第 17話 グランツフェルト辺境伯令嬢エルネスティーネが貰った騎士の小箱
本文が中途半端に止まっている部分と入力時の誤記、気になる言い回しなどがありましたので修正しつつ、本文の改稿をしました。
この改稿による大きな変更はございません。
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第16話で予告の第17話『グランツフェルト辺境伯令嬢エルネスティーネの騎士団見学と庭園散策』ができましたので、新規で割り込み投稿します。
長くなってきたのでここで分割し、サブタイトルを『グランツフェルト辺境伯令嬢エルネスティーネの騎士団見学と庭園散策』から
『グランツフェルト辺境伯令嬢エルネスティーネが貰った騎士の小箱』へと変更しました。
黒鷲騎士団、応接の間。
ギーゼルベルトは当時を思い出しつつもルーカスとヒルデブラントに目を向けていた。
「当時、婚約者に会いに向かった妹が夕方になっても戻らず、行方の分からないままでした」
ギーゼルベルトはしばらく沈黙する。
「父には残ってもらい、私は妹を探しに向かいました。婚約者のブラウンフェルト卿を探しましたが、控えの間に彼の姿はなく。彼の友人に声をかけるとすでに彼は帰宅した――と、言われてしまい、消息が途絶え途方にくれました。仕方なく、一度父の元に戻りました」
ギーゼルベルトは呼吸を整えた。
「行方の分からなかった妹が戻ってきたのはその日も遅い時間でした」
「すまない」
ヒルデブラントも当時を思い出し、ギーゼルベルトに声をかける。
「こちらも保護した小さな令嬢の身元確認に手間取ってしまい、親元に戻すのが遅くなった」
ヒルデブラントはギーゼルベルトに向き合う。
「閣下。公爵閣下より父に庭園で迷子になっていた令嬢を送り届けるのが遅くなって申し訳ないと丁寧な謝罪を受けました。何より妹が無事に戻ってきたので構いません」
「私も気になっていたことを話せて良かったよ」
ヒルデブラントはギーゼルベルトに告げ、肩の荷を下ろす。
ギーゼルベルトは外れた話を戻し、続けた。
「あの当時、妹が騎士の小箱を大事に抱えていたのを覚えています。私は今まで婚約者のブラウンフェルト卿から贈られた小箱だと思っていましたので、ずいぶんと立派な小箱を贈られたのだと……思っておりました」
ギーゼルベルトは当時、妹が持つ小箱と作った小箱を比較したことを思い出す。
「当時、妹が貰ってきた騎士の小箱は私が騎士団で頼んだ騎士の小箱とは作りが違ったのです。同じ騎士の彼が作った小箱と比較してしまい、ずいぶん気落ちしました」
ギーゼルベルトは思い出していくうちにだんだん気が滅入ってきた。
「ギーゼルベルト。騎士になった記念から奮発して特別注文品の小箱を頼んで婚約者に贈る者もいる。ブラウンフェルト卿が贈っていても不思議ではないし、ありがち間違いでもない」
「…………そうですね」
ルーカスはギーゼルベルトを諭す。
「ただ、それとは別に剣の房を受け取った騎士がその返礼として、騎士の小箱を贈ることもある」
「そうですね。私も剣の房をいただいた際に返礼として小箱を贈ったこともあります」
ルーカスはヒルデブラントに目を向け、ため息を吐いた。
「ヒルデブラントのように剣の房を受け取った返礼で小箱を贈ったのは良いが、贈った主が誰かまで知らないことも稀にある」
「そういうことあるのですね」
ギーゼルベルトは相づちを打ちつつ、頷く。ヒルデブラントに目を向ける。
ルーカスはギーゼルベルトに新たな情報を与える。
「ギーゼルベルト。ブラウンフェルト卿が根負けした小箱、おそらく辺境伯令嬢が受け取った騎士の小箱はからくり仕掛けのある帝国騎士の小箱だったのだろう」
「…………帝国騎士の物ですか?」
ギーゼルベルトは考え込む。
「剣の房や小箱にヒルデブラントが関わっているなら、その小箱はブラウンフェルト卿のものではなかろう。帝国騎士の小箱と騎士の小箱を比較しても仕方がない」
「……そうですね」
ギーゼルベルトはルーカスの言葉を聞き、思い当たることがあった。
