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確かにあった、あの夏の日。

作者: 白胡麻もち

 目の前に河童がいた。

 河童が埠頭(ふとう)の縁に座り、海を眺めながら水色のアイスキャンディーをペロペロと舐めている。


 何を言っているんだと、そう思っただろう。

 僕自身、いま見ているものが現実なのか、それとも幻覚なのか判断できずにいる。つまりはそれだけリアルなものとして、目の前にあるというわけで。


 遊びに行く途中であることも忘れ、目に入れた瞬間の変な姿勢のままで、二分近くは銅像のように固まっていた。その間にも河童は薄紅色の舌を伸ばし、手元のアイスを一心不乱に舐め続けている。


 確かあれは、この近くの駄菓子屋で買える一本六十円のアイスキャンディーだ。

 いちご、メロン、オレンジ、ぶどう、レモン、サイダーと、六種の味がある。あれは水色だからサイダー味だろう。


 しかし、河童が買い物を? まさか。いくら駄菓子屋のウメばあちゃんでも、あんなのが買いに来たら悲鳴を上げるだろう。ボケが進行してなければ、の話だが。


 少し冷静さを取り戻してきたお陰でようやく体の強張りが解けたので、すり足で近付いてみる。ビーチサンダルだから足が滑って上手くいかない。

 足下で砂利が擦れる音が鳴っているが、辺りに響き渡る蝉の鳴き声に掻き消されているのか、河童が気付く様子はない。これ幸いと距離を縮めていく。


 緑色のザラザラとした肌、頭に乗ったつるつるのお皿。鋭い爪の生えた手足。背中には亀のようなデカい甲羅。典型的な河童スタイルだ。

 どう見ても仮装には見えないし、当然、着ぐるみでもない。


 何でこんな生き物が、此処にいるんだろう。

 この辺りは別に河童が出没する場所ではないし、そんな噂も聞いたことがない。海や川を渡って来たというのが一番自然な考えだが、だとしたら、どうしてこんな警戒心の欠片も無くアイスに夢中になっているのだろう。


