊く。
「あの……、閣下。その事前予約は私でもできますか」
「可能なはずだよ。私は父経由で公爵家の伝手を使っているから、辺境伯閣下に尋ねてみるといい」
「ありがとうございます」
ヒルデブラントはギーゼルベルトに告げる。
「そうだ。お披露目時期に弟妹を連れてくる予定があるかい」
「え? あ。いえ……。辺境伯家では例年、年端のいかない弟妹は留守番です」
「そうか、参考までに伝えて置こう。お披露目時期にはお披露目に同行を許されたお披露目間近の令嬢や令息だけではなく、小さな令嬢や令息の姿も見る。騎士団の職掌に迷子の保護が加わっているのはこういった事情からだ」
ヒルデブラントはさらに続ける。
「その時期に大回廊園亭に事前予約を入れて置くとゆっくりと散策できるから、お披露目間近の妹君を連れてゆっくりと案内することもできると思うよ」
「え……?」
「まぁ、庭園の案内は婚約者に頼むという手段もある。職掌については応相談だよ」
「そうですね」
ギーゼルベルトはヒルデブラントに目を向けつつ、考え込んでいた。
ヒルデブラントは会話を終えると庭園の案内を専門の園丁に任せ、後ろで見守っていた。
エルネスティーネは兄のギーゼルベルトが話題に挙げた大回廊園亭に興味を惹かれる。好奇心をくすぐられていた。ときおり園丁に声をかけ、聞き入っている。
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ブラウシュタイン公爵家筋の園丁がヒルデブラントに気づき、声をかける。
「あの……、閣下」
「何だい?」
ヒルデブラントは声の方に向く。
「差し出がましいようですが、婚約者をほっといていないでご自身で案内されてはどうですか?」
「婚約者?」
「はい、あちらにいらっしゃるのが閣下の婚約者様ですよね」
園丁が指し示した先にいたのはグランツフェルト辺境伯令嬢のエルネスティーネだ。
「あー、いや。すまない。人違いだよ」
ヒルデブラントは園丁に事実を告げる。
「こちらの辺境伯令嬢は私の婚約者ではないからね」
「閣下。何を仰っておられるのです……?」
園丁はヒルデブラントに詰め寄ってきた。
ヒルデブラントは辺境伯令嬢の隣に移動していく。
「こちらはグランツフェルト辺境伯閣下の令嬢で、隣にいるグランツフェルト卿リウドルフ・ギーゼルベルトの妹君だよ」
ヒルデブラントはギーゼルベルトと辺境伯令嬢を指し示した。
園丁はヒルデブラントを見据え、聞き返す。
「閣下。本当に閣下の婚約者様ではないのですか?」
「あぁ、私の婚約者は領地にいる。こちらにいる令嬢の婚約者は黒鷲騎士団に在籍している帝国騎士のブラウンフェルト卿グスタフ・ヒルデブラント殿で、私ではない。私が案内して誤解を招いては問題だろう」
園丁は辺境伯令嬢に目を向け、ヒルデブラントの言いたいことを察した。
「……それはそうですね。それではこちらのお方の婚約者は不在だったということでしょうか?」
「騎士団で確認した結果、彼は休日だった」
「そういうことでしたか。閣下、辺境伯令嬢。申し訳ありません」
園丁は話を切り上げ、一礼する。
入れ替わるように別の園丁が来た。
「閣下。ご休憩はどういたしましょう? 休園日ですから、普段通りのものは準備できかねますが……」
「そちらで構わない。できる範囲で頼むよ」
ヒルデブラントはそのまま対応していく。
「畏まりました。それでは四阿の一つを準備いたしましょう」
ヒルデブラントは考え込む。
「すまないが、休憩場所を四阿から大回廊園亭にできるか?」
「そちらは確認してみます」
「よろしく頼む」
園丁は休憩場所の確認に向かった。しばらくの後、園丁が戻ってくる。
「閣下。大回廊園亭、準備可能です」
園丁が言い終えると同時に座り込む。
ヒルデブラントは園丁を慰労する。
「無理を申した用ですまない」
園丁はヒルデブラントを見上げた。
「いえ。閣下がお持ちの特別許可証のおかげにございます。そちらの効果が絶大でした」
「そうか。訳に立ったようで何よりだよ」
ヒルデブラントは遠くを見る。
園丁は移動用馬車の手配に向かい、席を外す。
もう一人の園丁が庭園を散策していたホーエンブルク伯爵と伯爵夫人に声をかける。
休憩場所に移動することを告げ、馬車止めに向かう。
ヒルデブラントたちは移動用馬車に乗り、目的地に向かう。
細長い建物が見えてきた。
皇帝の庭園に幾つかある四阿の一つ。
大回廊園亭――――。
総二階の建物が丘の上に鎮座している。
次は第23話『グランツフェルト辺境伯令嬢エルネスティーネと大回廊園亭』のサブタイトルで投稿済みです。
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次は下記のサブタイトルを予定しております。
▶第23話
『グランツフェルト辺境伯令嬢エルネスティーネと大回廊園亭』
(辺境伯令嬢の兄ギーゼルベルトが大回廊園亭を薦めました)
▼第15話 → 第16話 → 第23話 → 第24話
『グランツフェルト辺境伯令嬢エルネスティーネとブラウシュタイン公爵家』
(話数変更,新規追加/庭園を散策していた辺境伯令嬢が遭遇したあるハプニング)
▼第24話 → 第25話
『グランツフェルト辺境伯令嬢エルネスティーネとブラウシュタイン公爵令嬢』
(新規追加/公爵家での出会い)
だんだんと長くなる怪が常駐しており、話数が増えていく怪も出没していますm(_ _)m。
混乱している話数の訂正はそのうちしますm(_ _)m