「ギーゼルベルト。確認のために訊くが、妹君が貰った小箱を開けようとしたことはあるか?」
「いいえ。私はありませんが……」
ギーゼルベルトは不意にあることを思い出した。
「…………そういえば、騎士の小箱について妹の婚約者ブラウンフェルト卿が訪ねて来たことがありましたね。妹が不在だったので、私が対応しました」
ギーゼルベルトとルーカス、ヒルデブラントの会話を聞いていたエルネスティーネは思わず、割って入る。
「お兄様! 失礼しますわ」
「エ、エル?」
ギーゼルベルトは妹のエルネスティーネに目を向けた。
「お兄様」
エルネスティーネはギーゼルベルトの前に立ち、じっと見つめる。
ヒルデブラントとルーカスはグランツフェルト兄妹を静観していた。
「なんだい? エル」
「ヒルデブラント様はどのような用件でしたの?」
エルネスティーネはギーゼルベルトを見上げ続ける。
ギーゼルベルトは圧されていた。
「私が不在の時に訪ねていらしたこと、教えてくださりませんでしたよね?」
エルネスティーネは兄ギーゼルベルトを見据える。
ギーゼルベルトはエルネスティーネに告げる。
「エ、エル。……忘れていたんだよ」
「お兄様!」
エルネスティーネとギーゼルベルトの間に気まずい雰囲気が漂う。
ギーゼルベルトは困惑する。
「すまない。エル、ブラウンフェルト卿が来たのはつい最近の話ではなく、もう数十年も前のことだよ」
「……お兄様のいじわるです」
「すまない。エル」
エルネスティーネは兄のギーゼルベルトから視線を外し、肩を落とす。
ギーゼルベルトは妹のエルネスティーネに婚約者のことを話す。
「エル。ブラウンフェルト卿が訪ねてきた理由は渡した小箱をもう一度見たかったそうだよ」
「小箱?」
「あぁ。エルが不在だったからエルの侍女にエルが貰ったという小箱を持ってくるよう依頼し、持ってきてもらったよ」
エルネスティーネはギーゼルベルトの言葉を聞き、兄のギーゼルベルトを見上げる。
「お兄様。そちらはしまっていたはずの小箱が机の上に置いてあった時のことでしょうか?」
「あぁ、その時だと思う。ブラウンフェルト卿が妹に渡した小箱を見たいと申し出があり、確認のために応接の間で見て貰った」
ギーゼルベルトは当時を思い浮かべつつ、話を続けていく。
「受け取ったブラウンフェルト卿は小箱をじっと眺めてから小箱を開けようと試み、しばらく格闘していたよ」
エルネスティーネは兄のギーゼルベルトを見上げ、訊く。
「お兄様。小箱は開いたのですか?」
「いや。粘っていたが、開かなかったようだ。肝心の鍵を忘れたとかいって、その日は帰ってしまったよ」
「……帰られたのですか?」
「あぁ。それ以降、ブラウンフェルト卿が小箱のことを聞いてくることはなかったな……」
ギーゼルベルトは考え込み、思い出していた。
「お兄様。その時、小箱を落としませんでした?」
エルネスティーネは再び、ギーゼルベルトを見上げる。
「いや、私は落としていないよ」
「机にあった小箱。小さなキズがいくつもついてましたが…………」
エルネスティーネは事実を告げた。
「……すまん。ブラウンフェルト卿が小箱と格闘していたようだ。おそらくそこでキズがついたのだろうな……」
「お兄様。これから小箱を持ち出した際はその時に教えてくださいませ」
「すまない。今後、気を付けるよ」
エルネスティーネはギーゼルベルトを凝視した。
「お兄様」
「なんだい?」
「小箱は一つではなく、三つありましたのよ」
エルネスティーネはギーゼルベルトに告げる。
「他に、二つもあったのかい?」
「えぇ。引き出しにはお兄様が侍女に持ち出してもらった小箱の他に意匠の異なる小箱が二つありましたの」
「そうか……、エル。もしかしたらブラウンフェルト卿にもらった小箱はそちらだったのか?」
エルネスティーネは考え込む。
「お兄様。どちらも本人から直接いただいていないので分かりませんわ」
「分かった」
ルーカスはグランツフェルト辺境伯家の兄妹、ギーゼルベルトとエルネスティーネの会話が途切れた機会を見計らい、声をかけた。
「ギーゼルベルト。良いか?」
