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夏休みの思い出は平安で  作者: 震電みひろ
35/68

35、筑波山の戦い(その2)

こうなったら相手の矢が尽きるまで、ここで待つか?

そう思った時だった。

突然右手から一直線に矢が射られてきた!

かろうじて身をよじってかわせたが、見ると20Mほど離れた藪の所から、1人の男が2本目を射ろうとしている。

俺は反射的にベレッタを構え、その男めがけて撃った。2発撃つ。

その男は当たらなかったと思うが、とりあえず相手はビックリして引っ込んだ。

ちっくしょう、やつら俺が何も武器を持っていないのを確認して、近距離から包囲するつもりだな。

こうなったらコッチから打って出るしかない。

その時、ある考えがひらめいた。

ヤツラが放物線軌道で矢を撃ってきているという事は、かなりの距離があるからで、矢の滞空時間も長いはずだ。

もしかすると2秒近くはあるかもしれない。

と言うことは俺に狙いをつけても、矢が届くまでに遮蔽物に身を隠せば大丈夫という事になる。

2秒なら15Mは進めるだろう。

それを繰り返して進み、前方の森に飛び込むしかない。

またもや右手の岩から人が飛び出した。

今度は3人だ。一斉に矢を放ってくる。

だが俺も、次はそこから出てくるだろう事は予想していた。

その3人目掛けてベレッタの引き金を3度絞った。

ギャッ!という声と共に、真ん中の1人がひっくり返る。

致命傷でない事を祈ろう。

その隙に俺は隠れていた岩から飛び出す。

左前にあった大きな木の後ろに駆け込んだ。

その俺の後を追うように、矢が次々と打ち込まれた。

予想どおりだ。矢は俺よりワンテンポ遅れている。

次に右手の木、そして次に左手の岩と、俺はジグザグに進んだ。

敵はどうしようもないようだ。

回りこんで来た別働隊は、銃を恐れて出てこれない。

あと少しで森の入り口だ。

次に右手の岩に走りこんだ時だ。

偶然敵もその岩を盾にしようとしていたらしく、俺が岩影に駆け込んだのと、岩陰から男が顔を出すのが同時だった。

俺は無我夢中で男めがけてベレッタを撃った。

男の鼻から頬骨にかけて弾が突きぬける。

俺の目の前で血と肉が吹き飛んだ。

俺は顔をそむける。

男はすごい悲鳴と共に、俺の方に倒れこんできた。男の鼻が無くなっていた。

その男は顔を押さえて転げまわった。

残酷だけどその男を岩の外に蹴飛ばしてみる。

今度は一直線に矢が飛んできて、その男に何本もつきささった。

俺はすばやく岩の上に身を乗り出すと、矢が飛んできた方向にベレッタを撃つ。

やはり敵は俺の出方を見て、森の入り口で待ち構えていたのだ。

森には正確に6人が2列に並んで矢をつがえていた。

そこに俺は5、6発撃ち込んだ。

ギャッ、グオッ、何人かの悲鳴が聞える。

それで静かになった。矢も飛んで来ない。

あたりを用心深く見回したが、誰も出てくる様子はない。

俺は少し岩から頭を出してみた。やはり何の反応も無い。

森の入り口には4人もの人間が倒れている。

気の毒に仲間の矢に射られてしまった男が、すぐそばに転がっている。

悪趣味だと思ったが、その男の剣をもらった。

俺は覚悟を決めると、一気に森まで走った。

だが拍子抜けするほど何もなかった。

無事に森までたどり着く。

敵は俺に恐れをなして、もう襲ってこないのだろうか?

それともこっちも武器を持っている事を知って、作戦を練り直すのだろうか?

森の入り口で兵士が倒れている。その側にあった盾も1つ頂いた。

盾と言ってもただの板だが、矢よけくらいにはなるだろう。

正直言って、人を殺してしまった事に対しての罪悪感はそれほどなかった。

やらなければコッチがやられていた。

しかし死体を目の前にすると、どうしようも無く手が震えた。

吐き気がしてくる。

死体を見ないようにして、手の震えが収まるのを待った。

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