表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

未確認歩行物体

 その女性はなにやら、おかしなものを頭につけていた。


女性の頭よりもひとまわり大きく、水色の丸い円柱である。遠目からみると非常に滑稽である。近寄ってみると、それはゴミ箱であることがわかった。水色のゴミ箱の下部がヘルメットになっており、そのヘルメットからは黒い皮のベルトが付いていた。ベルトを頭の下でとめることにより、頭上にゴミ箱を固定しているのだ。それにしても意味がわからない。私は毎日この時間に中学校から帰っているが、こんな人は一度も見たことがない。夕暮れ時の商店街はそれなりに人が往来している。周囲の人は気付いていないのか、それとも無視しているのか。まったく気にも留めていない。好奇心に負けた私は、思い切ってその女性に声をかけることにした。


「すいません。」

女性が振り向く。

「はい。」

あまりに自然であるため、私は驚いた。

「その頭の上にあるものは何ですか。」

女性は一瞬止まり、困ったような顔を浮かべながら呟いた。

「今、少し時間ありますか。」

学校からの帰りなので、現在特に用は無い。優しそうな女性だったこともあり、少しならば大丈夫という旨を伝えた。

「そこの喫茶店に入ろうか。」

並んで歩き出したとき、なんだか気恥ずかしかった。周囲の人は私達のことをどのように見ているのだろう。年齢の差から、もしかしたら姉妹と思われているかもしれない。私は一人っ子であり、兄弟や姉妹に憧れている。しかし、頭にゴミ箱を乗せている姉は嫌だなと感じた。


二人並んで喫茶店に入店する。入店する際に入り口でゴミ箱がぶつかり、女性がよろめいた。困ったようにはにかみ、奥の席へと進んでいく。それをみて、ゴミ箱は実際に存在しているということに軽い驚嘆を覚えた。


「あなたもお気づきの通り、私は宇宙人です。」

着席した瞬間、女性は口を開いた。

いやいやいや、宇宙人って何?こっちはゴミ箱の話を聞きたかったんだけど。

「今、この宇宙にはゴミが増え続けています。」

おっ、それっぽい話が来た。

「地球人は宇宙的に見てもエコの意識が強く、優秀と言えます。」

うん。うん?

「私たちは宇宙船宇宙号の住人です。一人一人がゴミ問題に取り組むべきなのです。」

カッコイイことを言うが滑稽だ。なんでゴミ箱頭に乗せてんだ!そこの説明!

「だからあなたも、地球人代表としてゴミ問題を常に意識してね。私が言いたいのはしょれだけ。」

噛んだ!しょれだけて!いや、それだけて!ゴミ箱の説明!


そして女性と別れ帰路につく。

あの人はなんだったのか。かっこいいこと言ってたけど。

宇宙人って不思議。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 面白い、わかりやすい。遊び心がひじょーに良い作品だと思います。
2009/02/23 21:31 退会済み
管理
[一言] すらすら〜っと読めてあっさりした感じでした。 面白かったです♪
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