「閣下。何でしょう?」
ギーゼルベルトは妹のエルネスティーネからルーカスに目を向ける。
ルーカスはギーゼルベルトとそばでこちらを見ている辺境伯令嬢のエルネスティーネに気づく。
「ギーゼルベルト。騎士と帝国騎士に叙任される前に小箱の希望を聞かれただろう?」
「はい。希望を訊かれましたので、用紙に記入しました」
ルーカスはある条項を思い出す。
「希望を出したのなら、キズのついたという小箱を修繕に頼んでみると良い。特別注文品には購入後の商品保証もついているはずだから、購入店舗に持っていけばキズの修繕くらいは可能のはずだ。妹君が貰った小箱が婚約者のものだとしても、ヒルデブラントの贈った小箱でもそれが可能のはずだ」
「家に戻ったら確認してみます」
「そういえば、卿は騎士の小箱や帝国騎士の小箱を作った際にどこに頼んだ?」
ギーゼルベルトは唐突な質問に戸惑う。
「え? あ、はい。ビーレフェルト商会です」
「そこなら大丈夫だろう。ヒルデブラント」
ルーカスはこんどはヒルデブラントに声をかける。
「ルーカス?」
「ヒルデブラントの小箱もそこの商会に頼んだものだろう?」
「あぁ。公爵家でもそちらを使っている。箱の底には商会印が刻印されているから、私のものだった場合は妹君に確認してもらえば良い。私が贈った物なら、そこで細かなキズの修繕は頼める」
「ありがとうございます」
ギーゼルベルトは安堵した。
「小箱には種類があってだな」
ルーカスは思い出し、補足していく。
「小箱の全部が保証されるという訳でもない。入手しやすい価格帯で量産されている小箱は保証期間も十年単位という」
「」
「販売時のキズや加工時のキズなどの理由で安価になっている廉価品の小箱はほとんど保証がない。仮に保証がついてもその期間は短く、数年で終わるという」
「特別注文品は帝国騎士が細かく希望を出すことができるため、値段が張ることが多い。保証期間も数段違う」
「閣下?」
ルーカスは説明を続ける。
「鍵に関しても幾つか選べる。鍵穴が外から見え、普通に鍵を差し込んで簡単に開くものから、鍵穴が箱の中に組み込まれ隠れているもの。いろいろと細工のあるものまである。からくりの難度が高くなるほど、構造は複雑で精巧な細工になる。騎士の小箱と違って、帝国騎士の小箱は開け方が特殊な物が多い。普通に鍵を差し込んだだけでは開かないぞ」
ギーゼルベルトは驚く。
「そうですか?」
「あぁ。ヒルデブラントが渡した帝国騎士の小箱は開封するのが難しい型のものだ。蓋を開けるにはからくりを正しい手順で正確に動かし、二つの鍵を使う。一つの鍵では開かないし、持ち主と贈った相手の二人が持つ主鍵と小箱の依頼主が持つ予備鍵以外には開封できない仕組みになっている」
ギーゼルベルトはルーカスの言葉を聞き考え込む。頭を抱え、悩む。
「もしかしなくとも妹が持っている帝国騎士の小箱は、私たちには開けられないということですか?」
「そういうことになるね」
ルーカスが認める。
「高難度のからくり仕掛けがある帝国騎士の小箱は開封手段が一つではない。幾つかの方法はあるが、鍵を使う場合は二つ揃わないと開けられない。不正に入手した鍵では開かない仕組みになっている」
ギーゼルベルトは改めて確認する。
「そうでしたか。ブラウフェルト卿が妹に贈った帝国騎士の小箱は、妹の婚約者ブラウンフェルト卿でも開けられないということですか?」
「あぁ、もちろんだ。ヒルデブラントの小箱にはブラウシュタイン公爵家の紋にヒルデブラントの個人の紋が小箱のどこかに刻まれている。他人が小箱を開封できない理由はそこにある」
ルーカスは即答し、ギーゼルベルトを諭していく。
「知っていると思うが、帝国騎士の小箱は帝国騎士本人から婚約者本人に贈られるのが一般的だ」
「そうですね」
「婚約者が決まっていない場合は、帝国騎士が婚約者にと考えている令嬢に贈る訳だが……」
ルーカスは続ける。
「基本的には令嬢本人に直接手渡す前に、保護者や後見人に面会予約を取り、帝国騎士の小箱を持って令嬢と婚約をしたいと打診することから始まる」
「そうですね。父がそういう手順を踏んでました」
