36、筑波山の戦い(その3)
もう敵が襲ってこない事を祈りつつ、森の中を歩いた。
前とは違って右手にベレッタ、左手に盾を持っている。
周囲を警戒しながら歩く。
いきなりだった。背後から何かが飛び掛かってきた。
何か被った男だ。
まさか森に入ってすぐには襲って来ないだろうと考えていたが、予想は外れた。
しかし油断は一切していなかったはずだ。
いったいどこから?
瞬間的にベレッタを男の腹部めがけて撃つ。
男は後ろにふき飛んだ。
次の瞬間、またもや背後(つまり進行方向)から男が襲ってきた。
ベレッタを向けるのが間に会わない。
盾を思い切り振ってその男にぶつけた。
だが男はそのまま俺の方に突っ込んできた。
俺は自分から転がり、男に足払いを掛ける。
男は藪の中に頭から突っ込んだ。
倒れた体勢のまま、男の腹部にベレッタの9MM弾をお見舞いする。
その時、目の前の地面が薮ごと盛り上がった。
驚いて見ると、その中から同じように何かを被った人間の顔が出てきた。
俺はその顔にもベレッタを向けると、引き金を絞った。
だが敵も目の前に俺が倒れているとは思わなかったらしく、すぐに引っ込んだので弾は外れた。
これでわかった。
敵はモグラのように地下にトンネルを掘っているのだ。
そして木や草むらの影から様子を伺い、相手の隙を見つけた時に襲ってくるのだろう。
2番目の男が起き上がった。
腹を押さえているが目は闘志満々だ。
たいしたケガにはならなかったらしい。
男は何かを構えた。刀というより特殊なナイフのようだ。
恐れ入ったのは、ナイフにも光を反射しないように泥を塗って迷彩してある。
男が迫ってくる。
だが何かスローモーな気がした。
予感がして後ろを振り向いてみる。
背後には槍を持った男が、俺を刺し殺そうと狙っていた。
俺は槍を持った男めがけて引き金を絞り、結果を見ずに向き直って最初の男の腹部を撃った。
男は倒れた。
どうやらこいつらは2人1組で近距離から敵を攻撃するらしい。
男が被っているのは草を編んだもので、それに木や草や笹などでカモフラージュしている。
盾を拾い、用心しながら歩く。
すると今度は、一群の草が周囲と揺れが違うのがわかった。
男が飛び出してくる。
だがこいつはオトリだ。
後ろを振り返ると、やはり短い槍を持って突っ込んで来る男がいた。
そいつの胸のド真ん中に9MM弾を打ち込むと、正面のヤツを狙って引き金を引いた。
カチッ。
しまった!不発弾だ!
そう思うより早く敵が突っ込んできた。
俺は左胸の脇に冷たいような何かを感じながら、敵と組み合ったまま藪に転がりこんだ。
もつれながらも敵は素早くナイフの2撃目を、俺のノドに振るおうとしていた。
辛うじて左手で相手の右手首を押さえると、反動を付けて左へ起き上がる。
同時にベレッタのグリップ部を、相手のこめかみに叩きつけた。
勢いよく相手はふっとんだ。
おかしい。俺は疑問に思った。
確かにこの時代の人間は小柄で、男でも身長160cmくらいだが、それでも簡単にふっ飛び過ぎる。
周囲を見回すが他に敵はいない。
まだ頭を押さえている相手に近寄り、ナイフを取り上げると被っている物を取った。
女だ。
それもまだ俺と同じくらいの年の!