 ごくりと喉を鳴らし、更に近づいてみる。

 すると、振り返った河童とバッチリ視線が合った。合ってしまった。

 その手には、すでにアイス部分が無くなった木の棒が握られていた。

 当たりだった。


「きゃあああああ!」


 およそ河童らしからぬ悲鳴を上げ、肩――肩なのか?――を震わせたそいつは、持っていたアイスの当たり棒を落とした。


「うわあああああっ!」


 河童の反応に驚いた僕も悲鳴を上げる。

 蝉よりやかましい、悲鳴のアンサンブル。


「「あああああああああああ――――っ、ああ、あ」」


 段々と両者の勢いが衰え、やがて完全に止まった。

 何故だか止んでいた蝉たちの合唱が、シンと静まった場を埋めるように、またジーワジーワと鳴き始めた。


「……こんにちは」


 そんなことを口にしたのは、河童だった。

 悲鳴を上げたのだから逃げてしまえばいいのに、律儀な奴である。


「こんにちは」


 礼儀に関しては人間として負けていられないので、お辞儀付きでそう返す。河童はぺこりと頭を下げ、くりくりの濡れた目でジッと僕を見つめた。


「人間さんですか?」


 それ以外に見えるんだったら大問題だ。そんな突っ込みを心の内で入れながら、小さく頷く。

 河童は「そうですか」とやや硬く返し、右手を胸に添えた。


「ぼくは河童です」


 見たらわかる、どう見ても河童のそれだ。この見た目で河童以外の生物だったら怖い。


「僕は、和田隼人(わだはやと)。この近くに住んでる」

「ハヤト君ですか。足が速そうな名前ですね」


 お世辞で言ってるんだろうが、残念ながら僕の徒競走の順位はいつも下から数えた方が早いので、本人にとっては地雷以外のなにものでもない。


「ここに住んでるの?」


 話題を逸らすために、先程から抱いていた疑問を口にする。

 河童は「いいえ」と首を振り、足下に落ちたままの当たり棒を拾い上げた。


「ぼくは旅河童です。日本中、あちこちを渡り歩いてます」


 そして拾い上げた棒を確認すると、「ああ、当たりだ」目を細めて嬉しそうにしながら、そっと握りしめた。まるで宝物を見付けた時のように。


「そのアイスはどうしたの?」

「これですか? これは、女の子に貰いました。チエちゃんといったかな。駄菓子屋の帰りだそうで、手にいっぱいお菓子が入った袋を提げていました」

「チエ? チエってもしかして、安藤チエ? 髪を両側で結んでて、前髪をオレンジ色のしましまのヘアピンで留めてる……」


 ジェスチャーを交えながら髪型を伝えると、河童は「そうそう、その子です」と声を弾ませた。


「ぼくが暑さにバテていたら、バケツに水を汲んできて掛けてくれたんですよ。善い子だったなあ。あまりに嬉しかったんで、あの子のことはよく覚えてます」


 その時の事を思い出しているのか、河童は目を閉じてうんうん頷いている。

 僕がなぜ、名前だけで判断できたのか。それは、此処が人口も少なければ若者も数えるほどしかいない、本土から離れた島だからだ。

 子供の数は、僕を含めて七人。そのうち女子は三人。だからその名は、安藤チエしか当てはまらない。


 しかし僕の印象からすれば、彼女は不愛想で誰とも口を利かず、いつも下を向いて本を読んでいるような子だった筈だ。

 いつだったか朝の登校中に見掛けたことがあるが、大人に挨拶されても小さくお辞儀をするだけで、他の子みたく声を張り上げて挨拶することも無かった。当然、僕に対してもだ。


 老若男女問わずそんな態度なので、例え相手が河童だとしても、彼女が必死になってバケツを運んで水を掛け、そのうえ自分のアイスを与えるなど想像もできない。


 もしかしたら、安藤チエ違いかもしれない。

 そう思ったが、同じ名前を持っていて、髪型もアクセサリーも同じというのはまず考えられないので、彼女自身であるという答えが一番自然だ。安藤チエは干乾びかけた河童のために必死になってバケツを運び、おやつに買ったアイスキャンディーを分け与える、そういう子なのだろう。


「あの安藤がねえ」


 意外だ。実は動物好きなのだろうか?

 河童が動物として分類可能なのかは、正直分からないが。


「ところで、ハヤト君はどこかに行く途中ですか?」

「あっ!」


 急に手に、水泳カバンをぶら提げていることを思い出した。

 そうだ、海水浴をする約束をしているんだった。

 出掛ける間際に確認した時計では、約束の時間まであと十分。家から海辺に辿り着くのは五分掛かり、その途中で河童を見付けてなんやかんやで、確実に集合時間は過ぎている。


「ごめん河童、僕、そろそろ行かないと」

「そうですか。名残惜しいですが、しばらく此処に滞在する予定なので、また会えることを願っています。では」

「うん、またね」


 互いに手を振り合い、僕は海岸沿いを走り始め、河童はまた海の方を向く。

 息を弾ませ走りながら、「これが未知との遭遇か」なんて、そんなことを思った。


 帰り道、出会った場所に河童は居なかった。

 島内の他の場所に行ったのか、それとも旅立ってしまったのか。

 どちらかは分からなかったが、手に持ったサイダーとメロン味のアイスキャンディーが両方とも自分の胃に収まるのだと思うと、なんだか余計に寂しさを覚えた。



  * * *



 翌朝。

 コンクリートの道の真ん中に、緑色のシワシワした物が落ちていた。


 一見して変わった柄の布かと思ったが、よくよく見るとそれは、昨日埠頭で出会ったあの河童だった。「あの」とは言ったが、河童の選別なんて経験したことが無いから、断定は出来ないのだけれど。