ギーゼルベルトは父の辺境伯が騎士の小箱と絵姿釣書を準備していたことを思い出す。
「申し込まれた側の家はその婚約の申し出を受け入れる場合にだけ、令嬢との面会させる機会を設ける」
「そうでしたね」
ホーエンブルク伯爵も頷き、答える。
「そこで令嬢が断ることなく小箱を受け取ると両家が婚約が整ったことを正式な書類を宮内省に提出し通すことで公に認められるわけだ」
「保留にする場合は一定の期間を設ける。ただ、断る場合はなるべく早いほうが良いと聞きますよ」
「そういうものですか?」
ギーゼルベルトは手順は知るが、細かい事情までは分からない。
「そうですね。遅くなればなるほど持ち込まれた婚約の話を断りづらくなりますから、期日まで待つ必要はない」
ホーエンブルク伯爵も加わる。
「縁談を断る場合、持ち込まれた騎士の小箱も忘れずに相手に返却したほうが良いですよ」
ルーカスは小箱について補足する。
ホーエンブルク伯爵夫人が疑問を訊く。
「贈った物は戻されても困るのではありませんの?」
ホーエンブルク伯爵夫人の疑問に答えたのはヒルデブラントだ。
「ホーエンブルク伯爵夫人。縁談を申し込む際に使われる小箱は契約が成立した場合に、婚約の証になります。婚約者に対して贈られる物のなかでもとても重要なものですよ」
ヒルデブラントが伯爵夫人に告げ、ルーカスが補足する。
「縁談を断る場合は小箱を忘れずに返却すると良いでしょう」
「返却しないと婚約が成立してしまうことになるのですのね」
「そういうことです。そういった意図がなくとも贈られる小箱の取り扱いには注意が必要です」
ルーカスは言い終え、ヒルデブラントをみる。
「まぁ、ヒルデブラントのように剣の房の返礼として贈られた小箱という場合もあります。こちらの場合、返礼品という側面が強く、縁談の時のような強制力はありません」
ルーカスは言い終える。ヒルデブラントに目を向け話題を変えた
「なぁ、ヒルデブラント」
「何だい? ルーカス?」
「そういえば、帝国騎士の小箱以外になにか変なもの渡さなかったか?」
ルーカスはヒルデブラントに訊く。
ヒルデブラントはルーカスを見据え、聞き返す。
「……変なものとは何だよ?」
「変なものだ」
「小箱以外に贈った物はないが……」
ヒルデブラントはしばし、考え込む。
ルーカス、ギーゼルベルト、ホーエンブルク伯爵夫妻も黙していた。
ルーカスはおもむろに話題を戻す。
「ギーゼルベルトの話では、グランツフェルト辺境伯令嬢と婚約者ブラウンフェルト卿がギクシャクしている理由。遠からずともヒルデブラントが関係していないか?」
「私が、かい?」
ヒルデブラントは思わず、声に出る。
「あぁ。ブラウンフェルト卿は自分が贈った小箱を確認しようと思い、自分以外の誰かが贈った帝国騎士の小箱を見た訳だろう?」
「……そうだな」
「ギーゼルベルトが見た通り、箱を開けようとしてまでその小箱を贈った主を確認しようとしたことになる訳だ」
ヒルデブラントは沈黙したまま、聞いていた。
「公爵家の紋と個人の紋、表には入っていないよな? ヒルデブラント」
「ルーカス。返礼で贈る小箱には目立たない位置に従属称号の紋を刻印している。従属称号の紋まで把握していなければ、個人の特定には至らない」
「まぁ、そうだな」
ヒルデブラントは再び考え込む。
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ヒルデブラントは思い出したことがある。
「そういえば、保護した際に小さな令嬢のクレイトが気になって公爵家の侍女に着替えを頼んだくらいだよ」
「……着替え?」
「保護するために抱え上げた訳だが、クレイトに染みや破けた跡があった。身に付けている間に経年変化したものか、故意につけられたものか分からない。ただ、そのままの姿で保護者のもとに返す訳にはいかないだろう」
「それもそうだな」
ヒルデブラントは続けた。
「当時、公爵家から持ってきた幾つかの箱から令嬢に似合うものを選んで、それに着替えてもらった。私としては小さな令嬢に似合うものは選んだが、幼い令嬢のために誂えたものではないから、これは贈ったうちには入らないとは思うぞ」
