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夏休みの思い出は平安で  作者: 震電みひろ
64/68

64、最後の戦い(その1)決闘

主人公の高校2年生・宮元駿馬は、夏休みにクラスメートに誘われて、ある企業の非公開リゾートにモニターとして参加した。

だがそこは、実はタイムマシンで平安時代に作られたリゾートだった。

宮元は平安時代の白拍子の少女・海月に一目惚れする。

しかし彼女は2週間後には、龍神祭りの生贄として利根川に沈められる運命だと言う。


宮元と友人4人は、海月を助けるため、リゾートを脱走して坂東の地に向かう。

数々の困難を経た後、ついに龍神祭りで生贄をなった海月を救うことに、宮元達は成功した。

しかし宮元の仲間が祭りの主催者である神主一味に見つかってしまい、海月も助け出した事を村人に見つかってしまう。


宮元達はリゾートから来ているヘリコプターで脱出しようとするが、その直前に神主一味で牛人と呼ばれる大男に、海月は捕まってしまう。

牛人は宮元に「女を返して欲しくば、戦って奪い取れ!」と言う。

コイツが人語を話すとは新鮮な驚きだった。

俺は叫んだ。

「望む所だ!勝負してやらあ!その代わりオレが勝てば必ず彼女を返せよな!」

牛人はニヤッと笑うと、舟を岸に向けた。

牛が笑うところを見るのは生まれて初めてだ。


俺も縄梯子に舟を寄せる。

みんなは既にヘリに乗り込んでいた。

俺もヘリの風圧の中、乗り込むと同時に言った。

「岸に向けてくれ!」


みんな心配そうだ。

柴崎が真っ先に言った。

「宮元、1人で大丈夫か?」

俺は答えた。

「大丈夫、なんとかやるさ」

宇田川も言う。

「アイツラは本当に1対1でやるつもりなのか?」

俺は3人を見回した。

「もしヤツラが約束を違えて大勢で襲ってきたり、海月をさらにどこかに連れ去ろうとしたら、俺に遠慮せず攻撃してくれ」

宇田川がヘリの壁を指さした。

「銃はどうする?ここの自動小銃が1丁あるけど?」

「それは俺がやられたり、ヤツラが約束を違えた場合に、オマエラが使ってくれ。多分ここで俺が牛人を撃ち殺しても、回りの兵士が納得しないだろう」

柴崎が言う。

「こっちも密かに神主を人質に取ったらどうだ?」

だが吉岡が

「それは難しい。それにうまく人質に捕っても、こっちの方が海月さんを取られている以上は弱い立場だよ。やつらは神主が少々ケガしようとおかまいなしだが、こっちは海月さんに手を出されたらお手上げだ。ここは宮元に任せるしか無い。チャンスがあれば、俺達は俺達で別の作戦を考えた方がいい」

俺は吉岡の方を向いてうなずいた。


宇田川が持っていたベレッタを俺に渡す。

「あと2発だ。おまえのは空だろう。うまく使えよ」

俺は黙って受け取ると、ベレッタをホルスターに挿した。

ホルスターごとベルトの後ろに着ける。


ヘリが岸に着く。

俺は背中にベレッタM92F、腰に剣と守り刀、足首にサバイバルナイフ、手には槍を持った。

上着はTシャツの上に柴崎のMAー1を着る。

少しは防御になるだろう。


降りようとすると柴崎の兄さんが止めた。

「こんなのがあった。持って行きなさい。」

信号弾だ。

こいつは心強い。

これはMAー1のポケットに突っ込んだ。

「死ぬなよ!」

縁起悪い柴崎の掛け声を背中に聞いて、俺はヘリから飛び降りた。


すごい風圧だ。

正面に牛人がニヤニヤ笑いながら立っている。

海月の首を押さえている。

「その後ろの化けモンの助けを借りたら、どうなるかわがっでんな」

俺は上目使いに睨みながら言った。

「大丈夫だよ、みんなは手出しはしねえ。それよりテメーの方こそ約束を破るんじゃねえぜ」

「心配すんな。このオナゴはこうしとくでな」

牛人は海月に縄をかけて縛り上げると、近くの木の枝に架け、宙吊りにした。

「これでオバエが勝ったら、このオナゴを解いて連れてくがいいだ」

「おまえは良くても、オマエの飼い主がダメなんじゃねえか?」

俺は神主の方を指差した。

「案上ない。神主様はオバエを恐れているでな。オデがやられたら真っ先に逃げ出すぇ」


俺は周り全員に聞えるように言った。

「もしオマエラが約束を違えたら、この後ろの怪物とオレの仲間が、オマエラを皆殺しにするからな!」

みんなどよめいた。

後ろの方に下がるヤツもいる。

効き目バツグンらしい。

だが牛人だけがニヤッと笑って

「だんねえ、だんねえ、オレが絞め殺すに決まってるぇ。オバエの後はオナゴもオレがくびり殺して、一緒に川にほかしたるえ」

と言うと、背後に刺してあった得物を手にした。

ナギナタだ。

刃渡り70センチはある。

ナギナタというより刀がついた槍だ。


俺は今の間、ただ言い合っていたのではない。

周囲の状況を観察していたのだ。

この怪物とまともにやりあったら勝ち目はない。

まわりに利用できるものはないかと、目を走らせていた。


俺の右手に沼、左手に茅原だ。

正面には牛人と、海月が吊るされている木がある。

その後ろには兵士達だ。

さらに兵士達の奥に、藪と水路がある。


俺の背後にはヘリと、さらにその後ろに廃寺がある。

ここにはボロいお堂と、屋根だけしか残っていない建物が2つある。

お堂脇の岸辺には桟橋があり、その真上に鐘が大木に吊り下げられてあった。

鐘は滑車をつけて2.5Mほどに吊り上げられている。

おそらく鐘だけ舟で、どこかに運ぶつもりだったのだろう。

何が役に立つかはわからないが、頭にだけは入れておいた。


ヤツの傷も確認しておく。

右目は包帯で巻かれている。

あとはさっきの俺に撃たれた痕だ。

水中から飛び出しざまに撃ったので3発中、2発しかあたってなかった。

その2発も左上腕部と、胸の肉を浅く削っただけだ。

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