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夏休みの思い出は平安で  作者: 震電みひろ
54/68

54、神主を脅す

俺は神主の方を向き直った。

俺の目も牛人に負けず劣らず赤かっただろう。


ひぃーっと、神主は声にならない悲鳴を上げる。

俺は近寄るなり、爪先で思いっきりみぞおちを蹴りあげた。

神主は身体をくの字に折り、何かを吐く。

さらに神主の横面を真横に蹴りぬいた。

うつぶせにふっ飛んだ神主は、頭を抱えてうめき回る。

下半身の袴は脱げ、汚らしい性器が露出していた。

それを思いっきり踏みつける。

彼は気絶した。


そして守り刀を抜いた。

今度こそ息の根を止めてやる。

宇田川があわてて俺の手を止めた。

「やめろ!宮元」

「止めるな!」

俺は叫んだ。

柴崎も前に回って、俺の腕を押さえる。

「冷静になれ!ここでコイツを殺すと、この地域全部の豪族が敵になるんだぞ。それに海月さんの一族が殺される事になる。そうならないために、ここまで来たんだろうが?」

俺は叫んだ。

「もう龍神祭りなんてどうでもいいだろう。どうせここまでやったからには、明日の祭りは中止だろう。このまま海月を連れて逃げればいい!」

宇田川が言った。

「何があっても龍神祭りは延期しないと言ってただろう。コイツはやらざる得ない。それにここで海月さんを連れて逃げて、彼女の一族が皆殺しにあったら、怨まれるのはオマエだぞ!」

それでやっと、俺は自分を押さえる事ができた。


「海月?」

彼女の方に近寄る。

まだ目の焦点は会ってないが、大分正気に戻ったらしい。

「大丈夫?」

彼女は麻薬か何かを少し飲まされたらしい、疲れたように笑うと

「大丈夫、宮元さんこそ平気なの?」

と聞いてきた。

俺は彼女を優しく抱きしめると、持ってきたケミカルライトを渡した。

「これを川の中に入ったら、真ん中で折り曲げるんだ。そうするとこの棒が光るようになっている。俺が水中を泳いで助けに行く。その時に目印になるんだ。その間できるだけ息を止めて我慢してて」

彼女の手にしっかりと握らせた。

彼女は、俺の顔とケミカルライトを交互に見て

「ありがとう、私のために。信じてたわ、きっと助けに来てくれるって」

「明日も必ず助けだす。待っててくれ」

彼女はコクンとうなずいた。

大粒の涙が流れだす。


「おい、神主が意識を取り戻し始めてるぜ」

柴崎が言った。

俺は神主の方に歩いていき、むき出しの性器に守り刀を浅く突き刺した。

悲鳴を上げて飛び起きる。

俺は言った。

「おい、オマエ。これ以上この娘に手を出したら、その時こそ命は無いからな。わかったか!」

すかさず柴崎が、俺の言葉に覆い被せるように言った。

「俺達は龍神様の家臣の者だ。おまえが立場を利用して、龍神様の花嫁を汚す行為に我慢しかね、こうして罰を下しにやってきた。重ねて申し付けるが、この娘に二度と手を出すでないぞ!」

驚いた神主はしきりに許しを請い、額を床にこすりつけた。


これでもうコイツは、海月に手を出さないだろう。

アソコは踏みにじられて赤むけている上、小刀で切れ目を入れてやったからな。

もしかすると一生使い物にならないかもしれない。


神主と牛人を外に出し、念のため海月に部屋の中から閂をかけさせた。

俺達は神社の外に向かう。

ふと宇田川に聞いてみた。

「そういえば宇田川、オマエ石の棍棒みたいので殴ったけど、何で殴ったの?」

「これだ。社の前に飾ってあった」

それは腕ほどの太さもある、石で掘られた男性器だった。

砕けて先の部分だけになっている。

柴崎が言った。

「子供を授かるように、神社にこういうのはけっこう多いんだよ」

俺達は笑いながら塀の外に出た。


外に出ると夢丸が、手下十名を引き連れてやってきていた。

さっきまでの経緯を話すと夢丸は憤慨して、これから中に入るという。

将門の名代として、巫女の館を護衛すると言うのだ。

俺達は夢丸に礼をいい、手下浦のキャンプに向かった。

後から夢丸も来ると言う。

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