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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

宝石あつめ

作者: あいきゃんふらい(揚)

 宝石が好きだ。

 いや、宝石じゃなくていも良い。綺麗な石が好きだ。例え今はどんなに荒んだ心になろうとも、誰しも一度は地面に落ちてある綺麗な石を拾って大事に取っておいた時代があったはずだ。大人から見たら、ただの何て事のない、無価値な石なのだろうけど、子供に取っては大事な大事な石なのだ。

 私は子供と同類だ。いや、私はその同類であるはずの子供にも理解して貰えなかった。理解するしないの前に、拒否された。気味悪がられた。

 キチガイ、だとか。頭がおかしい、だとか。イカレている、だとか。

 もしかしたら『逝かれている』かもしれない。

 親を呼ばれ教師を呼ばれ、あげくの果てには警察沙汰。そんなに驚く事だったのだろうか。石を集めて自分の宝箱の中にしまっておくだけなのに。

 周りがおかしい、と思っている人は、周りをおかしいと思っているーーじゃあないけれど。でもまあこの場合、周りがおかしいと思っているのは私だろう。結局、常識とは多数決で決まるものだ。昔々に地球は動いている何て言っても、いくら正しくても信じてもらえないだろう。いや、これはたとえが悪い。私が今やっている事は、正しい正しくない、良い悪いで表現されるようなものではない。多分、お金と命はどちらが大切かとか、そう言う問題なのではなかろうか。

 お金と命。恐らく大方、多くの方々は命というだろう。最近はゲームという選択肢もあるらしいが、ここは真面目に考えていただきたい。ただ生きるだけなら命だが、しかしある程度幸せに生きる為にはお金が必要だろう。それに、命やお金があっても、食料がなければ生きていけない。お金は食料ではなく、交換するものだ。そういう意味では、この二択の中に『食料』を入れていも良いのではないだろうか。

 違う違う。選択肢を増やしてどうする。

 つまり、私以外の皆さんが『命大事』。私が『お金大事』。みたいな。実際は隠れ『お金大事』勢がいる事を願ってやまない。

 まあ、同志がいようといなかろうと、私は私の信念を、あるいは我侭を通し続けるのだが。


 今日も、いつものように外に出て、石を探す。地球温暖化が進行しているとは言え、まだ半袖では寒い季節。三寒四温の、三の方。吐く息は白くないけど、それでも背を縮めずにはいられない。フードで耳を隠して、手を擦り合わせる。摩擦熱だ。

 周りはこんなに明るくて暖かくて御馳走がいっぱいあるなんて、なんて人間って不平等なんだろう、とか。そんなマッチ売り気分に浸ってみたり。

 実際は周りの明かりは繁華街で、いくら店の中が明るくても暖かくても、迎える側の人間も迎えられる側の人間も、どちらの心も真っ暗でひんやりとしたものだが。でもこの世で心がひんやりとしていない人なんて、いるんだろうか。

 いない、いらない、ありえない。

 というか、そんな事より早く石を集めたい。きらきら光って暖かくて、私を照らして温めてくれる石。たしか、21世紀から来た猫型ロボットの秘密道具で、そんな道具がなかった事もない。たしか、あれも石だった。

 つまり、私はその石を現実の世界で発見したことになる。糸無無し糸電話が携帯だったり、何でもBOXがスマートフォンやタブレットだったりする様なものだろうか。そう考えると、私達は昔の人達からしたら魔法使いやSFの世界に住んでいることになるのだろう。そして、私達よりも未来の人は、私達からしたら、魔法使いやSFの世界に住んでいるのだろう。

 石集めからこんな所に話が飛躍してしまった。誰が青い猫型ロボットの話をしろと言ったのだろうか。誰も言っていない。

 全く、こんなふうに考え事が多くて、自分の世界の方に集中してしまうのは私の悪い癖だ。そのせいで、気付かなかった。気付けなかった。どうやらさっきから背後で話しかけて来たらしい二人のお兄さんに。

「おいおーい、無視かよー」

「止めとけって、もっと優しくさー。どーせ家出とかだろ? そのカッコからしたら。ねー、今何歳?」

 無言。こういう奴らには構わない方が良いのだ。かまちょには構わない。『かまちょ』をかまぼこの形をしたチョコレートだと勘違いしていたのは良い思い出。

「って、答えてくれねーよなー。じゃーさ。お兄さんが良いとこ連れて行ってあげよーか?」

 やたら間延びした喋り方をする奴らだ。こういう奴らの事が、嫌いじゃない訳がない。つまりは嫌いだ。これは私が物事をテキパキ進めて早めに終わらせてしまいたいタイプだからと言う理由からだ。まるで他人事のように『そんなに連れて行きたいなら無理やり連れて行ったら良いのに』と思ってしまうのも、その性格故だろうか。