 とりあえず近くにあった店の自販機で飲料水を買い、キャップを開けて注いでやる。

 みるみるうちに水分を吸ったそれは膨らみを増し、やがて本来の形を取り戻した。やはり、布ではなく河童だった。


「ああ、死ぬかと思った!」


 震える声で叫んだ河童は、目を瞑ってからぱっちりと開き、僕を見た。


「おや、ハヤト君」

「おはよ。こんな所でなにしてたの?」


 ペットボトルを手渡すと、河童は「ありがとうございます」と告げて残りを飲み干し、空になった容器を大事そうに抱えた。


「散歩がてら島を見回ってたら、太陽にやられて体の水分が抜けました」

「危なかったね」

「ええ、危うく河童のミイラとして観賞用にされるところでした。まあ、干乾びたところで水を掛ければ復活できるんですが」


 じゃあ何でさっき「死ぬかと思った」と叫んだんだろう。なんて、無粋か。


「ハヤト君は今日も遊びに行くんですか?」


 昨日とは違い空っぽな僕の手を見ながら、河童は首を傾げた。


「ううん。今日は夏休みの宿題である日記を埋めるために、出会いを求めてたんだ」

「そこでぼくと再会したわけですね」


 何故か嬉しそうに頷いているが、河童との出会いなんて書いたら学校に両親を呼ばれかねないので、当然書く気はない。


「そんなところ。ねえ、昨日から思ってたんだけど、不用心に歩き回って大丈夫なの? 大人とか警察に見付かったら、捕まるんじゃない?」


 河童は目を瞬かせ、少し考える仕草をしてから、僕の目を真っ直ぐに見た。


「たぶん大丈夫です。……ほら」


 そう言って、河童は対面にいる僕の背後を指さした。

 此方に向かって走ってくる自転車がいる。乗っていたのは、八百屋のおじさんだ。後輪の荷台に『八百屋いちむら』と書かれた箱が乗っている。


 箱をガタガタいわせながらやって来たおじさんは、僕に気が付くと「おうハヤト君! 元気そうだな!」と声を掛けてきた。

 とっさに「はい。おはようございます」と返すと、おじさんは「はよっ! 気ぃつけてな!」と手を上げ、そのまま去っていった。

 もちろん、僕の傍らにはペットボトルを抱えた河童がいる。


「見えてなかったみたい」

「ええ。ぼくの姿は小さい子供、それもごく一部の人にしか見えません。今のところ反応されたのは、島の中では君とチエちゃんだけです」

「意外と少ないんだね」

「そうです。だから自由に歩き回ってもそれほど支障はないんですが、それだけに油断してさっきみたいに干乾びることも、しばしば。雨が降ると戻れますが、雨が降らない間は地面にこびり付いたガムの気持ちです」


 ガムに気持ちってあるのか?


「ところで、この島にどれ位いる予定なの?」

「ええと、そうですね。明日には旅立とうかと」

「そっか。じゃあ、僕のおススメの場所教えようか?」


 どうせ暇だし。と思いながら提案すると、河童は「いいんですか?」と目を輝かせながら身を乗り出した。


「ぜひ、お願いします!」


 さて、これで日記の材料は出来た。河童に観光案内してたなんて書けないから、無難に散歩と書くしかないけど。


 そんな訳でまずやって来たのは、家の近くにある神社だった。

 此処に来るのがいつもの日課だからだ。河童は僕に続いて恐る恐る鳥居を潜り、境内に入った。


「神社に来るのは初めてです」

「そうなの? けっこう居心地いいよ。それに、ほら」


 ポケットから缶詰を取り出し、蓋を開けて地面に置く。

 すると、建物の下にいた生き物が鳴き声を上げながら出てきた。猫だ。


「ネコッ!」


 その姿を見た河童は飛び上がり、僕にすがり付いた。

 触れた箇所がじっとりと濡れて、あまり心地は良くない。


「ネコ、だめ? 可愛いのに」

「昔、引っ掻かれたことがあって。それ以来トラウマなんです」

「それっていつ頃?」

「江戸時代です」


 意外と長生きさんだった。

 猫との触れ合いを諦め、次にやって来たのは駄菓子屋だ。目撃される心配がないならと、正面から行くことにしたのだ。当然、人目がある場所では会話できないけれど。 

 幸いにも周辺にはひと気が無かったので、いそいそと店の前に置かれたガチャポンの前に座る。


「これ知ってる?」

「ガシャポンですよね。やったことはありませんが」


 む、僕とは呼び方が違うようだ。地域差があるのだろうか。


「見てて」


 ポケットから出した百円玉を入れ、ゆっくりとレバーを回す。激しい音を立てて出てきたカプセルを前に、河童は「おおっ」と興奮していた。

 手渡すと、嬉しそうに陽の光を透かし始めた。


「綺麗ですね」

「……それ、開けるんだよ。貸して」


 受け取ってカプセルを開け、中に入っていた大きめのスーパーボールを渡す。シークレットのクリアカラーだった。中にカラフルなラメが散りばめられている。


「こっちが商品だよ。これは容器」

「そうだったんですか。てっきり、覗いて眺めるものかと思ってました」


 僕が空のカプセルをゴミ箱に放るのを眺めてから、河童は改めてスーパーボールを夏の陽に透かす。


「尻子玉みたいにまんまるですね」

「しりこだま? なにそれ」

「お尻の奥にある玉です。ぼくは抜いたことないですが、お爺ちゃんが抜いたものをコレクションしてました」

「抜くとどうなるの?」

「腑抜けになるそうです」


 ふぬけ。「ふ」が言えなくなってしまうんだろうか?

