第四十八話 地図作り
今度の合戦に備え、地図を作ります。
『地図作り』
美濃の戦に向けての最後の仕上げとして、以前から作りたかった地図を作ることにしました。
平成と天文では色々と異なっている所がある上に、全て詳細に暗記してるわけでもありません。
故に、記憶してる範囲で地図を描き、その上でその地図が合ってるかどうか確認し、更には足りない部分を足してもらわねばなりません。
また、平成でも軍用地図などは機密扱いですが、この時代は普通の地図すら機密です。
扱いには注意しなければなりません。
今回作成する地図は木曽川辺りから岐阜城の北、長良川までの地図です。
そのあたりが今回の美濃攻めに必要なエリアでしょう。
しかし、平成の世はまあ当然ですが、昔あった草原や雑木林なんて全部開拓され尽くしてなくなっていて、それこそ木曽川から岐阜城のある金華山まで全部田んぼと建物で埋まってます。
とは言え、金華山はそこまで大きく地形が変わったとは聞きませんから、ハイキングコースや登山道なんかは天文の世の今でも使ってる、或いは使える気がします。
そんなわけで制作する地図は二枚、木曽川から長良川までの広域地図。
記載するのは記憶の中にある木曽川と長良川の形、そして位置関係です。
史跡で残ってる加納城跡なんかは大体の場所がわかります。
ちなみに、なんでそんなに金華山に詳しいんだって言うと、前世で金華山リス村に何度もリスに癒されに行ってたからですね。
ロープウェイも毎度乗りましたし、金華山ハイキングコースは走破しましたのでそれなりには…。
そんなわけで、時間をみて思い出しながらせっせと作業し、時間はそれなりに掛かりましたが地図を書き上げました。
後は、これの検証作業ですが、勿論私には無理です。
そんな時の為の我が頼れる家臣を呼びます。
鍛冶屋さんじゃないですよ。
ややして加藤さんがやってきて平伏します。
特に用を頼んでいない普段は、普通に私のお付きの武士として屋敷に出仕してるので、呼べばすぐに来てくれます。
「姫様、お呼びに御座るか」
「はい。段蔵殿、こちらを見て下さい」
そういうと、地図を渡します。
地図を開くと、普段冷静沈着な段蔵殿が驚きます。
「これは…、地図にござるな。
それも、初めて見る技法…。精密でござるな」
「ええ、唐国ではこういう地図が使われているのですよ。
ただ、これは私が伝聞で聞いた話しを元に書いた地図なので、正しくないかもしれません。
そこで、頼みたいのはこの地図が正しいかどうか、見てきてほしいのです。
正しくない所は修正し、足りない部分を書き加えて下さい。
そして、遅くとも七月末には戻って下さい」
「承知仕った」
「段蔵殿に限って不手際があるとは思えませんが、無事に戻ってくることが第一。
特に、この金華山の地図は美濃の城がある山なので、監視の目も有りましょう。
全て正しいか見るのが困難であれば、道がついている事が解るだけでも構いません」
「ははっ。では早速出立致します」
「こちらの方をお持ちなさい。
道中入用になることもあるでしょう」
そういうと軍資金の入った巾着を渡します。
「有難く」
恭しく受け取ると、静かに部屋から去っていきました。
これで、地図が無事完成し、父に渡せばきっと役に立つでしょう。
加納口の作戦は既に立ててあります。
今回は情報操作も使い、又散々に利政殿の軍を叩いてやりましょう。
そうすれば、史実通り和議という話になるはず。
三河が何らかの形に落ち着かない限り、美濃方面に大きな兵力を貼り付ける無駄は避けたいところなのです。
仕上げは加藤段蔵の腕の見せ所です。
さて、次か次にイベント発生です。
今回は短めです。
年内は短めが続くかもしれません…。