表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夏休みの思い出は平安で  作者: 震電みひろ
45/68

45、友達

45、友達


やがてヘリは、筑波山麓にある神社裏の空き地に着陸した。


俺は吉岡に言った。

「吉岡はこのヘリに残ってくれ」

一緒に降りようとしていた吉岡は不満そうに聞いた。

「何でだよ?」

「ここで吉岡が現れて、また怪しまれたら困るだろう。何よりもトランシーバーがあるなら、外部に連絡を取れる人間が欲しいんだ。この先、どんな事があるかわからないからな。頼むよ、吉岡」

吉岡は渋々了承した。


俺とミズハと李高仙人の3人を下ろし、ヘリは離陸した。

「じゃあな。こまめに連絡しろよ。俺達は近くにキャンプを張っているから」

吉岡がヘリの爆音に負けないように怒鳴った。

俺は了解の意味で手を上げる。


俺達3人は歩き始めた。

ミズハに聞く。

「俺はどのくらいの間、気を失っていた?」

彼女は

「小半時(30分)くらいだよ」

と答えた。少し元気がない。

彼女の様子が少し気になったが、何も聞かなかった。


時計を見ると5時半だ。

そんなに急がなくても、もうゴールは目の前だ。

俺は明るい気持ちで神社を抜けた。

草原の向こうにいくつかの旗が見える。

バックにはまだ幾分高い太陽が輝いている。

夏の日はあっという間に落ちる。

あと1時間もすれば地平線の下だろう。

俺の足は段々早まっていた。

あと少しだ。

体は疲れきっていたが、自然と足が急ぐ。


人の姿が見える。大勢の人間だ。

その中の2人が、こっちに向かって手を振っていた。

俺はいつの間にか駆け足になっていた。

彼らもこっちに走って来る。

柴崎と宇田川だ。

俺は2人の所に走りこんだ。

そのまま膝をつく。

無性にうれしかった。

自分を迎えてくれる仲間がいることが。

2人とも俺の肩や背中を叩いて言った。

「よくやったな!帰ってくると思ってたよ」

「大丈夫か?傷だらけじゃねぇか?」

俺は涙がこぼれそうになった。

2人に泣きそうなのを悟られないように

「オマエらに怨まれたら、しつこく祟られそうだからな。とりあえず戻ってきてやったよ」

と下を向いたまま言うと、柴崎が

「何言ってるんだよ。俺達は元々殺されないようになっていたんだよ」

と言う。俺が驚いて

「何だって?」

と聞き返すと

「部下の手前、何かしなければならなかったそうだ。でも武器と引き換えに、俺達は無事帰すつもりだったと、将門直々に言われたんだよ」

なんだ、こいつらは元々平気だったのか?

体中の力がドッと抜けた。仰向けにひっくり返る。

柴崎と宇田川の顔が見えた。

でも2人とも心からうれしそうだ。


そこにもう1人の顔が現れた。

将門だ!

俺が起きようとすると

「そのままでよい」

と止め、こう言った。

「よくぞ李高仙人を連れて参った。大儀であった。これよりおぬしら好きなようにするが良い。何をしようと決して咎めだてはせぬ。しかし今宵はおぬしのために労いの宴を用いておる。龍神祭りまで日がまだある。体の傷もあるゆえ、館でゆっくり休むが良かろう。輿に乗るがよい」

「ありがとうございます」

俺は上半身を起こして言った。

将門は

「おぬしらは本当に良き友を持っておるな。ワシも幼き頃は、貞盛と何のわだかまりも無く仲良う遊んだものだが・・・・・」

と遠くを見るような目をすると、馬の方に行ってしまった。


2人が俺を抱き起こす。

何だかんだ言っても、宇田川も柴崎も喜んでくれているのだろう。

俺を輿に乗せると2人は馬に乗った。

輿に乗る時、夢丸・平将武が笑って手を上げた。

俺も手を上げて答える。

夢丸が号令をかけた。

「館に戻る!」

輿の上で俺は揺られながら、いつの間にか眠ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