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夏休みの思い出は平安で  作者: 震電みひろ
17/68

17、老婆(その3)

ハッと目が覚める。

馬の足音は夢じゃない。現実に聞えてくる。

みんなもほとんど同時に目を覚ましていた。耳を澄ませる。

人の声も聞えてきた。何か命令しているらしい。

みんな跳ね起きた。

吉岡が入り口の筵の隙間から外を覗いてみる。

「この時代の兵士がやってきてるぞ」

吉岡が低い声で鋭く言った。

「あのババア!俺達の事をチクリやがった」

柴崎が吐き捨てるように言った。

外の兵隊が声を掛けてきた。

「中にいる異国の者!上意によりおぬしらをひっ捕らえる。神妙に庵を出るがよい」

俺も外の様子を見ると、馬に乗った兵士が剣を抜いて話していた。矢をつがえた者もいる。

「どうする?」宇田川がいう。

「出てった途端、ブスリはないだろうな」

急に馬が家の周囲を走り回る音がした。屋根にドサッと何かが乗った音がする。

しばらくすると焦げくさい臭いがした。家に火を放ったのだ。

ほとんど全部が草拭きに近い家は真夏で湿気が多いとはいえ、たちまち燃え上がり始めた。

「ちっくしょう」

「火攻めだ」

「どうする」

みんなパニックになった。

あいつら、俺達を殺すつもりなのか?

まだ中に火は回っていないとは言え、すぐに燃え落ちてくるだろう。

俺は叫んだ。

「盾になる物を探せ!」

壁に多少張ってある板や薪の束などをかついだ。他にもバックを手にして盾にする。

宇田川が言った。

「まず俺がショットガンで指揮官を撃つ!それから続けて回りに散弾を打ち込む!そこめがけて突っ走れ!」

「人は撃つな!」吉岡が叫んだ。「後々執念深く追ってくるぞ」

「そのつもりだよ」宇田川も言った。

屋根が一部燃え落ちて穴が開いた。家の中にも火のついた草屋根が落ちてくる。

宇田川は慎重にねらいをつけた。馬の足元めがけて引き金を絞った。

バゴン、ショットガンの強烈な銃声がした。

指揮官の乗った馬が驚いてひっくり返った。

宇田川もその強烈な反動に驚いていたが、続けて3発打ち込む。

回りの兵士も唖然とした。

俺達は一気に飛び出し、指揮官の方に向かった。

距離は20メートル。

何本かの矢が飛んできたが当たらなかった。それに指揮官を傷つける事を恐れているらしい。

吉岡が飛び掛かった。吉岡は柔道初段だが、指揮官ともつれ合ったままだった。

俺がすぐに走りより、棍棒代わりに持っていた薪で指揮官の頭を殴りつける。

指揮官は頭を押さえてうずくまった。彼の剣を奪い取って首に当てる。

「おとなしくしろ!」

俺は大声で怒鳴った。

こんなに大声で怒鳴ったのは、生まれて初めてかもしれない。

「武器を捨てろ!捨てないとこいつの首をたたっ切るぞ!」

兵士は指揮官を人質に取られたことより、俺達の予想外の反撃に驚いたようだ。

宇田川がショットガンに散弾を1発装填して、脅しに燃えている家にめがけてブッぱなした。

普段割とおとなしい宇田川に、こんな度胸があったとは驚きだ。

兵士たちは武器を捨てた。馬に乗っていた奴は馬から降りる。

柴崎は握り締めていたベレッタをベルトに挟んだ。

ピストルの威力を知らないヤツラに、いつまでも構えていても仕方が無いと思ったのだろう。

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