 それでは「富士山」も「踏み台」も言えなくなってしまう。「豆腐」なんて、ふが抜けたらただの「豆」だ。それでは困る。


「僕のは抜かないでね」


 命乞いのように言うと、河童は少し驚いた顔をしてからブルブルと首を振った。


「抜きません。ぼくはコレクションしてませんから!」


 コレクションしてたら、抜かれてたんだろうか。


「それに、尻子玉よりもこっちの方がキラキラして綺麗です」

「尻子玉って何色なの?」

「白くてつやつやしてました。物によって色艶に差があるそうですが、僕には違いが分かりません。でも、こっちはいろんな色があって素敵です。あの緑色のが欲しいなあ」


 河童にならって中を覗くと、下の方に緑色のボールがあった。数回まわせば出てきそうだ。


「ちょっと待ってて」


 もう一枚百円玉を取り出して入れ、回す。

 出てきた固いカプセルを渾身の力で開けると、少し小さめの水色のスーパーボールが出てきた。


「あ、緑じゃないね」

「でもこれも綺麗な色です。昨日食べたアイスと同じ色ですね」

「ほんとだ。でもせっかくだし、緑色狙おうよ。もう百円残ってるから」


 ポケットに残された最後の百円玉を取り出し、中に入れる。

 これで目当ての色が出なかったらどうしよう――なんてドキドキしながらレバーを回す。音を立てて出てきたカプセルの中に、ちらりと緑色が見えた。


「緑だ!」


 良かった。これでも「強運王」と呼ばれるぐらいには、運が良い男なのだ。

 水色のスーパーボールをポケットに仕舞い、緑の方を渡す。河童は「僕と同じ色です!」なんてはしゃいでいた。


「僕もこの玉みたいな、透明な緑色だったらなあ」


 陽に透かしながら、しみじみと呟いている。でもそんな色だったら臓器が透けそうで怖いから、今の不透明な体の方が絶対に良いと思う。


「次はどこに行きましょうか?」

「ええと、次はね」


 顔を上げた時、ふと斜め後ろから視線を感じた。慌てて振り返ると、そこには僕と同じぐらいの背丈の人が立っていた。

 艶やかな黒髪を頭の両脇で結び、前髪をオレンジの縞柄のヘアピンで留めた、白いワンピースの女の子。

 安藤チエだった。


 安藤はじっと僕を見つめてから、河童に視線を移した。それからまた僕を見て、控えめに口を開く。


「なにしてるの?」


 それが自分に対する問いだと理解するのに、数秒は掛かった。というよりもまず、彼女の発した声だとすぐには判断できなかった。

 透き通った高い声は、授業中先生に当てられて朗読していた時よりも、幾分か柔らかく、穏やかだった。


「……あ、と」

「チエちゃん! 昨日ぶりですね」


 河童はぴょんと跳ねながら安藤の方へ向かっていった。彼女は河童を見下ろし、幼い子供にするように少ししゃがむ。


「おはよう、カッパさん」


 それから背を伸ばし、改めて僕を見る。不審なものを見るような目つきではなく、両の眼には純粋な好奇心が詰め込まれていた。


「和田くんも、この子が見えるんだ?」

「う、うん……まあ」


 曖昧に頷くと、安藤は「そっか」と呟いてから、脇に垂らした手を後ろ手に組んだ。


「良かった。わたしだけかと思ってた」


 そう言ってほんの少し口の端を持ち上げてみせた表情は、安堵によるものだったせいか。なんだか少し泣きそうに見えて、ドキリとしてしまった。


「僕も、自分だけかと思ったよ」

「あ、やっぱり?」


 口元に手を当て、クスクスと笑う安藤。他のクラスメイトの笑いよりも、随分と大人びた仕草だ。これが「品がある」というやつなのか。

 自分が言ったことに彼女が笑うのが何だか嬉しくて、僕は何も考えずに言葉を口にしていた。


「ねえ、安藤。良かったら一緒に河童の観光案内しない? 明日旅立つみたいだから、おススメの場所を教えてたんだ。……暇、だったらだけど」


 語尾が尻すぼみになったのは、途中で我に返ったからだ。いつも目にしていた、鋭い眼光と堅い口元が思い起こされる。この態度の軟化は、河童の前だからこそかもしれないのに。


