52、祭りの前夜(その4)龍神神社への潜入
【前回までのあらすじ】
主人公の高校2年生・宮元駿馬は、同級生の柴崎、宇田川、吉岡と一緒に「今までにない画期的なリゾート」に招待された。
だがそこは、大企業がタイムマシンを開発し、平安時代に作ったリゾート地だった。
そこで出会った白拍子の少女・海月に一目惚れした宮元は、彼女が2週間後に行われる「龍神祭り」で、生贄として利根川に静められる運命であることを知る。
海月を救うため、リゾート地を脱走して坂東に向かう宮元達4人。
途中で坂東を支配する平将門と出会うが、彼の出す試練をクリアし、将門の信頼を得ることが出来た。
龍神祭りの前日、海月の故郷の里を訪ねるが、既に龍神神社の神主が連れ去ったと言う。
生贄の娘は、祭りの前夜を神主と過ごさねばならないと言う。
怒りに燃えた宮元達4人は、海月を神主の毒牙から救い出すため、龍神神社に向かった。
俺達は龍神神社に着いた。
筑波の山麓の神社と違って前にも述べたとおり、防御もしっかりしてある。
その割に門番は2人と少ない。
祭りの時期に、ここを襲う者はいないのだろう。
正面突破を考えていると、ミズハがやってきた。
「ここの裏手の方に高い木があって、そこの枝から敷地内に入れるよ」
さっそく行ってみる。
確かに大きな木があり、その太い枝が神社内に侵入していた。
俺達はさっそくその木をよじ登る。
枝から塀の上に降りる。
みんなすぐに飛び降りようとしたが、俺は「待て!」と言い、先にリュックを落としてみる。
それからそのリュックが落ちた所に飛び降り、まわりの安全を確かめた。
みんなに言う。
「いいぞ」
みんな飛び降りてきた。
柴崎が聞いた。
「何したんだ?」
「ワナが無いか確かめたんだ」
「気にしすぎじゃねぇか?」
ミズハは笑っていた。
彼女には、俺の行動の意味がわかるのだ。
神社内の森の中を走る。
突然、俺は足を止めた。
宇田川が聞く。
「今度は何だ?」
俺は茂みの中のツル草を指差して言った。
「鳴子が張ってある」
みんなが驚いて、俺が言ったツル草を良く見てみる。
雑木に引っ掛けて鳴子が仕掛けてあった。
柴崎が
「すげえ、おまえ、ランボーになれるよ。おまえ、あの筑波山行きから変わったな」
と感心したようにつぶやいた。
確かにその通りだ。
自分で言うのも何だが、俺はこの数日で戦士として著しく成長していた。
しかしミズハだけは面白そうに笑いを堪えている。
彼女にしてみればこれが当たり前で、現代人の注意力の無さの方が驚きなのだろう。
やがて神社の社に着いた。
だが社は大きい上に幾つもある。
どれだか迷っていると、柴崎が建物を指差しながら言った。
「一番前の拝殿じゃない。それから両脇の社も違うだろう。拝殿から壁で仕切られた後ろの本殿か、その奥にある社、または宝物殿などのあまり人が来ない所だ」
俺が本殿、柴崎がその横の社、宇田川が宝物殿を見てみる。
ミズハは他に建物がないか見て回った。
本殿にはいない。
横の柴崎も手を振っている。
宇田川の宝物殿もいないらしい。
ふと見ると本殿から奥の林の少し離れた所に、小さなお堂が建っている。
ここからしか森の陰になっていて見えない。
そこに違いない。




