まだ早い、花火。
冷たくもない 暑くもない
じわじわと迫り来る
肌に滲んだ鬱
いくら拭いても 拭いきれない 足りない
辿り着けるかどうか
そんなことを考える暇すら無い
ただ 川縁を歩む速度を上げて
ようやく 目にした灯り
繁みの隙間から
まるで流れ星のように
儚く 散らばってゆく命
掌で包んだ灯りは
どこか こそばしく
やがて 水面に残骸が溢れた
精一杯 生きた証しを残して
靴の底が 真っ赤に染まる
踏み締めたのは 蛍
かけがえのない 季節の代名詞
締め付けてくるような 茹だる衝動
蝙蝠が羽ばたき 瞬時に口にしていった
ああ、痒い……。