 歩く。先程よりも早めに。ともすれば小走りで、てってけ歩く。とっとこ歩く。大好きなのはヒマワリの種だ。違うが。しかもあれは『走る』だった気がする。とっとこ走る。

「ダイジョーブ。おにーさんたち、怖くないから」

 さすがはチャラくてバカっぽいとっても、そこは大人。私がとっとこ走ってもすぐに追いついてくる。もしかしたら、追い抜かされて通せんぼされるかもしれない。

 ……めんどくさいなあ。目当てとはちょっと違うけど、これもこれでまあまあな訳だし。

 やってやってもいいかな? 嫌だけど。

 中途半端なものは、あまり好きではない。最高なのか、最低なのか、どちらかにして欲しい。私の好みは、つまりリミッターが振り切れているものだ。こんな中途半端なのは、嫌い。いやでもまあ、背に腹は代えられぬ。選択の余地無し。やむを得ず。

 ぴたり。

 ぴたりぴたり。

 私が止まって、後ろの二人も止まる。お兄さん達は何を勘違いしたのか、嬉しそうな声を上げた。

「やーっと決めてくれた? んじゃ、どこにいこっか?」

「…………」

 くるり、と私は踵を返した。引き返すとか、そう言う意味ではなくて、文字通り。

 左足を軸にして、右足を軽く振って180度回転した。もちろんの事、目の前の風景も180度回転する。真正面は、お兄さん達。一目見ただけで分かる、その話し方と同じくチャラくて、かったるそうな態度。金髪と茶髪に染まった髪は、生え際だけが少し黒くてプリンのように見えなくもない。

 金髪のお兄さんが私の方に触れた。馴れ馴れしく。軽々しく。

 ここで一つ言っておこう。私は他人に触れられるのが大嫌いだ。いや違う。人の体が自分に触れるのは、それが例え自分であっても、拒絶反応を抱かずにはいられない。人のはだってものは、特に若い人は肌がすべすべしていて生暖かいから、とてつもなく気持ち悪く感じる。そう言う意味では死体は、生暖かくなくて普通の人よりはましだ。ただ、死体に触られて嬉しく思うような死体愛好家ではないので、それはそれで気持ち悪い。

 ともかく、私は触られたのだ。気持ち悪い、特に嫌いな若い人の肌で。それが例え服越しにだったとしても、吐き気がする。しかしまあ、ここでゲロインになるわけにはいかない。私がヒロインなのかどうかは置いておいて。ジャンプ初のゲロインはチャイナ服を着た夜兎族の女の子だとか、そうじゃないとかいろいろあるけれど、そんな豆知識も置いておいて。

 置いて置いて。

 にやにやと、笑いながらもお兄さんは強引に私を引っ張る。

 ついでにもう一つ言っておこう。私は天の邪鬼だ。近づけと言われたら離れるし、離れろと言ったら近づく。死ねと言ったら死なないし、死ぬなと言われたら死ぬ。実際、小学生の時の道徳の時間で、教師から『どんなことがあっても、死んでは行けません』と言われたので、すぐにベランダに出て飛び降りた。幸い、私が飛び降りたのは二階で、しかも下には焚き火でもするのかという程に山盛りの落ち葉がクッションとなって、かすり傷程度ですんだ。

 話を戻す。強引に引っ張られたので、こちらは強引に抵抗した。強引に抵抗、ってなかなかにおかしな言葉の響きな気がするが、まあとにかく、抵抗した。お兄さん達は私を怪訝そうに見る。それはそうだろう。付いて来てくれると思った女の子が、抵抗し始めたら変には思うだろう。私は付いてくると入っていないが。