 彼女の顔を見るのが急に怖くなり、俯きがちになる。

 しかし後頭部に降りかかってきたのは、先程と同じ明るい声だった。


「へえ、面白そう。ご一緒させて!」

「……いいの?」


 顔を上げた瞬間、呆けたような、間抜けな声が出た。その反応がよほど面白かったのか、安藤はまた口元を隠すようにして小さくころころと笑う。


「和田くんが誘ったんでしょう。ね、交互に案内しようよ。今は和田くんが案内したから、次はわたしの番。いいでしょ?」

「う、うん」

「やった! じゃあねぇ――」


 安藤はぴょんぴょんと跳ねながら、くるりと一回転した。

 ワンピースの裾が風に乗りふうわりと広がり、あしらわれたレースが向こう側の青を透かす。

 彼女の肌は、夏の空の下にいると崩れてしまいそうなほど真っ白で。

 どこか、この世のものではないように思えた。



  * * *



 それから安藤と僕は、色んな場所を河童に案内した。


 魚に囲まれながら声を張り上げる大人たちがいる、活気溢れる漁港。その近くにある寿司ネタの魚ばかりが入れられた水族館。

 いつも漫画雑誌を買いに行く寂れた本屋。友達の家の近くで飼われている、ひょろ長い変わった犬。小学生までならタダで入れる小さな美術館。学校裏の山にあるアスレチック。


 美味しいお団子が食べられる和菓子屋では、ガチャポンで所持金がゼロになってしまった僕の分も安藤がお金を出してくれた。


「美味しいね。このお店のお団子、すっごい気に入った」


 海岸にほど近い場所に生えている松の木にもたれ、ずんだ餡の串団子をもちもちと頬張る。その笑顔は、本当に心から楽しんでいるのだと分かるぐらい、晴れやかだった。


 いつもの鉄仮面の下には、こんな表情が隠れていたのか。

 もっとこうして明るくいれば、可愛さも相まって島のアイドルにでもなれそうなのに。非常に勿体ない。


「春になるとさくら餡とかも出るよ。それも凄い美味しいから、来年食べてみなよ。絶対気に入ると思うよ」


 女の子だし、きっとピンク色でお花の乗ったのが好きだろうと、子供なりに気を利かせて言ったつもりだった。しかし、予想に反し安藤の表情は(かげ)りを見せてしまう。


「うん……。そう、だね」


 残された竹串を見つめながら小さく呟いた声は、いつも学校で聞くのと同じ、硬く生気のないものだった。

 何が彼女をそんな表情にしてしまったのだろう。さくら餡はお気に召さないのだろうか。それとも、ピンク色が好きじゃないのだろうか。春の訪れが嫌いなのだろうか。

 原因が分からずオロオロする僕を、傍らにいる河童はじっと見つめている。それから唐突に空を見上げ、言った。


「日が暮れてきましたね」

「え?」


 顔を上げると、あんなに高く昇っていた陽はいつの間にか落ち、天は胸がすく青から物悲しい赤へと色を変えていた。

 いつの間に、こんなに時間が経っていたんだろう。

 まだほんの二・三時間しか遊んでいないような気持ちでいたのに。まだまだ全然、物足りないのに。


「も、もう少し。もう少しだけ」


 このまま河童とも安藤とも別れてしまったら、次に彼女と顔を合わせた時、またいつも通りに戻ってしまいそうに思えて。引き留めるために、ついそんな事を口走ってしまった。


「あと一か所ずつ。お互いによく行く場所に行こうよ、ね」


 幸いこの辺りは、僕の家と安藤の家の近くだ。そう遠い距離にはならないだろう。


「安藤が先に案内していいよ」


 促すと、彼女は「ううん」と首を振った。動きに合わせ、頭の両脇で結われた束がさらさらと揺れる。


「時間もなさそうだから、和田くんので最後にしよう。カッパさんも疲れてるだろうし。遅れたら、怒られちゃうでしょう?」

「……う」


 ずいぶんと前、かくれんぼに夢中になって帰りが遅くなった日、お母さんのお尻ぺんぺんを喰らったことを思い出した。あのお尻が熱を持ち、ヒリヒリと痛む感覚が忘れられない。もう一生便座に座れないのではと思ったぐらいだ。


「分かった。じゃあ、僕の案内で最後ね」

「よろしくお願いします」


 河童は丁寧に頭を下げた。その手には、半分ぐらい水の入ったペットボトルが抱えられている。朝飲んで空になったペットボトルに水を入れ、案内の最中、定期的に掛けていたのだ。そのお陰で道中(しお)れることもなく、無事にここまで連れてくる事ができた。

 さっき掛けたばかりなので、濡れた頭の皿が夕陽に輝いている。


 河童の期待の眼差しを受けながら、しばし熟考。

 今までは何となく目に付いた場所や、河童が寄りたそうな場所を案内していた。けれど、これで最後となるとやはり、旅の締めに相応しい場所でないといけない気がする。


「よし、あそこにしよう。ついてきて」


 一人と一匹に手招きをし、夕暮れの中を歩き出す。

 一瞬視界にちらついたのは、ワンピースのポケットの辺りをきつく押さえている、安藤の姿だった。


 十五分ほど歩いただろうか。

 目当ての場所に辿り着いた僕は、後ろを振り返って大きく手を広げた。


「ほら、ここ! 凄いでしょ!」


 そこは、学校裏とはまた違う場所にある山の展望台だった。海が一望できる最高のロケーションだ。今はすでに陽も落ち、月の光が漆黒のうねる波を照らしている。

 河童は柵まで駆け寄って身を乗り出した。


「まんまるだ。月の色が綺麗ですね」

「金糸雀色、かな」

「かなりあ?」


 安藤の呟きをオウム返しに口に出すと、彼女は「うん」と控えめに頷いた。


「鳥の名前。野生のカナリアの羽色なんだって」

「詳しいんだね」

「色の図鑑眺めるの、好きだから」


 へえ、色の図鑑なんてあるのか。僕も両親から誕生日プレゼントで動物と魚の図鑑を貰ったけど、あまり開いたことはない。安藤は勉強熱心なんだな。


「あ、じゃあこれはなんていう色なの?」


 思い立ち、ポケットの中から水色のスーパーボールを取り出す。河童のアイスキャンディーとおんなじ色。

 安藤は一目見て、すぐに答えた。


「勿忘草」

「わすれなぐさ? それって、植物の名前じゃないの?」

「ううん、色の名前でもあるんだよ。由来はその通り、勿忘草の花の色だからなんだけどね。……綺麗な色だね」


 僕にとってはハズレでしか無かった、不透明で面白味もない、水色にしては冴えない色合いのスーパーボール。それを僕の手から摘み上げ、嬉しそうに眺める安藤にとっては、頬を緩めるぐらいに素敵なものに映っているのだろう。