ルーカスはヒルデブラントに詰め寄る。
「なぁ、ヒルデブラント」
「なんだ?」
「誂えた本当の理由は?」
「婚約者の誕生祝いに贈ろうと誂えたものだよ」
ルーカスはため息を吐く。
「ヒルデブラント……。理由が不味いだろう」
ヒルデブラントはルーカスを見据えた。
「ルーカス。確かにあのクレイトは婚約者のために誂えたものだが、実際には婚約者に贈らなかった。日常に着てもらえるように質を抑えてたくさん作ったものの、一つだ」
ギーゼルベルトは聞き捨てならないことを聞き、ヒルデブラントに突っ込む。
「あの……。質を抑えていたというのは本当にすか?」
「あぁ、普段に着て貰えるように作ったものだよ」
「本当に質を抑えていたのですか?」
ギーゼルベルトは確認のために同じことを訊く。
「あぁ、抑えていたよ」
ヒルデブラントは言い切った。
ギーゼルベルトはため息を吐く。
「閣下。その時に妹が着てきたクレイトは考えられないほど上質なものでした。驚いた父が[剣の房の返礼としては破格で上質のものだった。どうしたらいいだろう……]とたびたびぼやいているのを見かけました」
ギーゼルベルトは突っ込み続けた。
「それはすなまい」
ヒルデブラントは昔の落ち度に気づく。
「父が修繕したクレイトを辺境伯家に届けたときに、父が私が辺境伯令嬢の婚約者に名乗り出たいという意図はないと辺境伯閣下に申し出ているはずだよ」
「そうでしょうか?」
「私は今の今まで剣の房の作り手を知らなかった訳で、父にも作り手を探すなとも忠告されている」
ヒルデブラントは言い終え、沈黙する。
ホーエンブルク伯爵夫人はヒルデブラントに目を向ける。
「ブラウシュタイン公爵家の財力は、辺境伯令嬢の婚約者ブラウンフェルト辺境伯家の婚約者に対する贈り物を凌駕したというところなのでしょう」
「とりあえず、そういうことになるだろうな」
ルーカスも頷く。
ホーエンブルク伯爵夫人はヒルデブラントに目を向け、婚約者を思う。
「ブラウフェルト卿の婚約者はそういった贈り物とたくさんいただいているのでしょうね」
「…………私としては贈り物は贈りたいと思っているし、贈りたい」
ヒルデブラントは気まずいまま、言葉を続けた。
「受け取ったモルゲンネーベル辺境伯閣下より、幼いうちに高価なクレイトや宝飾品をたくさんいただいても使い道があまりないと父が苦情めいた苦言を受けてね。できれば今後は高価な贈り物はできるだけ控えて欲しいと懇願されてしまっていて贈りたくても贈れない」
「そうでしたの……」
ホーエンブルク伯爵夫人はヒルデブラントの言葉に驚く。思いもしない事実に言葉が出ない。
夫人はしばらく沈黙し、ヒルデブラントに質問をする。
「……どのようなものを贈られているのです?」
「どのような?」
ヒルデブラントは不意の問いに考え込む。贈った物を思い出しながら、品目を上げていく。
「…………そうですね。飾りのついた小物入れ、物語の書かれた本や栞、書翰箋や筆記具などです。高価なものは止められているので、エル……」
ヒルデブラントは婚約者の名を出そうとしたが、目の前にいたグランツフェルト辺境伯令嬢と同じ名だということを思い出し、言い直す。
「……いえ。私の婚約者に似合いそうな物や使ってもらえるような物を贈っていますよ」
「そうでしたのね」
ホーエンブルク伯爵夫人は納得する。
次の第18話は投稿済みです。
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次の第18話は
『グランツフェルト辺境伯令嬢エルネスティーネと黒鷲騎士団の見学』
その次の第19話は
『グランツフェルト辺境伯令嬢エルネスティーネと三つの騎士団』
書いていくと話数の増えると長くなっていく怪奇が出没しているため、話数が……。
え~っと思ったよりも割り込み分が長くなっていますm(_ _)m。
混乱している話数の訂正は割り込み投稿を終えてからにしますm(_ _)m




