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吉姫様の戦国サバイバル ベータ版  作者: 夢想する人
第六章 天文十九年 (天文十九年1550)
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第百七十八話 天文十九年 清洲での元旦

年が明けて天文十九年になりました。





『天文十九年正月』



激動の天文十七年に続き、天文十八年も色々なことがありました。


明けて今年は天文十九年、ユリウス暦だと千五百五十年です。



去年には史実通り、フランシスコザビエルらしき異国人が来たようだ、と現地に駐在させている加藤殿の配下の人から報告がありました。


私は、主要な湊や街に加藤殿の配下を商人として派遣して店を出させているので、現地の相場や天災等の出来事など、尾張への荷と一緒に報告書が定期的に届きます。


あまり大きく稼ぐ気はないのですが、米や塩を相場の安い地方から高い地方へと船で運ぶだけで利鞘を稼げる、というのはこの時代でも普通にできる様ですね。



去年のうちに、ザビエルやトーレス一行には私が託した手紙が届いていますから、恐らくそう遠くない時期に尾張に来ることになるでしょうね。


前世では、彼らは碌な伝手も無いままに京都を目指したわけですが、その旅は苦難に満ちていたとも伝えられていますね。


だから今生で受け取った、ラテン語で書かれた招待状は、きっと救い水の様に感じる事でしょう。

何しろ歩かなくとも、船で尾張へご招待します、という手紙なのですから。


不安なのは、私の言葉がこの時代のスペイン人に通じるのかなのですが、一応ラテン語で書いておいたので多分…、大丈夫でしょう。



そんなわけで今日私は、数えで十七歳、セブンティーンになりました。


前世だと高校生、世間では青春真っ盛りだった気がしますが、前世と変わらず私には青春という言葉は縁遠い様で…。


史実だと信長はもう結婚しているんですが、私はまだ独身です。


輿入れの話は度々出ているのですが、具体的な話はありませんねえ…。



今年も去年と同じく、清洲の屋敷で早朝に家族で年賀の挨拶を交わした後、父は守護館で執り行われる守護様の元旦の祝賀へと出向いています。


出向くといっても川を挟んですぐ目の前なのですけどね。


午後からは尾張守護代として、年賀の挨拶に来訪するお客の応対と、この辺りも例年通りですね。



私はといえば、今年も元日は家族で過ごし、明日は早朝から古渡の屋敷で年賀の挨拶に来てくれる人たちの応対をする予定です。


去年は弟妹達や侍女たちと遊ぶための遊具を色々と用意していたのですが、今年も色々と用意してみました。


去年作った遊具は父の勧めに従い、出入りの商人と相談して試しに売ってみたのですが、これが結構売れてしまい商人が専用の工房を作る位でした。


娯楽の少ない時代ですから、みんな遊ぶ道具に飢えていたのでしょうね。

それに国が豊かになって、皆がそれなりにお金を使う様になった、というのも大きいのでしょう。


だから今年も、幾つか拵えてみました。


まずは、弟の喜六でも簡単に飛ばせるだろう洋凧、所謂『ゲー〇カイト』的な奴です。

去年拵えた和凧は子供には飛ばすのが少々難しく、私が走り回って飛ばす羽目になりましたから。


今年の洋凧は、喜六でも簡単に飛ばすことが出来、晴れた元日の冬空に三角形の凧が天高く舞い上がりました。



他に用意したのは、去年評判が良かったかるた的な物ですが、絵合わせを拵えてみました。

トランプの神経衰弱みたいな感じで遊ぶのですが、片面にトランプの様に数字が描かれているのではなく、絵師にペアになる二枚一組の絵を計二十五組描いてもらい、その絵札を揃えて取って行く、という感じに遊び方をアレンジしています。


若手ですが、腕の良い複数の絵師によって描かれた絵はとても美しく、後の世まで残ったならきっと美術品としての価値もあるでしょうね。


この遊具は絵が綺麗なのもあって、侍女たちにとても評判が良かったです。


そして最後に、東海道双六の天文十九年版。最新版には駿河から伊勢大湊迄が追加されて居ます。


この双六は今年も評判でみんなで楽しみました。


今年も楽しい元日はあっという間に過ぎてしまいました。


弟妹達と今日は一杯遊びましたが、去年はまだ乳幼児だった市ももう三歳。普通に歩き回り、たどたどしくも言葉を話すまで成長しているのを見ると、感慨深いものがありますね。


夜になって屋敷に戻って来た父が、今年はどんな遊具を作ったんだと、目をキラキラさせながら聞いて来たので、用意した遊具を見せて差し上げると、やはりというか絵合わせに興味津々でしたね。


〝絵合わせ〟というゲームの用具ではあるのですが、二十五組で計五十枚のポートレートサイズの〝画集〟と見れば、大人が見ても十分目を楽しませることが出来ますから。



父も絵合わせが欲しくなった様で、武衛様への献上品も含めて幾つか作ってほしいとオーダーが入りました。


これは、制作を依頼した商人にまた相談しないといけませんね。



そう言えば、去年史実通り摂津で〝江口の戦い〟があったのと関係が有るのかどうかはわかりませんが、今年も滝川殿こと義頼殿が近江の実家へと里帰りで、二週間ほど留守の予定です。


去年、六角定頼様の検診に行った玄庵先生の話だと、高血圧気味なので食べ物と飲酒に気を付ければ他は特に問題ない、との診断でしたが、史実だとそろそろなんですよね…。



さて、明日は古渡です。



信秀は相変わらず多忙の様子ですが、吉姫は今年も家族とのんびり過ごしたようです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 凧あげといえば2本糸や4本糸のスポーツカイトなんか作れたら面白そう カイトサーフィンの動画見ると加藤さんたちならきっとすごいことやってくれる気がする
2020/09/03 20:12 レモン男爵
[良い点] 更新嬉しいです! これからの一年の情勢、そして新たな転生者を無事に保護できるのか、展開を楽しみにしています。 [一言] 絵合わせですか。 もともと少し類似した遊びの貝覆いがありますし、貝覆…
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