 僕の目に見える十数色程度の世界も、安藤の目には様々な彩りにあふれているように見えるんだ。きっと、いま目の前に広がる全てが、そう見えているんだ。


 僕の目に見えている世界は、とても狭い。

 見えていなかったんだ。河童も、いろいろな色も。

 ――目の前の、儚げな笑顔も。


 展望台から降り、また互いの家の近くに戻ってきた頃には、すでにいつもの帰宅時間を三十分ほど超えていた。これはお尻ぺんぺん確定かもしれない。


「ごめんね、思ったより遅くなって」

「ううん。それよりどう、カッパさん。少しは楽しめた?」

「はい、それはもう!」


 カッパは嬉しそうに片手にペットボトルを、もう片手には透明と緑のスーパーボールを持っている。その中に、当たりのアイスの棒があった。


「それ交換しなくていいの?」

「はい。これは思い出として、持っていきます」

「持っていくって言っても、旅の邪魔になっちゃわない?」


 安藤の言う通り、完全に両手が塞がっていて旅どころではないような気がする。

 しかし河童は得意げな顔をして手に持った物を地面に置き、背中に背負った甲羅に手を掛けた。


「実はこれ、甲羅の形をしたリュックなんです」


 両手できゅっきゅと角度を直したと思うと、その甲羅がスポンと外れた。これには流石の安藤も驚いたようで、口をぽかんと開けている。僕も同じぐらい驚いていた。


 河童は外した甲羅を地面に置くと、蓋を開け、抱えていた荷物を入れる。

 中には松ぼっくりや、シワシワになった何年も前の観光ブック、小さな熊のキーホルダーなど、ガラクタのような物ばかりが詰め込まれていた。


「旅河童の間で流行っているモデルなんです。背負い紐のない最新型! 背中にしっかり密着して落ちないのに、取り外しが簡単なんですよ。もう便利すぎて、人間のあいだで流行ってないのが不思議なくらい」


 それは多分、人間は甲羅を背負う生き物じゃないからじゃないかな。


「これ、みんな旅の中で集めた物なの?」


 安藤が甲羅の中を覗き込んで問い掛ける。

 河童はどこか嬉しそうに、「はい」と大きく頷いた。


「ひとつひとつに、大切な思い出が詰まっています。昨日チエちゃんから貰ったアイスの当たり棒も、今日ハヤトくんから貰ったボールも、この島の思い出です」


 見ていて微笑ましくなるぐらいの温かな笑顔に、安藤は少し微笑んで、それから小さくこぼした。


「わたしも、そんな風になりたいな」


 河童はきょとんとした顔をして、またすぐに目を細めた。


「なれますよ。だって人間も、河童とそう姿かたちが変わらないじゃないですか。皿と水かきは無いけれど、同じように地を踏んで歩く仲間です。チエちゃんも、この広い世界を旅することが出来ますよ」

