27、坂東へ(その2)
翌朝、俺達は下総の鎌輪宿にある将門の城を目指して出発した。
下総の鎌輪宿は、現代では茨城県下妻市だ。
夢丸は少し離れた所の木に、自分の馬を繋いでいた。
荒川を渡り北東の方角を目指す。
夢丸はおしゃべりな男だった。
よくこんなおしゃべりな男がスパイなんて出来る、と感心したくらいだ。
のべつまくなしに誰かに話しかけている。
俺達がどこの国の人間か知りたがったようだ。
海月が適当に説明してくれる。
夢丸が話しかけるのは、海月の美しさに惹かれた事もあるようだ。
色々と海月の関心を引くようにしゃべっている。
海月の故郷の事など、さも自分は良く知っていると言わんばかりだ。
俺は少しおかしくなった。
夢丸のスキを見て、柴崎が俺と馬を並べて話かけてきた。
「昨日、言い忘れたけど平将門は祟る事で有名な神様だぜ。現代でも大手町の首塚に手を付けると祟りがあるって言われている。藤原秀郷に討たれた後、その首は京の東市に晒されたが、その首は腐りもせず目を見開き、夜な夜な「斬られしわが五体、何れの処にか有るらん。ここに来れ。首ついで、いま一軍せん」と呼び続けて人々を恐れさせたそうだ。やがて将門の首は京から関東めがけて飛び出した。その首が落ちたところが神田明神で、今でも平将門を祭っている」
「オマエ、やけに詳しいな」
「俺だって文系だぜ。日本史くらいは一通りやってるよ。それと平将門は、色んな話に出てくるしな。大河ドラマにもなったんだよ」
俺はちょっと薄気味が悪くなった。柴崎もそれっきり黙る。