 付いて来い。

 私はそれを体で表して、またくるりと180度回転した。景色も回転。くるりくるり、くるりくら。あまり回りすぎたら、酔ってしまう。

 お兄さん達は理解が出来なかったらしく、しばらくは後ろから続く足音が聞こえなかったが、しばらくして聞こえてきた。付いて来た。

 この辺の地理にあまり明るくないのだが、しかし完全に分からないという訳でもない。人通りが少ない袋小路だったら、あまり目立たない。

 どきどきどき。

 今まで、小さい石は集めたことはあったけど、このサイズはなかなかない。というか、初めてだ。

 どきどきどき。

 少し緊張するけれど、今までよりも大きい石を切り出すだけだ。そんなに固くならなくてもいい。落ち着いて、捌けばいい。

 ぴたり。

 ぴたりぴたり。

 止まった。私と、そしてお兄さん達。二人とも、きっと笑いながら私の後をついてきたのだろうと、そう思うとこっちもこっちで嗤ってしまう。

 嘲笑。ネット用語でいうと、かっこわら、とか大草原、とかだろうか。

 わらわらわらわら。

 実際そんな笑い方をする輩がいるのだろうか。しかもこれだと虫が湧いているみたいだ。気持ち悪い。

 さてと、と。私はそこで初めて、パーカーのポケットに手を入れた。中身をまさぐる。

 ごそごそごそ。ごそごそごそ。

 かつん。ひやり。

 冷たく、堅い感触。私の道具。ずっと昔から、幼稚園の時から大事にしている。自分でカスタマイズして、愛用している。可愛い可愛い、私の道具。

 にんまり。思わず、笑みがこぼれる。

 ひっ。お兄さん達から、悲鳴が漏れる。

 何て対照的。お兄さん達は、これから私の大事なコレクションになるんだから、ニコニコ笑って受け入れたら良いのに。

 腕を振るう。

「——っふ」

 短く、吐息。ポケットから出て来たスコップが、きらりと月の光を反射した。鋭利に研いだ先が、金髪のお兄さんの胸を掘る。ぐちゃ、と。

「え……。え……?」

 理解して、理解できなかったお兄さん達の顔。茶髪のお兄さんは腰を抜かしてしまったのか、その場にへたり込んでいる。情けない。たったこれだけが、そんなにショッキングだろうか?

 ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ。

 めちゃめちゃめちゃめちゃめちゃめちゃめちゃめちゃめちゃ。

 ぬちゃぬちゃぬちゃぬちゃぬちゃぬちゃぬちゃぬちゃぬちゃ。

「あ、ああ!? はああああ!? お、おま、ああ、なに、なにしてる——」

 最後まで、言おうとして、出来なかったらしい。なんとも、なんとも情け無い。茶色のお兄さんの口には、もう一つのスコップ。そのままの勢いで喉の奥に突き刺す。鮮血。

「ごふ、が」

 赤い液体。生温い液体。

 私の道具に付着する。

 私の服に付着する。

 私の肌に付着する。

 私の髪に付着する。

 私の私に付着する。

 気持ち悪い。気持ち悪い。きもちわるい。

 気持チ悪イ。気持チ悪イ。キモチワルイ。

 きも血わる異。キモ血ワル異。

「げら」

 と。

「げら、げら、げら」

 と。

「げら、げら、げら

「げらげらげらげらげらげら

「げらげらげらげらげらげらげらげら」

 と。

 私は、笑った。

 なんとも、なんとも情け無し。

 おにーさん、あなた達から取ってあげるよ。

「殺って殺ってもいいかな? 嫌だけど!」

 おにーさん達は止まった。

 おにーさん達は停まった。

 おにーさん達は留まった。

 止まって、停まって、留まって。

 いや違う。重力に従って、引力に従って、ゆっくりと倒れている。その点に置いてはまだ、彼らは止まっていない。それに、停まってもいないし、留まってもいない。

 それでも確実に彼らの命は、ここで。止まって、停まって、留まった。

「ふぅ」

 やっと終わった。私の嫌いな時間が、やっと終わった。

 ここからが私の本分。ここからが私の本文。

 横たわる二人の、プリン頭の方に体を寄せて、スコップを胸から引っこ抜く。まるで噴水のように飛び出した液体が体に掛からないように注意しながら、じっと彼を見つめる。

 この形の物から、石を採取した事がないのではっきりとは分からないが、だけれどおそらく、()()()()にあるのだろう。

 ずぶり、と。スコップを突き刺す。

 皮膚と云う名の地表を裂き、筋肉と云う名の草の根を絶ち、骨と云う名の木の根を貫き、肉と云う名の土を抉り、内臓と云う名の虫を突き、血と云う名の水を掬う。

 そうしてやっと手に入れたそれは。

 心臓と云う名の石は。

 石と云う名の意思は。

 意思と云う名の遺志は。

 残念ながら、私の思い描いているような物ではなかった。

 残念。無念。

 絶望。失望。

 力が抜けて、気も抜けて。

 こっちがこんなのだったなら、あっちもあんなのなんだろうな。

 なんて。

 それでも一縷の望みをかけて。僅かな希望を胸に抱いて、彼の胸のなかからそれを取り出す。

 裂いて、絶って、貫いて、抉って、突いて、掬って。

「…………」

 これは。

「…………げ」

 これはこれは!

「げらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげら」

 やったやった。ここ一番の収穫だ。

 素敵素敵!

 これは、私の宝物。

 これは、私の宝石。


 明日はもっと、素敵な宝石に出会えますように。

 最近自分はタイトルやタグをつけるのがへたくそなのだと気が付いた。

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[良い点] ところどころクスっと笑える所があるのが良いですね!(銀〇とか) 女の子が狂ってますね。でも、読みやすかったです!
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