「……そう、かな」


 安藤は下を向き、自身の足先を見つめた。


「そうだと、いいな」


 心なしか、声が震えているように聞こえる。

 今彼女は、なにを思っているんだろう。

 なにを、見ているんだろう。

 夏の夜にぼんやりと浮かぶ姿を眺めながら、僕はただずっと、そんな事を思っていた。



  * * *



 次の日の朝――ではなく、昼。

 昨晩こってり絞られ、泣くぐらいお尻を叩かれた僕は、久しぶりに寝坊した。


 寝坊と言っても夏休み期間中で、昨日に引き続き用事もない日だったので、慌てることもなく階下に降りてリビングへ顔を出す。

 共働きである両親はすでに出掛けており、冷蔵庫を開けるとラップが掛けられたシャケおにぎりがふたつ。それから、テーブルの上には一枚の紙が置かれていた。


 お母さんからの伝言かと思い手にすると、そこには母のものとは似ても似つかぬ、幼児のようなたどたどしい字でこう書かれていた。


『はやとくん おみずと おもいで ありがとう』


 河童からの直筆の手紙だ。河童のミイラより希少品なんじゃないだろうか。

 でもきっと、他の人からすれば下手くそな字の手紙にしか見えないだろう。河童の残した手紙だと分かるのは、この世界でたったふたり。

 僕と、安藤チエだけ。


「安藤の家にも、手紙届いてるのかな」


 (ひと)りごち、チンして温めたシャケおにぎりを頬張る。

 手紙の端は、小さな手をかたどるようにシワシワになっていた。


 食事と洗顔、着替えを済ませた僕は、手紙を持って家を飛び出す。

 目指すは安藤の家だ。昨日案内をする最中に立ち寄ったので、場所はちゃんと分かっている。

 五分ぐらい歩いたところで、青い屋根の家が見えてきた。僕の家と同じ二階建てだけど、大きくて住み心地が良さそうだ。

 チャイムを押そうとして、ふと昨日は気にしなかった表札が目に留まる。そこには、『松代』と書かれていた。


「……あれ?」


 ここだと思ったんだけど……場所、間違えたんだろうか。

 しかしどう見ても、昨日案内された家だ。まさか自分の家を間違えたりはしないだろう。けど、だとしたら、この表札は一体?


「あれ、和田さんとこのぼっちゃんかい?」


 驚いて後ろを振り返ると、スーパーの袋を手に提げたお婆さんが立っていた。

 この島は子供の数こそ少ないものの、大人――特に老人の数が多く、顔見知りはよく声を掛けてくれる人やご近所さんぐらいで、この人は知らない人だった。


 小さく頷くと、お婆さんはヨタヨタと近づいてきた。

 頭を手拭いで覆うという、いかにも老人らしい恰好をしている。袖からのぞく腕は皺だらけで、枯れ木みたいだ。


「なんか用かい?」

「あ、えと……安藤、チエさんを……」

「ああ、チエに用があるのかい。ごめんねえ、あの子は今、病院にいるんだよ」

「病院!?」


 思わぬ単語に、声のボリュームが増す。昨日月光の下で見た、風にさらわれて消えてしまいそうな彼女の姿が脳裏に浮かんだ。

 そんな僕の反応を見たお婆さんは、少し申し訳なさそうに言う。


「ああ、いや、今日は通院の日なんだよ。だから大したことないよ」

「病気なんですか?」

「おや、チエから聞いてないかい? あの子ったら、ちゃんと友達に伝えておくようにって言ったのに」


 お婆さんは溜息をついてから、困ったように眉根を寄せ、頬に手を添えた。


「あの子は重い喘息(ぜんそく)を患っていてね。元々両親と都会に住んでいたんだけど、空気の良い場所の方がいいだろうって、親戚であるうちが預かることになったんだよ。ここ最近はずいぶんと症状も良くなって、お医者さんも大丈夫って言ってたから、本当に心配はいらないんだけどね」


 ……病気、だったんだ。

 だからいつも、静かにじっと身を固くしていて。

 声を張ることもなく、走ることもなく。たったひとりの世界にいて。

 それを僕は、鉄仮面だとか不愛想だとか……。


 馴染みのない環境にいて不安に思うのは、発作が起こらないよう慎重になってしまうのは、当たり前じゃないか。


 今まで僕が見てきたのは、本当の彼女の姿じゃない。


 河童に水とアイスを与え。

 漁港の賑やかさに圧倒され。

 泳ぐマグロの姿に釘付けになり。

 少女漫画コーナーで、いつまでも真剣な顔で吟味し。

 犬が怖いと壁にへばりつき。

 アスレチックで落ちかけた僕を見て楽しそうに笑い。

 一緒に団子を食べようと誘ってくれて、

 僕の知らない、いろんな色を知っている。


 それが、安藤チエだ。

「わたしだけかと思った」と笑った、あれが、本当の安藤チエだ。


「じゃあもしかして、あの事も話してないのかしら」

「あのこと?」


 お婆さんは少し言いよどみ、やがてぽつりぽつりと話し始めた。


「向こうにいる親が別の場所に移り住んだから、そろそろ親元に戻そうって話が出てるのよ」

「それっ、本当ですか!」

「ええ。そうしたらあの子も喜んでいたんだけど、昨日の夜帰ってきてから急に、咳をし始めてね。念のため、病院に行かせたんだよ」

「どこの病院ですか!?」

「木原クリニックだよ。そこの角を曲がって、信号を……」

「ありがとうございますっ!」


 最後まで聞かぬうちに、僕は走り始めた。

 木原クリニックの場所は、小さい頃に通っていたから知っている。海岸沿いの通りを走り、最短ルートである民家の間を抜けると、白壁のこじんまりとした病院が見えてきた。ここで間違いない。

