7/8
あなたと見たかった
いい匂いがする。
視界には一面の赤と緑。
まるで楽園のように思えた。
彼との思い出で最初に辿り着いたのは、
バラの有名な公園だった。
付き合って初めてのデート。冬場でも楽しめる所を探した記憶は今でも鮮明に覚えている。
1年中バラが咲くと聞いて来たこの公園
流石に冬場は咲いていなかったが、
それでも彼と居れるだけで楽しかった。
緊張もしたりして、デートを満喫していた。
その後、彼は私に
「今度は満開の時に来よう」
そんな事を言って笑いかけてきたっけ。
来たよ満開の時に。隣にあなたは居ないけど
まったく、出来もしない約束はしないでよ。
「あなたと見たかった。」
そっと吐いた言葉は、風によってかき消される。
私はまた、思い出を辿るため足を踏み出した。