第 11話 グランツフェルト辺境伯令嬢エルネスティーネと婚約者
第2章追加による第10話の後書きで予告していた新規追加分の第11話ができましたので投稿します。
サブタイトルは『グランツフェルト辺境伯令嬢エルネスティーネと婚約者』です。
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いや、その……。
中途半端な部分があることに投稿時に気づくという……( ノД`)…。
本文を見直して言い回しを修正や追加などを行い、改稿しました。
グランツフェルト辺境伯家。
辺境伯は執務室で書類に目を通し、仕事をしていた。絵姿釣書の送り間違いに気づく前のこと。
辺境伯にはイルミーナ・ヴァレンティーネの他に婚約者のいる娘が、もう一人。リヒャルダ・エルネスティーネという。
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エルネスティーネは侍女を私室に呼ぶ。前の日に選んでいた衣装を身にまとう。出かける準備を終え、逸る気持ちを押さえていく。
付き添いにはホーエンブルク伯爵夫人が選ばれ、事前に出かけることを伝えられていた。
ホーエンブルク伯爵夫人が伯爵家の馬車で辺境伯邸にやってくる。
応接の間に通された伯爵夫人は待つ。
辺境伯夫人に挨拶をし、辺境伯令嬢の準備が終えるのを待っていた。
侍女は付き添いとなるホーエンブルク伯爵夫人が到着し、辺境伯令嬢の準備ができたことを確認する。家令に婚約者のブラウンフェルト辺境伯家に出かけることをそれとなく伝えてあった。
辺境伯夫人は家令を呼ぶ。
家令は御者に馬車を整えさせ、玄関前に回すように指示を出す。
辺境伯夫人が姿勢を正し、ホーエンブルク伯爵夫人に向く。
「ホーエンブルク伯爵夫人。申し訳ないけど、娘のことを頼むわね」
「畏まりました。辺境伯夫人に頼っていただけるだけでありがたいことです」
夫人の穏やかな雰囲気が続く。
扉の音が鳴り、家令が姿を見せる。
「夫人。お嬢様と馬車の準備が整いましてございます」
辺境伯夫人と伯爵夫人の二人は立ち上がり、応接の間から。
辺境伯令嬢が待つ玄関の間に向かい、表に出る。
辺境伯家の使用人が並んでいた。
「行ってらっしゃいませ。お嬢様」
「行ってきます」
辺境伯令嬢エルネスティーネは侍女のクラーラと付き添いのホーエンブルク伯爵夫人を連れ、馬車に乗り込む。
御者は周りを確認してから馬車の扉を閉め、車輪止めを外した。御者席に座ると手綱を操り、馬車を走らせていく。
四人を乗せた馬車は婚約者が待つブラウンフェルト辺境伯家に向かう。
グランツフェルト辺境伯家の馬車は街道を東に、ブラウンフェルト辺境伯家に向け走らせていた。
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グランツフェルト辺境伯家の馬車は問題なく進み、正面にブラウンフェルト辺境伯家が現れる。
辺境伯家の紋章が刻まれた門が見え、まもなく到着しようとしていた。
「伯爵夫人、お嬢様。まもなく到着です」
御者は辺境伯家の門で馬車を停める。
ブラウンフェルト辺境伯家では門衛が近づく馬車の来訪者を確認していく。
「どちら様でしょうか?」
馬車の小窓が開き、伯爵夫人が顔を見せる。
「私はグランツフェルト辺境伯夫人よりお嬢様の付き添いを任せられた者です。本日は辺境伯令嬢のエルネスティーネ様をお連れいたしました」
門衛は来訪予定者表を確認をする。
「ヒルデブラント様の婚約者、グランツフェルト辺境伯家の馬車ですか」
「はい。本日婚約者のご令息が休日というお話でしたので、お嬢様を連れ訪問いたしました」
夫人の言葉を聞きた門衛は気まずそうな顔を見せた。
「ホーエンブルク伯爵夫人、本日はお越しいただき誠にありがとうございます」
「こちらこそです。ご令息はご在宅でしょうか?」
「……誠に申し訳ありません」
門衛が重苦しい雰囲気を醸し出している。
「ヒルデブラント様は少し前に騎士団から急な呼び出しがあり、そちらに向かわれました」
「そうですか、……それは残念ですね」
門衛がホーエンブルク伯爵夫人に声をかける。
「ご令息、本日は戻りになりますか?」
門衛はしばしの間、沈黙をする。
「ヒルデブラント様より伝言を預かっておりまして、本日は遅くなるとのことです」
「そうですか。ご令息がお戻りになるまで屋敷で待つことはできますか?」
ホーエンブルク伯爵夫人は辺境伯令嬢エルネスティーネのために訊く。
門衛は辺境伯邸に確認をする。