 敷地に入り、玄関へ向かおうとしたその時。自動ドアが開き、中からマスクをした安藤チエが姿を見せた。


 いつものように髪は結んでおらず、背中に垂らしている。恰好は昨日とはうって変わって、キャラクターが描かれたTシャツにジーンズ生地のスカート。

 サンダルを履きながら出てきた彼女は、僕の姿を目に留めると驚いた様子で立ち尽くした。それから平静を保つように、ゆっくりとマスクをずらす。


「和田くんも、この病院に通ってたんだ」

「違う、君に会いに来たんだよ」

「わたしに?」


 安藤は目を丸くし、僕の手元にある河童からの手紙を目に留めた。すぐに昨日と同じ、明るい表情になる。


「ああ、今朝のカッパくんからの手紙のことかな。とっても可愛い手紙だったよね、案内して良かった……」

「君が、親のところに帰るって聞いたから!」


 その言葉を聞いた瞬間、安藤はひどく哀しそうな顔をした。

 今までのものとも、昨日のものとも違う、初めて見た表情。


「仮病だって、バレちゃった。問題ないって。予定通り、お父さんとお母さんのところに、帰れるって。もう引っ越しの段取りも、決まってるって」


 うなだれた瞬間、コンクリートに雫が滴った。

 ぽたりぽたりと絶え間なく零れ出し、コンクリートに染みていく。


「やだよぉ……。せっかく和田くんと仲良くなれたのに、色んな場所教えて貰ったのに! 行きたくない。離れたくないよ……」


 震える肩は、昨日見た時よりもいっそう頼りなく。

 夜の下で見た時よりも儚げで、溶けて消えていってしまいそうだった。


「わたし、カッパくんみたく思い出なんて作れない。あんな笑顔で去ることできない。どうしていいのか、分からないの」

「安藤」


 僕は彼女の手を取り、広げさせ、そこに水色のスーパーボールを握らせた。


「昨日、この島のあちこちを巡ったよね。それも河童と一緒に。あの河童が見えたのは、島の中で僕と君だけだよ。この島で起きた、僕と安藤だけの、特別な出来事なんだ。それって、何よりも素敵な思い出でしょ?」


 安藤は顔を上げた。

 泣き腫らした目は潤んでいて、昨日見た河童の濡れた瞳を思い出す。


「これからも僕たちには、沢山の出会いがある。それと同じぐらいの別れも。でもその中で、昨日ほど不思議なことって、そう無いと思うんだ。だから、きっと忘れないよ。僕も、君も」


「…………うん」


 ざああっと強い海風が吹いて、彼女の黒髪を揺らす。

 あの時と同じ笑顔は、しかし、どこか晴れやかだった。



 今でも埠頭(ふとう)の近くを通りがかる度に、思い出す。

 物腰が低く、好奇心旺盛な旅河童のこと。そして黒髪を両脇で結び、オレンジ色の縞柄のヘアピンを付けた、表情がころころと変わる可愛らしい女の子のことを。


 ランドセルが詰襟になり、ブレザーになって、島を出る頻度が多くなっても。忘れない、忘れるわけがない。

 あんな出来事、一生に一度だってないのだから。



  * * *



 今朝ポストに入っていた、俺宛ての郵便を取り出す。

 品のある勿忘草のイラストが描かれた封筒。封を開けるとそこには、色鮮やかな紅葉に囲まれて笑顔でピースをする、高校生になった安藤チエの姿があった。


「小学生の時ならいざ知らず、高校になっても手紙交換が続くとはな」


 SNSで連絡が取れているというのに、律儀な奴だ。

 テーブルの上にあったスマホを手に取ると、画面には「こないだ紅葉狩りにいった時の写真送るね」と絵文字付きで書かれていた。向こうで楽しくJK生活を送れているようで何よりだ。こっちは相変わらず、ベタベタした海風に揉まれているというのに。


「ひとりで紅葉狩りに行くようになるなんて。お前も立派な旅人じゃんか」


 写真の中のチエは、小学校の頃に比べれば当然なのだが、より大人っぽさを感じるようになってきた。周りに誰も居ないのをいいことに、じっとチエを見つめる。化粧でもしているんだろうか。


「ん?」


 ふとチエの後ろの人ごみに、変なものが見えた気がした。

 虫眼鏡を持ってきて、その部分をよーく見る。ぼんやりとしていて、湯気や霧に見えなくもないが――子供よりも小さい背丈の、何か得体のしれない、変なものが映っている。


 心霊写真か?

 お焚き上げをして貰った方がいいだろうか。

 チエのやつ、恐ろしい物送ってきやがって。おちょくってやろう。


 そう思い、写真から視線を外そうとした時。そのモヤの近くにいる子供が、そちらを向いて、満面の笑みを浮かべている事に気が付いた。

 何だかそのモヤに向けて、紅葉の葉を差し出しているように見える。


「……こっちも、元気そうだな」


 スマホを弄り、引き出された一覧を指で押す。

 軽快な音と共に、可愛い河童のありがとうスタンプが、画面に表示された。




 END.

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― 新着の感想 ―
[良い点] 柔らかくて、あたたかくて、懐かしい匂いのする素敵なお話でした。 >顔を上げると、あんなに高く昇っていた陽はいつの間にか落ち、天は胸がすく青から物悲しい赤へと色を変えていた。 とか、ひとつひ…
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