表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夏休みの思い出は平安で  作者: 震電みひろ
7/68

7、疑念

まだ暗い内に目がさめた。

腕時計を見ると4時15分だった。俺は普段は殴られても起きないタイプなのに、やはり興奮してるのだろう。

寝直そうと思って目を閉じたが、体が最早パッチリ起きていると告げている。

仕方なくもっそり起きた。3人はまだ寝ている。日の出でも見るか。

Tシャツと短パンのまま外に出る。

ビーチに出るため松林の中を歩いていると、途中、ハンカチを見つけた。園田の物だ。でも昨夜外に出る時は持っていなかったと思うから、後から1人で外に出たのだろう。あの夢の中のすすり泣きは園田だったかもしれない。

ふと見るとすぐそばに妙なものが見えた。丸いものだ。金属らしい。

手に取ってみると最初はなにかのフタかと思ったが、どうやら大昔の鏡らしい。

赤っぽい、銅でできている。直径は5、6センチか。表面はよく磨かれていて顔もはっきり写る。

でもこんな年代物どうして持っているんだろう?これも園田のだろうか?

浜辺に出た。ちょうど空が群青色から刻々と変化していく所だった。きれいな朝焼けだ。

空気も冷たくてすがすがしい。雲がやはりオレンジ色に輝いていた。

松林からだれか来る気配がした。

園田だった。俺に気付くと逃げようとした。

「待てよ」

俺が声をかけると、とまどいながら園田は立ち止まった。

俺は声を掛けた事を後悔した。思わず言ってしまったのだ。何を話そう?