「お待たせしました。確認しましたところお坊っちゃまの正確な帰宅時間が不明であり、確実にお戻りになる時間をお伝えできないとのことです」
「左様にございますか?」
「はい。当家といたしましてもいつお戻りになるか分からないお坊っちゃまのために、貴家のお嬢様を夜分遅くまで引き留めて置くわけには参りませんし、こちらでお待ちいただくことをお勧めできかねます」
門衛は辺境伯家の事情も言い切った。
ホーエンブルク伯爵夫人は沈黙を守る。
しばらくして、門衛が言葉を紡ぐ。
「こちらとしても辺境伯令嬢のご来訪を心よりお待ちしておりました。誠に残念ではありますが、本日のところは機会を改めていただけませんでしょうか?」
ホーエンブルク伯爵夫人は門衛の言葉を受け、改めて辺境伯家の都合も知る。
「そういうことなら仕方がありませんわね……」
「本日は申し訳ありませんでした」
「次を楽しみにしましょう」
「お気をつけてお帰りください」
門衛は丁寧に務めていた。
ホーエンブルク伯爵夫人はグランツフェルト辺境伯家の馬車に戻る。
しばらく考え込み、御者に指示を出す。
御者は窓を閉めた。馬車止めを回収し、御者席に戻る。手綱を操る御者は馬車を出す。ブラウンフェルト辺境伯家の敷地内にある馬車の回転場所を使い方向を変えた。門を出ると街道を西に進む。
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御者は婚約者が不在のため、グランツフェルト辺境伯家に戻ろうと街道を走らせていた。
しばらく馬車の揺れる音が車内に響く。
ホーエンブルク伯爵夫人は辺境伯令嬢のエルネスティーネに声をかけようとした。
「エルネスティーネお嬢様」
声をかけられたエルネスティーネは顔を上げ、伯爵夫人に目を向けた。
「ホーエンブルク伯爵夫人。本日は私のためにお付き合いいただき、ありがとうございます」
エルネスティーネは前に座るホーエンブルク伯爵夫人に礼をいう。
「良いのよ。辺境伯夫人の頼みですから」
ホーエンブルク伯爵夫人は辺境伯令嬢の顔色を窺う。
「今回も不在でしたわね」
「…………そうですね」
エルネスティーネは意気消沈している。
「確か、この間は外せない案件ができて外出しているでしたわね」
「はい」
「その前は……急な用向きでお出かけなさっているでしたわね」
「えぇ、その前もその前も会えませんでした」
エルネスティーネは肩を落とし、沈黙する。
こちらも違う理由から婚約者に会えずにいた。
侍女のクラーラは声を挙げ、憤慨する。
「あちらから呼び出しておいて、お嬢様が訪ねると肝心な婚約者の姿がいないのです!」
侍女のクラーラは伯爵夫人とエルネスティーネを交互に見た。
ホーエンブルク伯爵夫人は侍女のクラーラを見据えていく。
「今回は騎士団からの呼び出しという、断れないもの。ある意味、仕方がありませんわ……」
ホーエンブルク伯爵夫人もしばらく考え込み、言葉を紡ぐ。
「伯爵夫人。最近こういったことが増えています」
「……そうなのよね。ただ、毎回となると何か事情があるのではと少々勘繰りを入れたくなりますわね――――」
ホーエンブルク伯爵夫人はため息を吐く。
しばらくの間、沈黙が訪れた。
侍女のクラーラは重苦しい雰囲気にホーエンブルク伯爵夫人と辺境伯令嬢の二人に声をかける。
「伯爵夫人、お嬢様。これからどういたしましょう?」
侍女のクラーラはこれからの予定が気になっている。
ホーエンブルク伯爵夫人は辺境伯令嬢に伺う。
「どこか行きたいところはあるかしら? それとも辺境伯家に戻りますか?」
エルネスティーネは顔を上げ、伯爵夫人と侍女を交互に見ていく。しばらく考え込み、悩む。
「お嬢様。お嬢様が行きたい場所はございませんか?」
侍女のクラーラも訊く。
エルネスティーネは思い悩み、小さく呟く。
「……お花」
エルネスティーネは顔を上げた。
「伯爵夫人が話題になさっていた庭園が見たいです」
「例の庭園ですね」
「はい。見ること、できませんか?」
ホーエンブルク伯爵夫人はエルネスティーネの小さな願いを聞き入れる。
「分かりました。庭園には心当たりがございますので、本日は散策に参りましょう」
「伯爵夫人。私の要望を聞き入れていただき、ありがとうございます」
ホーエンブルク伯爵夫人は御者に行き先を変更する指示を出す。
御者は伯爵夫人から目的地を聞き、馬車の進路を変える。
次の第12話は新規で追加予定の
『グランツフェルト辺境伯令嬢エルネスティーネと黒鷲騎士団』
(呼び出された婚約者は?)
となります。
話数とサブタイトルはもしかしたら変更になるかもしれません。