思い出してポケットからさっきのハンカチを出す。

「これ、園田のだろ?」

「・・・ありがと・・・」

すばやく園田はハンカチを取ると行こうとした。

「これは園田の?」

俺は銅でできた鏡を出した。

はじめて顔を俺のほうに向けると、じっと見て「知らない」と言った。

そのまま園田はコテージの方に去っていった。

気まずいので俺は少し遅れていく。

戻ると中央テラスのテーブルに宇田川がいた。

「あれ、宮元、早いじゃん」

「オマエこそもう起きたの?」

「うん、慣れない井戸水だから、ちょっともよおしちまってね」

ここは井戸水を汲み上げている。すごくおいしい水だ。

「大丈夫なのか?海で泳いでる時に漏らすとか、勘弁してくれよ」

「いや、そんなに強烈じゃない、ただ普段よりしたくなるって程度さ」

部屋の戻ると柴崎も起きだしてきた。

「今、何時だ?」

「6時だよ。おまえも下痢ぎみか?」

「なんだ、それ?」

俺は宇田川の事を話した。

「軟弱な腹だな、おれは反対に空腹だ。朝飯7時からオッケーなんだっけ」

吉岡も起きてきた。

電話でフロントに、できるだけ早く朝食を持ってくるように頼んだ。

7時きっかりに朝食は運んでこられた。

洋食と和食から選べるがみんな洋食にした。

フランスパンとコーンスープ、スクランブル・エッグにベーコン、これは割と普通だった。

朝食は全員集まって、屋外にある中央テラスで食べる。

今朝の鏡をみんなに見せてみた。

「すいぶん昔っぽいものだな」と柴崎。

「でもこれはまだできて新しいだろ。銅で作られてるみたいだな」と宇田川。

「歴史の教科書に出てきそうだ。みやげ物じゃないか?」と吉岡。

色々言ったけど、誰のものでもなくどうしてこんな所にあるのかもわからなかった。

とりあえず、俺が持っている。


その日は朝から自転車でリゾート内を巡ってみる事にした。女の子は牛車だ。

4人乗りで屋根が付いている白木作りの牛車は、予想以上に大きかった。

まだ9時だってのに自転車をこいでいるとかなり暑い。今日も暑くなりそうだ。

女の子たちは快適そうだ。楽だろうし。

一番東側の敷地の端まで、男だけ行ってみることにする。

松林がいつのまにか雑木林になり、ゆるやかに登りになっているかと思ったら、最後は登りの小さな崖になっていた。

熊笹につかまりながらよじ登る。崖の上は雑木林だ。

少し離れた所に厳重な鉄条網の柵が続いている。ここが境界か。

と、見てみるとうまくカモフラージュされてはいるが、所々に番所のようなものが見える。

その前にはなんと・・・

迷彩服を着て自動小銃を持った男が立っているではないか。

みんなも気付いたらしく唖然としていた。声を出すと物騒な事になりそうだから、誰も声を出さない。

ただ迷彩男に緊張感はなさそうだ。ヒマそうにしている。あ、あくびした。

中から紙コップを持った別の男が出てきた。見張りの男に渡している。

視界の中にもう1つ番所が見える。どうやら互いに見える範囲にあるようだ。

「なにか知らんが随分厳重な警戒だな」

小声で柴崎が言った。

その時、また宇田川が驚いたようにこう言った。

「なんだぁ、あれ?」

宇田川の指差す方向、鉄条網の向こう側にもう1つ番所があった。

しかしその格好は。

こっちが軍隊ならむこうは大昔の兵隊のようだ。

飛鳥時代か平安時代の兵隊のような格好をしていた。

茶色の鎧(戦国時代の鎧兜じゃなく、埴輪が着ているやつ)に黒の烏帽子。

下は着物のようだ。

暑いらしく腰の竹筒からしきりに水を飲んでいる。

「なんだ、このアンバランスな差は?」

俺があきれたように言った。

「これもアトラクションの1つなのかな?」

宇田川が言った。

ちょっとみんな薄気味が悪くなったので、そろそろと今来た道を戻り始めた。

俺達が自転車の所に戻って来ると、女子たちの牛車が待っていた。

「何かあった?」

蜜本が聞いてくる。

「いや、別に」

そばに牛車の係員がいたので、とりあえず俺はそう答えた。


昼からは西の端の岩場で磯遊びをした。

「うわっ、でっかいカニ!」

蜜本がはしゃぐ。見るとでっかい毛ガニがたくさんいた。

身が手のひらくらいはあるのが、そこら中にいる。

「捕まえようぜ」

柴崎が真っ先に飛び出す。

みんなカニをつかまえようとしたが、女子たちはカニを掴むのが恐いらしく、また岩の割れ目に素早く隠れてしまうので中々捕まらない。

ここでも吉岡が運動神経の良さを見せる。

結局、吉岡が3匹捕まえた以外は男が1匹づつだった。

海の中ではサザエやアワビがどっさり取れた。

「こういうのって漁業権とかあって、取っちゃダメじゃないのか?」宇田川が言う。

みんなでひとしきり遊んで岩の上に座る。

俺はふと上を見上げると、高い崖の上から迷彩服姿が見えた。こっちにもいるのか。

「あの軍隊みたいなの、一体なんだろうな?」

吉岡も同じ方向を見たらしい。

「いくらおエライさんが来てるとは言っても、ちょっと物々しすぎるんじゃないのか?」

俺もそう言う。ここはすごく変だとは言えないけど、何かがおかしい。

「この様子だと、このリゾートをぐるっと全部見張っているんだろうな」宇田川も言った。

「それと向こう側に見えた、あの昔っぽい衣装の番人だよ」俺は続けた。

「なんであんな格好でいるんだ?あれじゃあ外から他の人が見たら、余計におかしいと思うよ」

宇田川が後を続ける。

「でもあの様子だと、この中を隔離しているようにも見えるよ」

俺はもう疑問を抑えられなかった。

「今までの疑問を整理してみよう。まず、あの出発駅だ。あの研究所みたいな所。なんであんな所が出発駅なのか?次に所沢からわずか10分程度でたどり着けるこのリゾート。そして人工物が全く見当たらない点、そしてあの警備。ここは絶対普通のリゾートじゃない」

柴崎はあくまで気にしなかった。

「おまえ、考えすぎだって。ここにいるのは各界の著名人ばかりだぜ。そんな人達を集めてクーデターでも起こそうってのか?そんな訳ないだろ。ここに来てなんの不満がある?それに電車の話だって、直通リニアモーターカーみたいなのが出来たのかもしれないだろ。なにせ画期的らしいからさ。あと迷彩服の連中は確かに俺も少し変だと思ったけど、それはこれだけエライさんが集まれば当然の事かもしれないだろ。人工物が見えないのは、テレビの時代劇とか見てれば、そういう所は日本にも探せばまだあるってわかるじゃないか」

俺にも反論できるほどの根拠があったわけじゃない。どこがおかしいか明確に言える根拠はないのだ。

ただ口には出さなかったけど、あの鏡と何か関係かあるような気がしていた。


夕食の時はまた斎藤さんが待っていてくれた。今日は和食だ。大きな舟盛りに伊勢エビ、カニ、アワビ、サザエ、タイ、マグロ、イカなど海の幸が山盛りになっている。

会場の方も今日は海が見える岬の上にある大広間だ。

今日のショーは白拍子だった。

昔の神主みたいな着物を来て頭に烏帽子をのせ、笛や太鼓に合わせて歌いながら踊るのだ。

そのメインの女の子は白い着物を来て、目がパッチリ大きく口が赤い、可愛さと造詣の美しさを併せ持った美人な女の子だった。

エキゾチックな顔立ちだ。超好みのタイプだ。

こんな可愛い子がこの世にいたのか、と見惚れてしまった。

あれ、でもこの子を見るのは、初めてじゃないような気がする。

アイドルに似てたかな?それともデジャビューか?

たらふく食ってコテージに帰る。

柴崎はいつの間にか、明日は斎藤さんも一緒に泳ぐ約束を取り付けていて、大喜びだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